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【政策研究部】研究プロジェクトへの期待―人口減少問題解決の手がかりを目指して―
December 25, 2025
1.はじめに
公益財団法人東京財団(以下「当財団」とする)においては、中期経営計画「Vision 2029:原点回帰と変革の5か年計画」に基づく取り組みの一環として、人口減少社会における諸課題について研究プロジェクト提案を募集し、10件の研究プロジェクト計画を採択した。その採択結果の概要については、こちら(https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4806)に掲載しているが、本稿においては、概要ではあまり触れなかった担当者の思いを中心に研究プロジェクトへの期待を紹介してみたい。
2.研究プロジェクト募集に至った背景
当財団は1997年7月1日に財団法人日本船舶振興会(現在の公益財団法人日本財団)およびボートレース関係法人等からの出捐により、運輸大臣(当時)の許可を得て、「国際研究奨学財団(Global Foundation for Research and Scholarship)」として設立された。その後、1999年5月に「東京財団(The Tokyo Foundation)」に名称を変更した。2010年3月には内閣府の認定を得て同年4月1日に公益財団法人へ移行し、設立20周年を迎えた2018年2月に「東京財団政策研究所(The Tokyo Foundation for Policy Research)」に名称を変更した。そして、2025年4月に、当財団が設立された当時の理念の原点に立ち返る意志を明確に表明するため、旧名称である「東京財団(The Tokyo Foundation)」へ戻した。
このような歴史を通じて、当財団は中立公平な立場から社会のあり方を考え、さまざまな問題について、調査、研究、政策提言を行うとともに、広い視野をもって社会に貢献する人材の育成を図ることで、日本ならびに世界の発展に寄与することを目的として活動してきたと自負している。一方で先駆的な研究成果や優れた政策提言が政策決定者に十分に理解・共有されていないのではないかという認識を有するに至った。
このような認識を踏まえ、当財団の研究成果や政策提言を確実に政策決定者に届けるべく、新たに立ち上げたのが「政策プロデューサー」制度である。この制度に基づき、人口減少問題を構成する主要なテーマに精通した有識者や実務家を招聘し、さまざまなアプローチから当財団の取り組みを政策決定者に共有するとともに、社会一般に普及・啓発を図っている。そして、もう1つの取り組みとして着手したのが政策提言の基礎となる人口減少問題に挑戦する重要かつ緊急性の高いテーマの発掘である。
そのため、今回の研究プロジェクト公募においては、基礎研究よりは応用研究、即ち人口減少問題に関する政策形成過程を見据えて、政策提言のみならず、社会実装も念頭に置いて選考を行った。従って、いわゆる科研費をはじめとする公的研究費の審査においては当然採択されているであろう優れた研究プロジェクト提案を多数不採択とせざるを得なかったことは、担当者として忸怩たるものがあるというのが偽らざる思いである。
3.研究プロジェクトに期待すること
このような背景を経て、採択された研究プロジェクトはいずれも当財団が自信をもって紹介できるものである。各研究プロジェクトの概要については、こちら(https://www.tkfd.or.jp/projects/)で紹介しているが、いずれも上述の選考基準に合致したものであると自画自賛する次第である。
そのため、各研究プロジェクトには単なる調査研究の域を大きく超えて、社会実装に向けて、政策決定者のみならず、マスメディアや省庁関係者、そして社会一般に対して、積極的に取り組みを発信して欲しいと祈念している。これらの取り組みは、まさしく「東京財団は、政策を語るだけの場ではない。政策を動かし、社会を変える場である。」との中林美恵子理事長の思いを具体化するためには必須のものである。
4.おわりに
本稿においては、研究プロジェクト公募に至った背景について、担当者の率直な思いを取り留めもなく紹介してきた。非営利の民間政策シンクタンクとして、社会実装に向けた思いは国内外のあらゆるシンクタンクに勝るとも劣らないと確信しているが、「仏作って魂入れず」との格言もある通り、思いばかり、あるいは準備ばかりが先行しても、社会実装は不可能である。「着実に研究プロジェクトを進めること」、「その後優れた研究成果を政策提言へと昇華させること」、そして、「政策提言が社会実装の基礎となるように発信すること」。これらの手順はシンクタンクにとっては必須の取り組みであり、王道であると確信する。人口減少問題解決の手がかりを目指して、王道を突き進もうとする当財団へのより一層のご支援とご協力を切望する次第である。