タイプ
その他
プロジェクト
日付
2007/12/14

第5回 現代病理研究会('07年度)



12月11日開催の第5回現代病理研究会は、ゲストに保坂俊司氏(麗澤大学国際経済学部教授)を迎え「文明と宗教」をテーマに議論を行いました。

はじめに、保坂氏より、日本的「宗教」観の形成背景と問題点について発表頂きました。まず、「宗教の定義は宗教学者の数だけある」といわれることが紹介され、世論調査においてほぼ7割の日本人が「宗教(信仰)」を持たないと認識していながら、宗教法人の数は18万を超え、宗教総人口は2億人以上となっていることなど、日本人の「宗教」観の特徴が具体的に紹介されました。そして、現代の日本人の「宗教嫌い」は、明治以降の近代教育によってイデオロギー的に形成されたという視点から、当時の文献が紹介されました。さらに、最近の世界の宗教事情、なかでも近年のイスラム人口の増加について、データを交えて発表頂きました。

その上で、保坂氏は、現在の日本に必要なこととして、発想の根本に宗教が欠落している現状を歴史的に検証すること、そして、日本的な「宗教」観を超えて、宗教を文化や政治・経済といった社会の諸制度や「文明」の中核(の一つ)として捉えることの重要性を指摘しました。

また、「儲かればいい」といった一部の経済活動に見られるように、人々の倫理面からも、今の日本は仏教や神道によって培われてきた精神性の基礎が薄れてきており、グローバル化によって文化が相対化されていく中で、人間の生き方を根底から規定する宗教の役割を意識的に認識することが必要ではないかとのことでした。

続く議論では、こうした指摘を受けて、自然や自分以外のものに対する畏怖の念といった、個々人の欲望の抑止力としての宗教と、アメリカにおけるキリスト教やイスラム諸国のように社会制度として政治と一体化した宗教はどう異なるのか、など、様々な論点が出され、今後、現代文明の特徴(病理)について議論を深めるにあたって宗教がきわめて重要であることが改めて認識されました。


(左手前から右回りに、安田喜憲主氏、米本昌平氏、保坂俊司氏、松井孝典氏、加藤秀樹)




(文責:吉原祥子