第4回 新しい地域再生政策研究会報告 | 研究プログラム | 東京財団政策研究所

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第4回 新しい地域再生政策研究会報告

November 17, 2009

研究会概要

○日 時:2009年11月6日(金)18:30-21:10
○場 所:東京財団A会議室
○出席者:
伊藤 淳子(NPO地域コミュニティ情報推進協議会理事)
十代田 朗(東京工業大学准教授)
平 智之(衆議院議員)
松本 大地((株)商い創造研究所代表取締役)
吉永 憲((株)共同通信情報企画本部次長)
関係省庁政策担当者
(東京財団)
赤川 貴大(東京財団政策研究部研究員兼政策プロデューサー)
井上 健二(東京財団政策研究部研究員兼政策プロデューサー)
斉藤 弘(東京財団政策研究部上席研究員)
冨田 清行(東京財団政策研究部研究員兼政策プロデューサー)

議事次第

1.開会
第3回研究会での議論等のレビュー
2.ゲストスピーカー報告
演 題:『21世紀をリードする社会交流欲と地域再生
~ポートランドにおける人と街と商いの良好なリンケージ~』
報告者:松本大地氏(?商い創造研究所代表取締役)
3.報告を踏まえた質疑、意見交換
4.今後の研究会の予定等について
5.閉会


前回研究会の議論等のレビューを行った後、ゲストスピーカーの松本大地氏(?商い創造研究所代表取締役)から、米国オレゴン州ポートランド市の街づくりに関する長年にわたる研究やこれまで関わってこられた小田原市における商店街活性化の取組等のご経験を踏まえ、「人と街と商いの良好なリンケージ」をキーワードに、地域再生の取組の展開に当たってのポイント等についてご報告を頂き、その報告をもとに意見交換を行った。以下は主な内容である。

【ゲストスピーカー報告要旨】

○景気頼みの人も多いが、今後は大きな景気回復はないと考えた方がよい。過去のような消費行動は生まれてこない。行政頼みでは、個人消費の拡大やまちづくりはできないと認識すべき。自ら切り開いていくことが大事。
○東京モーターショーの入込みが対前年比で58%減となるなど、基幹産業の自動車産業ですら厳しい環境の中、どうやって個人消費、内需を拡大させていくか。その要は「人づくり、街づくりと商いをどうリンケージさせていくか」にある。
○物のない時代は物を得ることが幸せの証だったが、今は心の満足や同じ価値観を持った人とどう交流できるか、いい人生をどう過ごすことができるかが幸せのバロメーターとなっている。アブラハム・マズローの欲求段階説によれば欲求の5段階の最後は「自己実現欲」となっているが、その次の段階として「社会交流欲」があり、人間はそこへ到達するのではと考えている。街は出会いや交流の場。人は自分のライフスタイルの合う所に移動していくということが加速度的に増してくる。
○商業というのは、常に変化していくので、新しい提案を積極的に出していかないとすぐに陳腐化してしまう。
○街を歩くと必ず「スタイル」がある。「茅ヶ崎」のようにスタイルが確立している街は魅力的で人を惹きつける。どのエリアにもアイデンティティがあり、それを引き出すことで、社会交流の場を創造することができる。
○同じような手法を使って、これからはライフスタイルを売っていくことが大事。例えば、溜池山王にある「ワイズバイク」は、ライフスタイルを売っている。「自転車を乗ることでこんな風に生活が変わるんだよ」ということを売っている。そのために、単に自転車を売るだけでなく、アフターフォローやイベントにも力を入れている。
○米国オレゴン州のポートランドでは、毎週、若者が500人増えている。なぜ人がその街に住みたくなるのか。ポートランドは、最先端のライフスタイルをウリにしている。「社会交流欲」を満たす持続的な街づくり、地域再生の仕組みがある。
○市民参加が盛んで、住みやすさ・暮らしやすさがある。パブリック・ミーティングへの参加率がとても高い。市民自ら参画し、ボトムアップ型で課題を解決している。市議会は市長を入れて5人という効率的な組織となっている。
○クリーン&セイフという取組も参考になる。軽犯罪の人が社会復帰プログラムの一環として街をきれいにするクリーンという役割を果たしたり、将来警官を希望する女性や元警察官で退職した人がセイフという街の治安を守るほか、レストランMAPなども持っていて観光ガイドの役割も担う活動を行っているが、この制度は商工会議所が運営し、これにかかる費用は商業デベロッパー(テナントの家賃に含めて回収)から出ている。
○ポートランドは薔薇の街でもあり、毎年、ローズ・クイーンの選考が行われるが、100年以上続く名誉ある賞で、これに選ばれるのは地域の名誉。このローズ・クイーンの選考は、容姿の美しさだけではなく、ボランティア活動の経験や学校の成績などが評価されることになっていて、ボランティア活動は学校のカリキュラムにもなっているし、学生は熱心にボランティア活動に取り組んでいる。ボランティアや環境保全というと日本では肩肘をはったものとなりがちだが、そうではなく、気軽に、ちょっとしたこと、できることをやる、それがおしゃれで、クールな活動といった感覚でとらえられている。
○ショッピングセンターのバックヤードには必ず空き瓶・空き缶の回収BOXがあり、そこに返却するとキャッシュバックされる仕組みになっている。そのため、街には空き缶や瓶はまったく落ちていない。大上段に構えるのではない、ちょっとした形での環境共生の仕組みが至る所で見られ、実施されている。
○ポートランドはペットの多い街でもあるが、街の至るところに排泄物を捨てることができるペット・ウェイスト・ボックスが置かれている。これはペット・フード会社が費用を出して整備したもので、排泄物を入れる袋にペット・フード会社の宣伝が入っている。
○パブリック・スペースを、単なる休む場所や緑を植えるための場ではなく、人と人とがいい形で出会う大切なステージ、社会交流欲を増す場として創造していくことが大事。ポートランドの街の真ん中にあるパイオニア・コートハウス・スクウェアは、駐車場を広場に転換したものだが、そこに用いられたブロックは、6万人の市民が購入したもので、各々のブロックには名前が刻まれている。そのため、広場が単なる広場ではなく、「私たちの広場」という意識が強く、市民がいつも集まる交流の場となっている。
○ポートランドでは、公共投資の1%を必ずアートに使わなければいけないという条例があるため、パブリックアートが街中に整備され、点在している。このように、街歩きが楽しくなるような街を創造していく仕組みが設けられている。
○街歩きを楽しくさせる仕掛けとして、道路に面するビルの面積の50%以上は商業施設又はショールームにすることになっていて、1階はほぼ商店となっているので目線も統一され、美しい街並みが形成されることになる。
○街のスタイルに合った明確なコンセプトをもったイベントがウリになる。例えば、ポートランドにはサタデー・マーケットという「市」がある。ここに出店できるのは、クリエイティブナな物だけで、他で売っているものは売ってはいけないというルールがある。
○また、ポートランドでは、ファーマーズ・マーケットがとても盛んであり、循環型経済で地域振興を進めている好例。ライフスタイル創造型常設タイプと位置付けている。当初、13店舗でスタートしたマーケットだが、現在250店舗、売上高$500万にまで成長。地元のニューシーズンというスーパーがこのマーケットにお金を$5万拠出しているほか、地元銀行など街をあげて支援している。日本でやると、どうしてもセンスのない「農産市」になってしまいがち。ルックスの良さ、どうライフスタイルを感じさせるかがキーになる。
○ポートランド・トレビューンという地元紙によると、ニューシーズン・マーケットができると、そこから1~1.5ブロック以内の住宅価値が17.5%上がるとのこと。そんな人気の高いスーパーマーケットがある。このスーパーマーケットは、ワシントン州、オレゴン州、ノースカリフォルニアの産品を中心に扱っていて、地元にお金が循環するようにということを念頭に、小さな農家に入り、「一緒に低農薬のこういう野菜をつくろう」と手を携えて取り組んでいるというのが特徴。
○このスーパーはCSRを最大の武器にしている。例えば、スクール・フルーツというサインがあるリンゴを買うと、その売り上げは、地元のどこどこの学校に寄付します、というもの。また、このスーパーは税引き後の10%は地域コミュニティに還元している。この他、学校でスーパーの商品券を販売、その販売額の10%はその学校の活動経費として寄付します、といった様々なCSR活動を展開していて、地域のお客さんに喜ばれるとともに、そこで働く従業員にも、この店で働く喜び、誇りを与えている。
○また、ここの魚売り場では、サステナブル・シーフードという取組もやっている。これは、世界の65%の漁場で魚の採り過ぎが起こっており、持続可能な漁業のためにあなたの買い物で意思を表してください、という表示とともに、グリーンサイン(最も良い選択)、イエローサイン(養殖された魚なので健康に問題がある可能性あり)、レッドサイン(この種は持続可能な方法で収穫される漁場で採られていないので、他の魚を検討してみて)が、商品として並べてられている魚の横に表示されている。このように、自然に環境教育を生活者が学べるようになっている。
○自然と街がうまく共生しながら成長している街ポートランドのライフスタイルに若者が憧れ、人が集まってきている。それを支える起業しやすい環境も整っている。
○この他、コミュニティ・モールと言われるショッピングセンターと専門店街で構成されるモールの上の部分がお洒落な65歳以上の高齢者向けレジデンスになっている。そのレジデンスの近くにはLRTの駅や総合病院も整備されている。モールに集まる若者と元気なシニアとが共鳴できるとてもいい仕組みで見習いたい取組。
○日本の商店街の課題を見てみると、大型店舗の進出といった外的要因ではなく、魅力的な商品が売られていないなどの内的な要因が主となってきている。「顧客満足」は当たり前で、「感動」にまで高めていかなければ人は来ない。小田原の商店街では、「人と環境にやさしい小さな感動の散歩道」というドメインを設定した。物を売るのではなく、いつも感動のある散歩道にしていきたい、そういう想いのこもったもの。ドメインを作ると、今度は各店舗がお店のドメイン(例えば、魚屋さんは、「地域の安心と健康、そしておいしい暮らし」)をつくり、それに合った商いをやっているかいつも確認できる、心のシグナルになるようなものを作っていく取組を進めている。
○成熟化や少子高齢化といって下を向くのではなく、お客さんとの間に商品やサービスを超越した「絆」を作っていくことがこれからは大事。来街者・来店者をファンにして、何度も来てもらい、さらに生涯ここに来たい、子供にもこの店の利用を薦めたい、というロイヤルカスタマーにしていく必要がある。そのためには、単に物が安いということではなく、ライフスタイルの提案や顧客感動づくりを地道にやっていく、うまく人と街と商いをリンケージさせていくということをやっていくが大切。

〔参考情報:USA TODAYから〕
○米国では、ファーマーズ・マーケットが10年間で71%増えて、4900箇所になっている。ワシントンのファーマーズ・マーケットのオープン式典にミッシェル・オバマが参加、挨拶の中でオバマ大統領がホワイトハウスの敷地内にプライベートガーデンを設け、野菜を作っているとの話があった。こういう傾向は今後続くものと思われる。

【意見交換ポイント】

○若者の増加に合わせて雇用の受け皿を増やすため、ポートランドでは、街の「スタイル」をウリにしながら、トップセールスで国内外の企業誘致を積極的に行っている。また、クリエイティブな人向けには、例えば画廊のたくさん集積しているパール地区において、第1木曜日を新人アーティストの作品を展示する日にしたり、事業税の減免を行うなど、街を挙げて「起業」のしやすさをサポートしている。
○自転車の利用の多い街に対応し、壁に掛ける駐輪スペースをたくさん設けている。広い歩道ではフックがあったり、チェーンをかけるポールが整備されるなど、様々な工夫がみられる。日本のようなタイプの駐輪場はあまり見かけない。
○日本の地方都市でポートランドのような街づくりに取り組んでいる街として「葉山」がある。葉山スタイルを作っていこうと取り組んでいる。葉山牛や葉山野菜など地産地消に取り組むため葉山マーケットを19年前に始めたが、それによって地元の小さな商店の商品の良さを知って、本店にまで買いにくるお客さんが現れるなど、いい波及効果が生まれている。街のポリシーがはっきりすると、人が動き、商いが集まってくる。この手法は地方でもできる。そこのスタイルをつくっていくにはどうしたらいいかをしっかり考えていく、その際、若い人をうまく使いながら、エッジを立てていくことも大事。
○地元を見つめ直し、1つのコンセプトをしつこいまでに突き詰めていく。同時に、若い人達でまったく新しいコンセプトを創造していく、この2つをじっくり気長に時間をかけて突き詰めていくことが大事。
○「この街に来たらこういう楽しみがあるよ」というプレゼンテーションがない街が多い。街のポリシーだけではなく、街歩きの楽しみ、界隈性など、輻輳したメニューがあることで、その街のスタイルが生まれてくる。
○観光型の地域活性化のあり方が1つの柱としてあるが、ライフスタイルを自分たちの中で磨くことで人を集め活性化を図るというやり方もある。小さな地方都市というよりは、ある程度規模の大きい都市の方がこうした手法は取りやすいか。
○鉄道会社の駅ナカ開発や駅ビル開発によるダム効果のため中心市街地を衰退させているのではという意見もあるが、駅周辺の街の魅力が高まれば、人はそちらに流れる。駅ナカとその周辺の街は永遠の良きライバルと考え、街の方ももっと努力すべき。西船橋は、駅ナカの開発に合わせて、周辺の街にもお洒落な店が増えたことで、乗換駅でしかなかったところが人の訪れる街に変わったという好例。
○地元密着型のローカルメディアの活用も大事。
○地方都市でコンセプトのある程度明確な街の例として、例えば小布施が挙げられる。小布施は基幹産業の農業をしっかり見据えて、小布施ブランドを作っていこうとしている。
オープンガーデンにしても最終的には花卉の消費拡大、「農」につながることを目指しているというようにコンセプトがはっきりしている。
○観光はコンセプト探しのきっかけづくり。観光客を呼び込むことを目的とするかどうかは別にして、地域のコンセプトの明確化や個性探しのきっかけにはとてもいいツール。
○アメリカでは都市ごとに住み分けが起こっている。ポートランドへの人の流入はその典型的な例ではないか。日本では土地に対しての執着が強いので一般的にはポートランドのような人の移動は起こりにくいが、大都市あるいはその近郊では、米国と同様の傾向が起こり始めていて、それを踏まえたまちづくりというのもあり得るのかもしれない。住む都市を選ぶ時代、それに合わせた街づくりということも都市経営戦略として考えられるのではないか。
○日本の自治体でも、女性企業家向けの様々な支援メニューが用意されているが、実際に支援を受けるために相談に行くと、色々と条件が付けられて、実態としてなかなか融資が受けにくいといったことが多い。ポートランドでは、女性や若者の起業に対しても様々な支援をしており、アンケート結果でも、「女性が起業しやすい街?1」との評価を受けている。こうした評価がPRされることで、「起業」を考えている女性等がさらにポートランドに集まる好循環を生んでいる。


文責:井上

〔参考:研究会配布資料〕
■ゲストスピーカー報告資料:『21世紀をリードする社会交流欲と地域再生 ~ポートランドにおける人と街と商いの良好なリンケージ~』【5.68MB】

    • 元東京財団研究員
    • 井上 健二
    • 井上 健二

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