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ワシントンUPDATE 日米関係とエネルギー分野の技術革新

ポール・J・サンダース
米センター・フォー・ザ・ナショナル・インタレスト 上席研究員
米エネルギー・イノベーション・リフォーム・プロジェクト プレジデント

 

米中間の競争が激化する中で、日米は同盟関係をさらに深化させ、政治、経済、安全保障の長期的課題に対処するための能力を相互強化すべきだ。その中でエネルギー協力、特に共同研究開発は、重要な寄与をもたらす可能性がある。

エネルギー分野での二国間対話は、貿易という枠組みの中で主に議論されてきた。水圧破砕法によるアメリカの天然ガス生産は増大し、日本での天然ガス消費は相補的に伸びている。また、日本のエネルギーミックスにおける石炭の割合は、過去30年間で相当程度上がったものの、現在は減少に転じている。2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故による電力供給の崩壊は、沿岸風力発電や太陽光発電のための厳しい土地利用条件とともに、石炭消費を減らそうとする日本の努力を難しいものにしている。

このような状況下にあって、第4世代原子炉や炭素隔離利用貯留(CCUS)システムなど、新しいエネルギー技術は、日本の電力ジレンマを解決する助けとなりえる。しかし、残念なことに、エネルギー分野の技術革新における日米の協力は両国の経済関係ほどには緊密でない。両国はこの分野の科学技術や技術革新をめぐる二国間協力の幅広い制度的な基盤を共有しているにもかかわらず、その仕組みが十分に活用されていないのだ。日米は、お互いのエネルギー安全保障および経済上の競争力を改善し、二酸化炭素の排出を削減する一方で、同盟関係のさらなる強化の重要な機会を失っている可能性がある。

日米のエネルギー分野の課題

2016年の日本の電力源の構成を見ると、およそ3分の1は石炭であり、約40%が天然ガス、2%以下が原子力(2010年の26%から減少したものの、既存の政府計画では将来は20%以上に増加する見通し)という割合だった。石油、水力発電所、太陽光発電設備が日本のその他の電力源の大部分を占めており、それらを合わせると約21%になる。液化天然ガス(LNG)は石炭に比べ二酸化炭素の排出量が少ないが、高価であり、現在構築されつつある二酸化炭素を排出しない電力システムに取って代わられる可能性がある。また、太陽光や風力といった大規模な再生可能エネルギーは、商業的に成り立つほどの季節変動に対応できる貯蔵能力がないため、いわゆる「安定電力」(ベース需要を満たすのに必要な電力の不断の供給)を生み出すことができていない。日本の2019年版エネルギー白書にも書かれているように、大規模な再生可能エネルギーには原子力発電よりもずっと広い面積の土地が必要であり、これは日本のような地理的制約が多い国においては決定的な留意条件となる。

一方、アメリカは日本に比べて天然資源に恵まれた国だが、電力の入手しやすさや信頼性、安全性を最大化させる上で独自の課題を抱えている。安価な天然ガスは入手しやすく信頼でき安全だが、燃焼すると、石炭よりはずっと少ないとはいえ大量の温室効果ガスを発生させる。原子力は信頼性が高く、二酸化炭素を排出しないが、依然として費用が高い。1979年のアメリカでのスリーマイル島原発事故や1985年の旧ソ連でのチェルノブイリ原発事故、日本の福島原発事故を経て、その安全性にも疑念が持たれている。

再生可能エネルギーは、ますます入手しやすくなっており、二酸化炭素を排出しない安全な電力を供給することができる。石炭火力発電所だけでなく原子力発電所の存続をも危うくするほどだ。だが、再生可能エネルギーが脱炭素電力セクターをしっかりと支えていくためには、さらなるコストと容量の拡大が必要になる。信頼性よりも価格と容量を優先させるアメリカの電力システムは、今後時が経つにつれ、持続不可能な発電ミックスを生み出す可能性がある。同時に、政治的な意見の対立が続く米国政府では、持続可能な連邦レベルでの気候政策が構築できていない。そうした中でアメリカの二酸化炭素の排出量が過去に減少したのは、電力市場における価格圧力による変化の偶然の産物と言えよう。

エネルギーの技術革新

日米が温室効果ガスの削減とともに、エネルギーの入手しやすさや信頼性、安全性の改善に努めている中で、エネルギーの技術革新は、両国の努力に重要な寄与をもたらすことができる。二酸化炭素を排出しない発電を可能にする炭素隔離貯留や、より良く電力を貯蔵するためのより安価で安全かつ速い第4世代原子炉、また今までに誰も想像したことがないようなその他のシステムなどのテクノロジーは、エネルギー市場を転換し、エネルギーの安全保障と競争力を改善することができるだろう。新しいエネルギー技術の研究、開発、展開のために日米が積極的かつ効果的に協力し合うことは、共同防衛調達計画と同様、作業の重複を最小限に抑え、日米の同盟関係を強化し、公共投資の価値を最大化することにもつながるだろう。そして、なにより、日米両国の強固な経済成長は、強力で近代的な防衛力を維持できる経済的な力を示すことで、両国の長期的な抑止力を強化し、両国に対するより広範な国際的認知を得ることができるだろう。これによって、ひいては、日米両国の「ソフトパワー」を高め、東アジアを含めた世界における政治競争力を増大させることができるのだ。

日米両国は、日米科学技術協力合同高級委員会、日米民生用原子力研究開発ワーキンググループ、日米戦略エネルギーパートナーシップなど、エネルギーをはじめとした様々な分野における科学技術協力を支える多くの組織を構築している。しかし、日米双方にとっての課題は、両国関係の制度化ではなく、実際の個別および共同的な活動をいかに効果的な成果へと昇華させていくかにある。安倍政権とトランプ政権は、この分野での活動を活発化・拡大させることで相互に利益を得ることができるはずだ。

オリジナル原稿(英文)はこちら

ポール・J・ サンダース

  • Senior Fellow in US Foreign Policy at the Center for the National Interest

    President, Energy Innovation Reform Project