中間選挙における女性当選者の大幅増加

 
中間選挙で当選したイスラム教徒女性のイルハン・オマル氏(民主党、ミネソタ州)  写真提供 Kyodonews

早稲田大学社会科学総合学術院教授

中林美恵子

 11月の中間選挙で当選した新議会メンバーは、1月3日に行われる宣誓式で議員に就任することになる。開票日が過ぎても結果の出ない選挙区もあったが、就任式に間に合うと言う意味では許容範囲内に収まった。アリゾナ州の女性候補同士の上院選は、11月13日まで開票が続き、フロリダ州の上院選は再集計が命じられ、11月18日に勝敗が明らかになった。ミシシッピ州ではさらに時間がかかり、27日に上院の決選投票が行われた。日本のように選挙結果が出て直ぐに議員になるわけではないので、就任までの間はゆっくりと研修や準備の期間を経て、新年から連邦議員となる。

この中間選挙では、大統領側の政党に不利とされるなか共和党が上院を制し、下院では多数派の地位を失った。今年は投票率から当選議員の多様性に至るまで、いくつかの特徴が見られた選挙だった。特に女性議員の当選者数は過去最高を記録し、彼女たちを通してアメリカ連邦議会がより多様性を増すことを示唆した。 

今年の中間選挙の特徴

中間選挙にしては、今年は実に高い投票率だった。US Election Project[1]の選挙当日の集計では、1970年と2018年が、47.3%で並んだとされた。その後郵送による投票などの集計が続き、FairVote[2]によれば、12月12日時点で49.6%という数字が示されている。中間選挙としては過去100年で最高の投票率となったようだ。有権者にとっても今年の選挙は異例の過熱ぶりだったことがわかる。ピューリサーチセンター[3]によれば、投票所に行った人の理由として、38%がトランプ大統領に批判票を投じるためであると答え、26%がトランプ大統領を支えるためだったと答えた。大統領は投票動機と無関係と答えたのは33%だった。また、大統領を支持する(45%)人のうち88%が共和党の候補者に投票し、大統領を支持しない人(54%)のうち90%が民主党の候補に投票した。結果として、中間選挙では下院で民主党が共和党を約4%ポイント上回り(51.2%対47.1%)、上院では民主党が約15%ポイント上回った(56.9%対41.5%)[4]

また、女性の候補者が多かったことは最大の特徴といえる。Center for American Women and Politicsによれば、今年の中間選挙では女性の立候補者数が上下両院合わせて529人(上院53人、下院476人)で、2016年の合計183人(上院16人、下院167人)に比べて大幅な増加だった。また、例えば男性候補の中で現職議員に挑戦する候補者は36%であったのに比べ、女性候補の場合は、50%もの人が現職議員に挑戦していた。民主党候補者たちだけに絞っても、女性候補の52%は現職議員への挑戦だったが、男性候補ではそれが39%だった。つまり今年は、男性より女性のほうが高い壁にチャレンジしていたといえる。

さらにCNNの出口調査を見ると、女性の有権者と男性の有権者にも温度差があった。投票所に足を運んだ割合では、男性が48%で、女性は52%だった。その女性投票者のうち59%は民主党に投票したと答え、共和党に投票した女性有権者は40%に止まった。一方で男性の51%は共和党に投票し、民主党に投票したのは47%であった。中間選挙に限れば、これほど多くの女性が民主党に投票したのは1982年(女性票が民主党に58%、共和党に41%の割合で投じられた)以来だと指摘されている[5]

また同じCNNの出口調査によれば、今年は30歳未満の若い有権者の67%が民主党に投票し、32%が共和党に投票している。さらに、白人女性たちの投票行動として、2010年と2014年では共和党により多くが投票していたが、今年は両党半々の割合に変化した。

さらに、選挙前の10月にウォールストリート・ジャーナル紙とNBCが行った世論調査[6]によれば、大学を卒業した白人女性の61%が民主党を支持し、大学教育を受けていない白人男性の66%が共和党を支持すると答えた。調査を始めた1994年には、どちらのグループも共和党を支持していたものの、その差は徐々に広がり、今年の双方のギャップは観測史上最高になっている。 

過去最高を記録した女性議員数

女性候補者の数が増加したことにより、今年は女性の議員が多く誕生することは早くから予測されていたが、実際にその通りの結果がもたらされた。今年の選挙で上下両院の女性議員は総計126人(民主党106人、共和党20人)で、史上最高記録を達成した。女性議員比率は、これまでの20%から23.6%になった。特に下院では、総計102人(民主党89人、共和党13人)の女性議員が誕生し、その増加が際立った。現在の58人(これも過去最高だった)から一気に17人増えたのである。19.3%だった女性議員比率も、23.4%と大幅に変化した。上院は改選議席数が少ないこともあり、一人増加したのみだったが、今回改選の年に当たらなかった女性議員10人を含めれば、女性は総勢で24人(民主党17人、共和党7人)になった。上院の女性議員比率は24%となり、記録が塗り替えられたことになる。

新人の女性議員は、来年1月から総勢39人となる。これまでの最高数は、「女性の年」といわれる1992年の24人が記録だったので、今年はそれさえも凌ぐ大量当選が果たされた。当選者を政党別に見ると、上下両院ともで民主党の女性議員が圧倒的に多く誕生していることがわかる(図1参照)。近年は特にその差が開く傾向にあったが、今年の中間選挙ではさらに顕著になった。そもそも候補者数からして、共和党女性候補142人に対し民主党女性候補は387人と、大きな差が出ていた。 

 

図1 米連邦議会女性議員数(1917~2021年)

女性当選者たちと多様性

女性議員は極めて多様でもある。下院では有色人種の女性が43人(民主党42人、共和党1人)となり、上院では4人(全て民主党)の有色人女性が含まれる[7]。黒人女性は22人(全員民主)、ラテン系女性12人(民主11人、共和1人)、アジア・パシフィック系女性6人(全員民主)、ネイティブ米国人女性2人(双方民主)、中東・北アフリカ系女性1人(民主)となり、有色人女性の初当選は13人(全員民主党)で過去最高であった。

具体的には、デブ・ハーランド氏(民主党、ニューメキシコ州)およびシャリス・デイビス氏(民主党、カンザス州)は、ともに初の女性ネイティブ・アメリカンとして、新たに下院議員となる。また、ラシダ・タリーブ氏(民主党、ミシガン州)とイルハン・オマル氏(民主党、ミネソタ州)は、ともに初めてのイスラム教徒女性として国政に参加する。住民の40%がヒスパニック系になったテキサス州にさえも、女性の波は押し寄せた。この州で初めて下院に当選したのは、ベロニカ・エスコバー氏(民主党)とシルビア・ガルシア氏(民主党)である。もちろん、テキサス州以外にも多くのラテン系女性が来年に初登院することになる。デビー・マカーセル・パウエル氏(民主党、フロリダ州)、クチットル・トレス・スモール氏(民主党、ミネソタ州)、そして民主社会主義を訴え国境警備はいらないと主張するアレクサンドリア・オカシオ・コルテス氏(民主党、ニューヨーク州)などである。他にも多くの新人女性下院議員が誕生している(表1参照)。

 

表1 多数の新人女性下院議員が誕生する

* 現職に挑戦して勝利した候補者は斜体で表記。他は現職のいない選挙区で勝利。

出典: Center for American Women and Politics

 

下院議長に就任予定のナンシー・ペロシ下院議員も女性である。ただし議員経験が長いため、行政府および上院との妥協や取引も必要と考えるかもしれない。その際、特にリベラルな傾向のある女性議員の新人たちを民主党内で束ねていく必要がある。もし新人女性議員たちが、トランプ大統領に反発する理由から立候補を決意した、あるいは大統領や既存の政治に批判的な有権者の支持が厚いのならば、行政府との妥協は簡単にはできないことになる。大統領や共和党上院は、今年度予算のCR(つなぎ予算)問題のみならず、来年度にも再来年度にも、歳出法等で民主党に協力してもらう必要があるのだが、今回の選挙結果を受けてガバメント・シャットダウン(政府機能一部停止)などの危機に直面する確率は以前よりも高くなった。

ただし、新しく当選した女性議員たち一人ひとりの政策志向は、1月から始まる新議会で確認してみなければならないだろう。選挙戦ではリベラルな政策を掲げる女性候補が多く見受けられたが、実際に議会での投票行動などを分析しない限り、本当の政策志向は見えてこない。多様性を増した女性議員たちの活動は、今までに増して興味深いものとなる可能性がある。


[1] http://www.electproject.org/2018g

[2] https://www.fairvote.org/voter_turnout#voter_turnout_101

[3] http://www.pewresearch.org/fact-tank/2018/11/08/the-2018-midterm-vote-divisions-by-race-gender-education/

[4] “Representative Democracy? Democrats Won Popular Vote For House, Senate and President but Control Only One”  ニューズウィーク誌、2018年11月8日 

https://www.newsweek.com/democrats-won-popular-vote-2018-midterms-1207230

[5] “Democrats won women’s vote for Congress by the largest margin seen in midterm exit polls” ワシントンポスト紙、2018年11月7日

https://www.washingtonpost.com/politics/2018/11/07/why-did-democrats-win-house-one-word-women/?noredirect=on&utm_term=.04c06936fe0c

[6] “The Yawning Divide That Explains American Politics” ウォールストリート・ジャーナル紙、2018年10月30日 https://www.wsj.com/articles/the-yawning-divide-that-explains-american-politics-1540910719

[7] http://www.cawp.rutgers.edu/women-us-congress-2018

中林 美恵子

  • 早稲田大学社会科学総合学術院教授