アメリカ議会選挙での共和党「躍進」の背景

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アメリカ議会選挙での共和党「躍進」の背景

上智大学総合グローバル学部教授
前嶋和弘


トランプ氏の敗北宣言はまだないものの、大統領選挙では民主党のバイデン氏が勝利したのに対し、議会の方は予想されていたような民主党側の大勝にはならなかった。下院では民主党が多数派を維持したものの、共和党は議席増。上院でも共和党が多数派を維持する見込みだ。なぜこうなったのか。背景を探ってみる。

予想を超える共和党の「躍進」
バイデン新政権が迎える困難
共和党の「躍進」の理由
個々の選挙区の事情
郵便投票のあや?

予想を超える共和党の「躍進」

1116日の段階で確定している議席数は、下院は民主党が21913減)、共和党が208(9増)で、8議席が未確定。上院では改選の35議席のうち、共和党が20(1減)、民主党が13(1増)であり、来年15日に行われるジョージア州の2議席(現在2議席ともに共和党)の決選投票待ちだが、もともと共和党が強い地盤であり、最終的には2議席とも共和党が取り、上院全体では共和党52対民主党48と共和党が多数派を維持する可能性が高くなっている(民主党側は統一会派の無党派を含む)。

バイデン氏は大統領選で勝利したとみられるが、その分、同じ党の議員の数を増やすいわゆる「コートテール効果」は全くないに等しかった。

上下両院も民主党が多数派となり民主党の統一政府(unified government)になるだろうとする見方が強かった中で、この結果が衝撃を与えている。下院の引退・転出にしろ、上院の改選にしろ、その対象議席は共和党側に偏っていたことから、民主党がかなり有利とみられていたため、なおさらである。

バイデン新政権が迎える困難

バイデン氏にとっては極めて厳しい船出となる。92年(クリントン氏)、00年(GW・ブッシュ氏。上院は5050だったため、副大統領分が加わることで多数派)、08年(オバマ氏)、16年(トランプ氏)とここ30年の新政権のスタートは大統領の政党と上下両院の多数派党が一致する「統一政府」だったことを考えると、不自由なスタートとなる。

バイデン氏は、景気回復に向けて、自動車などの国内生産製品の購入促進策や、新エネルギーなど新たな産業や技術に3000億ドルを投資し、300万人の雇用創出を主張しているが、まだ、絵に描いた餅であり、共和党側からの反発は必至だ。共和党が多数派維持とみられる上院でどれだけ共和党穏健派を崩せるかが鍵となる。 

共和党の「躍進」の理由

共和党の「躍進」の理由については、すでに様々な議論が起こっている。

まず、コロナ禍の中、選挙運動での差がついたという説がある。共和党側がアメリカでは認められている戸別訪問を今年も徹底したのに対し、民主党側は「ソーシャルディスタンス」を保つために、党の意見などから戸別訪問をほとんどさせなかった。

また、戸別訪問の時に伝えるメッセージにしろ、選挙CMに含める内容にしろ、共和党側の「脅しの言葉」が強烈だったという指摘も少なくない。共和党の各候補は共通して「民主党なら増税、規制強化で大不況の時代となる」「民主党なら警察予算大削減、治安の不安で大混乱」という言葉を繰り返した。コロナと人種差別反対デモが大きな関心事となった今年の場合、この手の言葉は、潜在的な共和党支持者を動かしたのかもしれない。同じような言葉はトランプ氏も繰り返したが、実際に各種立法を担当する議員選挙の方により大きな影響があったのかもしれない。

特に「スクワッド(Squad)」と呼ばれる民主党の急進的な4人の女性議員(オカシオ・コルテス氏、タリーブ氏、レスリー氏、オマール氏)を引き合いに出して、「民主党なら社会主義」と共和党側が訴えたのは効果的だったのであろう。この4議員に対しては選挙後、民主党の穏健派から今回の選挙の責任論すら出始めている。

さらに「中道」でより広い支持層を得るために、討論会では政策についてあいまいな言葉を続けてきたバイデン氏への求心力自身が限られていたため、それが議会選挙に影響したという見方もあろう。

個々の選挙区の事情

議会選挙ではたまにこのようなことが起こる。というのも、個々の選挙区の事情がかなり異なっていて、全米規模の流れが当てはまらないケースも少なくないためだ。その事情とは、スキャンダルや現職の地元での評判の良さ、さらには資金力の差など、様々ある。様々あるために全米規模の動向では説明しきれないというわけである。

分かりやすい例が1998年の中間選挙だった。この年はクリントン氏の不倫偽証疑惑があり、「瀕死の民主党」などと事前に指摘されていた。しかし、結果をみると、上院(改選34)では議席数は変わらず、下院では民主党が5議席伸ばした。その理由は「個々の選挙区の事情だったのでは」と結論付けられている。

郵便投票のあや?

「もしかしたら」と筆者自身が想像しているのは、郵便投票がもたらした影響である。ここ数回の選挙では、大統領と議会選挙の候補者を同じ政党に投票することが圧倒的に多く、1970年代から80年代にかけて目立っていた大統領と議会を分け、別の党の候補者に入れる「スプリットボート(split vote)」が消滅していた。しかし、郵便投票でさらに時間を取って考えることができる。そのため、もしかしたら「スプリットボート」が増えたのではと推測している。

この結果はいずれ分かるだろうが、いずれにしろ、2020年の議会選挙はとても興味深い結果であり、上院の状況次第ではバイデン政権の公約といえるような政策がほとんどとまってしまうかもしれない。その意味ではとても重大な選挙結果だったといえる。

前嶋 和弘

  • 上智大学総合グローバル学部教授