2019年7月15日、フィラデルフィアで演説するサンダース氏 (写真提供 GettyImages)

台頭するサンダース派の外交論とは(2)サンダース氏の外交顧問と過去の言動

中央大学 法学部非常勤講師
西住祐亮

2020年大統領選挙の民主党予備選に参戦するバーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員(無所属、バーモント州)は、外交政策に関する言及の少なさを批判された2016年選挙時と異なり、この度は、同分野に関する発信の強化を試みている。前回の論考では、こうしたサンダース氏の発信強化の試みや、サンダース氏が民主主義と権威主義の抗争をアメリカ外交の中心課題に位置づけていることを、二つの外交演説に注目して紹介した。

今回の論考では、前回の論考で触れることができなかったサンダース氏の外交顧問や、サンダース氏の過去の言動に注目してみたい。

サンダース氏の外交顧問

外交関連の発信強化を試みるサンダース氏の姿勢は、外交顧問を確保する陣営の動きにも表れている。2016年選挙の際、外交顧問確保に向けたサンダース陣営の動きは鈍く、フルタイムの外交顧問が一人もいないという状況が長く続いた。サンダース氏がフルタイムの外交顧問を陣営に加えたのは、既に予備選挙が始まった後のことであった(20162月)。そしてサンダース氏本人が、外交関連の発信に積極的でなかったこともあり、外交顧問の言動に注目が集まるということも少なかった[1]

こうした2016年選挙時と比べると、この度のサンダース氏は、少なくとも速やかな動きを見せており、20172月には、外交専門シンクタンク・中東平和財団(Foundation for Middle East Peace)で所長を務めていたマット・ダス(Matt Duss)氏を、外交担当の議員スタッフとして招いた。このダス氏は、前回の論考で取り上げた二つの外交演説の草稿に携わったのに加え、サンダース氏の外交関連の議員活動(イエメン内戦に関する議会決議案の提出など)にも深く関与してきたとされる[2]2020年選挙に向けたサンダース氏が、外交関連の発信を強化していることもあり、ダス氏は、一部で注目を集める存在ともなっている。

例えば、左派系メディアとして長い歴史を持つ『ネイション』誌は、ダス氏の生い立ち(1972年生まれ)から現在までの歩みを紹介する長文記事を掲載した(20192月)[3]。この記事によると、ダス氏が初めて政治に関与したのは、2000年大統領選挙のラルフ・ネーダー(Ralph Nader)候補(緑の党)の選挙運動であり、ダス氏は同候補の反グローバリズムに影響を受けたとされる。その後は、ブロガーとしてイスラムフォビアの言論を監視する活動を行ったり、中東問題に関する論考を執筆したりした。

さらにその後は、民主党リベラル派の有力シンクタンクであるアメリカ進歩センター(CAP)に在籍し、2008年には同研究所のウェブ媒体である『シンク・プログレス(ThinkProgress)』の編集委員(国家安全保障問題担当)となった。ダス氏は2014年まで同研究所に在籍したが、この間、アメリカの軍事介入政策を批判する姿勢や、イスラエルの占領政策に反対する立場を鮮明にした。2011年にニーラ・タンデン(Neera Tanden)氏が同研究所の所長に就任すると、ダス氏の「反イスラエル姿勢」を批判する所内の圧力が強まり、外交政策の分野で「改革」を推し進める難しさを、ダス氏に痛感させた。その後、ダス氏は2014年にアメリカ進歩センターを離れ、中東平和財団の所長に就任した。同財団では、特に対イラン政策やパレスチナ問題に関する論考を数多く執筆し、対イラン政策については、オバマ(Barack Obama)政権のイラン核合意を強く支持した。

ダス氏の呼びかけにより、幾人かの外交専門家がサンダース氏の選挙運動に携わるようになるなど[4]、外交関連の発信強化を試みるサンダース氏にとって、ダス氏は重要な存在になっている。しかし他方、イスラエル占領政策に対するダス氏の過去の言動が、保守系メディアの批判の的になるなど、時としてダス氏の存在は、サンダース氏に新たな問題を突きつけることにもなっている。

サンダース氏の過去の言動

過去の言動ということについては、サンダース氏本人の言動も、様々な角度から注意が向けられるようになっている。サンダース氏は、1991年から2007年まで下院議員(バーモント州)を、その後は現在に至るまで上院議員を務めている。また下院議員になるまでは、バーモント州バーリントン市で市長を務めていた(1981年から1989年まで)。2020年選挙に向けて、サンダース氏が外交関連の発信を強化する中、市長・議員としてのサンダース氏が、これまでいかなる外交関連の言動を示してきたのか、或いは、現在の主張と過去の言動に整合性が見られるのかといったことが、改めて問われるようになっている。

1)市長としての言動

 例えば、ニューヨーク・タイムズ紙は、市長時代のサンダース氏に注目した長文記事を掲載した(20195月)[5]。この記事によると、オルテガ政権(社会主義的な政策を掲げたニカラグアの政権)への対抗と、コントラ(ニカラグアの反政府武装勢力)への支援を進めていた当時のレーガン(Ronald Reagan)政権(共和党)に対して、サンダース氏は市長としては異例なほど活発な反対運動を展開したとされる。サンダース氏は、「地元の問題から目を背けている」との批判をバーリントン市議会から受けながらも、プエルト・カベサス(ニカラグア北東部の港町)との姉妹都市関係樹立に尽力したり、オルテガ政権の招待に応じてニカラグアを訪問し、オルテガ派の集会に参加したりした。その他、サンダース氏は、グレナダ侵攻(198310月開始)への反対を呼びかける文書をヨーロッパやアジアの指導者に書いたり、社会主義国家であったソ連のヤロスラブリ市と姉妹都市関係を樹立したりした。日本についても、原爆投下に対する「反省(remorse)」を表明した文書を、広島・長崎の市長に送った(1981年夏)。

 こうした市長時代の言動は、サンダース氏が外交政策の分野でも、主流派路線への挑戦を厭わなかったことを印象づけるものであり、サンダース氏が2020年選挙を闘う現在でも、改めて注目を集めている。例えば、保守系メディアなどは、市長時代のこうした言動が、サンダース氏の今日に至る「急進的な姿勢」や、「左派独裁政権への生ぬるさ」を象徴するものであるとして、しばしば批判をしている。

2)議員としての言動

他方、議員としてのサンダース氏については、政治専門サイトの『ポリティコ』が長文記事を掲載した(20196月)[6]。この記事は、主流派の外交路線を批判するサンダース氏が、必ずしも反主流派の言動をとってこなかったことに注目するものであり、先述のニューヨーク・タイムズ紙の記事とは対照的な見方を示している。

この記事が特に注目する事例は、クリントン(Bill Clinton)政権(民主党)によるコソヴォ紛争への軍事介入政策(19993月開始)であり、下院議員であったサンダース氏が、空爆容認決議案に賛成票を投じたことや、同決議案が賛否同数で不成立[7]に終わった後も、地元の集会で軍事介入への支持を表明したことを紹介している。また、オバマ政権によるリビア内戦への軍事介入(20113月開始)についても、サンダース氏は上院議員として飛行禁止空域の設定を求めるなど、軍事介入への支持を表明した(ただしその後、早期撤収を求める姿勢に転じた)。こうした点を踏まえ、この記事は、「反戦レトリックと過去の言動の整合性」について、サンダース氏が十分な説明をしていないとの見方を示した。

加えて、この記事は、サンダース氏が2020年選挙に向けて掲げる「グローバルなプログレッシブ運動(global progressive movement)」[8]の考えについても、内政干渉を警戒する各国政府に、疑念を抱かせることになりかねないとする専門家の見方を紹介した。

こうした議員としての言動は、サンダース氏が反主流派や反戦の立場を必ずしも貫徹してこなかったことを印象づけるものであり、原則的な反戦主義者の一部からは、こうした言動に対して、疑念や不満も示されている。

障害となりうる公職経験の長さ

2020年選挙に向けて、乱立する民主党候補者の多くが、外交政策について十分な発信をしていない中、この度のサンダース氏は「最も外交について語る候補者」[9]になっていると指摘されることさえある[10]。しかしその分、この度のサンダース氏は、自身の過去の言動や、外交顧問の言動について、様々な角度から検証されるようにもなっている。

こうした検証の目が向けられるのは、当然ながらサンダース氏に限ったことではない。しかし自身の言動については、他の候補者よりも公職経験が長い分、サンダース氏は他の候補者以上に、説明を求められる局面が、この先も多くなるであろう[11]

過去の言動ということについては、同じく公職経験が長いジョー・バイデン(Joe Biden)候補も、他の民主党候補から様々な追及を受けている。民主党穏健派を代表するバイデン氏と、台頭する左派勢力を代表するサンダース氏ではあるが、公職経験の長さが仇となりうる点は、両者が共通して抱える課題とも言えるだろう。

 


[1] John Hudson, “Bernie Sanders Begins Building Foreign Policy Team,” Foreign Policy, February 24, 2016. <https://foreignpolicy.com/2016/02/24/exclusive-bernie-sanders-begins-building-foreign-policy-team/>; Derek Robertson, “Bernie Sanders is Quietly Remaking the Democrats’ Foreign Policy in His Own Image,” Politico, October 17, 2018. <https://www.politico.com/magazine/story/2018/10/17/bernie-sanders-is-quietly-remaking-the-democrats-foreign-policy-in-his-own-image-221313>

[2] Davis Richardson, “How One Advisor Bolstered Bernie Sanders’ Foreign Policy Credentials Ahead of 2020,” Observer, February 6, 2019. <https://observer.com/2019/02/matt-duss-bernie-sanders-foreign-policy/>

[3] David Klion, “Who is Matt Duss, and Can He Take on Washington’s ‘Blob’,” The Nation, February 9, 2019. <https://www.thenation.com/article/matt-duss-bernie-sanders-foreign-policy-blob/>

[4] Benjamin Wallace-Wells, “Bernie Sanders Images A Progressive New Approach to Foreign Policy,” The New Yorker, April 13, 2019. <https://www.newyorker.com/news/the-political-scene/bernie-sanders-imagines-a-progressive-new-approach-to-foreign-policy> 具体的には、プラフシェア基金(Ploughshare Fund)のジョセフ・シリンシオーネ(Joseph Cirincione)氏、国際危機グループ(International Crisis Group)のロバート・マレー(Robert Malley)氏、カーネギー国際平和基金(Carnegie Endowment for International Peace)のスザンヌ・ディマッジオ(Suzanne DiMaggio)氏、ジョンズホプキンズ大学のヴァリ・ナスル(Vali Nasr)氏などの名前が挙げられる。

[5] Alexander Burns & Sydney Ember, “Mayor and ‘Foreign Minister’: How Bernie Sanders Brought the Cold War to Burlington,” The New York Times, May 17, 2019. <https://www.nytimes.com/2019/05/17/us/bernie-sanders-burlington-mayor.html>

[6] Bill Scher, “What Would Bernie Bomb,” Politico, June 23, 2019. <https://www.politico.com/magazine/story/2019/06/23/bernie-sanders-foreign-policy-doctrine-227193>

[7] 賛成213(共和党31、民主党181、無所属1)、反対213(共和党187、民主党26)、不投票8(共和党4、民主党4)であった(1999年4月28日)。

[8] 横のつながりを強化する各国の権威主義勢力(new authoritarian axis)に対抗して、プログレッシブ勢力(民主主義を支持する勢力)の側も、国際的な連携を強化すべきとする考えである。前回の論考で取り上げたジョンズホプキンズ大学での演説(2018年10月)で、サンダース氏はこの考えを示した。また、サンダース氏がガーディアン紙に寄稿した論考(2018年9月)では、「国際的なプログレッシブ戦線(international progressive front)」という表現が使われていた。Bernie Sanders, “A New Authoritarian Axis Demands an International Progressive Front,” The Guardian, September 13, 2018. <https://www.theguardian.com/commentisfree/ng-interactive/2018/sep/13/bernie-sanders-international-progressive-front>

[9] Scher, op.cit.

[10] さらに2019年6月には、2020年選挙に向けた外交論文を『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿した。Bernie Sanders, “Ending America’s Endless War: We Must Stop Giving Terrorists Exactly What They Want,” Foreign Affairs, June 24, 2019. <https://www.foreignaffairs.com/articles/2019-06-24/ending-americas-endless-war>

[11] 例えば、この論考で取り上げたニューヨーク・タイムズ紙の記事と『ポリティコ』の記事について、サンダース氏は、前者の取材には応じたが、後者の取材には応じていない(2019年7月現在)。Sydney Ember, “’I Did My Best to Stop American Foreign Policy’: Bernie Sanders on the 1980s,” The New York Times, May 18, 2019. <https://www.nytimes.com/2019/05/18/us/bernie-sanders.html> 

西住 祐亮

  • 中央大学法学部非常勤講師