2019年10月18日、バージニア州ノーフォークで演説するエリザベス・ウォーレン氏 (写真提供:Getty Images)

ウォーレン候補の外交論とは :サンダース候補との共通点と相違点

中央大学 法学部非常勤講師
西住祐亮

2020年大統領選挙の民主党予備選に向けて、台頭する党内左派の支持を集めるエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員(民主党、マサチューセッツ州)の勢いが増している。民主党予備選を見据えた世論調査の多くで数字を伸ばすなど、ウォーレン氏の支持の広がりを印象づける場面が増えている(201910月現在)。

こうした中、ウォーレン氏が掲げる外交論や世界観への注目も、必然的に高まっている。乱立する民主党候補の主たる関心は国内政策にあり、このような傾向はウォーレン氏にも指摘できる。しかし他の候補たちと比べると、ウォーレン氏は外交関連の発信も強化しており、「国務省の再建」に向けた具体案なども提示している。

また、ウォーレン氏の外交論を理解する上で重要になるのが、同じく党内左派の支持を受けて大統領選挙に出馬しているバーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員(無所属、バーモント州)の存在である。以前の連載((1)(2))で紹介したように、サンダース氏はウォーレン氏に先駆ける形で、外交関連の発信を強化し、「外交に弱い候補者」という評判の払拭にも努めてきた。国内政策と同様、外交政策の分野でも、両者の主張には重なる部分が多く、両者の主張を軸として、現在の民主党では、「プログレッシブな外交(progressive foreign policy)」を求める声が高まっている。

そこでこの論考では、サンダース氏との共通点及び相違点に注目して、ウォーレン氏の外交論について概観する。

「プログレッシブな外交」を求める声の高まり

ウォーレン氏は、上院議員選挙に勝利した2012年までは、大学での勤務を続け、消費者保護の問題などを専門としていた。上院議員に就任してからも、基本的には国内政策に関する活動に力を入れたため、外交政策に関するウォーレン氏の主張については、はっきりとしない部分が多かった。

しかしウォーレン氏は、2020年大統領選挙を見据えて(201929日に出馬表明)、外交政策に関する発信も強化している。201811月には、アメリカン大学で外交演説を行い[1]、また、ほぼ同じ内容の外交論文を『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿した[2]

こうした外交演説や外交論文で掲げられたウォーレン氏の主張は、サンダース氏の主張と共通する部分が多く、両者の主張は「プログレッシブな外交」「プログレッシブな代案」などと形容されるようになっている。例えば、ウォーレン陣営で顧問を務めるガネシュ・シタラマン(Ganesh Sitaraman)氏は、外交演説などで示された両者の外交論を「プログレッシブな外交」と呼び、これに対する支持がアメリカ国内で広がりつつあるとの見方を示している[3]

「プログレッシブな外交」は、党派の違いを越えて広く支持されてきた主流派の外交路線と、トランプ大統領が打ち出す「アメリカ第一」路線の双方に対して、激しく反発を示しており、自らをいわば「第三の路線」と位置づけている。「プログレッシブな外交」が主に批判するのは、主流派の外交路線であれば、海外での軍事力行使や、近年の「変質した経済グローバル化」の推進であり、「アメリカ第一」路線であれば、民主主義・人権への関心の低さなどである。

「プログレッシブな外交」の中身

「プログレッシブな外交」の中身については、各方面から様々な評価が示されている[4]。こうした評価を踏まえ、その主な特徴を整理すると、おおよそ以下の3点に要約することができる。

第一は、民主主義や人権といった価値の重視を掲げていることである。ウォーレン氏に関しては、『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿した論文の冒頭で、「世界各地で民主主義が攻撃を受け、権威主義的な政府と右派デマゴーグが台頭している」との認識を示し、こうした問題がアメリカにとっての「直接的な脅威」であると強調している。「民主主義の後退」「権威主義の台頭」への警戒は、現在のアメリカで幅広く共有されているものであるが、「プログレッシブな外交」にとっては、この問題が中心的な課題に位置づけられているとも言える。

これと関連して、「権威主義の台頭」が、不平等(格差拡大)や腐敗(汚職)の問題と密接に結びついていると強調する点も、「プログレッシブな外交」の大きな特徴である。以前の連載で紹介したように、サンダース氏は、権威主義と不平等・腐敗の問題が「みな不可分」であると指摘し、同じくウォーレン氏も、「権威主義と腐敗した資本主義の結びつき」がアメリカにとっての脅威であるとしている(『フォーリン・アフェアーズ』論文)。

第二の特徴は、アメリカ軍による海外での軍事力行使に批判的なことである。「終わりなき戦争(endless war)」への反対は、「プログレッシブな外交」のいわばスローガンにもなっており、特に中東・イスラーム地域での軍事力行使には、かなり批判的である。ウォーレン氏については、オバマ前政権がパキスタンやアフガニスタンで多用したドローン(無人航空機)による爆撃に対しても、暗に批判をしていた[5]

これと関連して、国防予算の削減を求め、削減分をアメリカ国内の教育・医療・災害対策予算や、国務省予算などに充てるべきと主張するのも、「プログレッシブな外交」の特徴である。ウォーレン氏については、現状の国防予算が過大であるとの見方を示した上で、国防省と軍需産業の関係見直しや(アメリカン大学演説)、国務省予算の増額といった方針を打ち出している。

第三の特徴は、国内問題と外交問題の結びつきを強調することである。すなわち、国内問題の解決が、世界におけるアメリカの地位や競争力を向上させる上でも、先決すべき「第一歩」になるとの見方である。ウォーレン氏とサンダース氏の両者が、これまで国内政策に主として関心を注いできたことを踏まえると、「プログレッシブな外交」がこうした結びつきを強調するのは、ごく自然なこととも言えるであろう。ウォーレン氏に関しては、「安全かつ強固な国内基盤があって初めて、アメリカは海外で力を示すことができる」などと述べている(アメリカン大学演説)。

また、こうした観点から、「プログレッシブな外交」は、ロシアによる2016年アメリカ大統領選挙介入の問題や、トランプ大統領のアメリカ国内での振る舞い(人種や腐敗の問題など)についても、しばしば外交政策の文脈で言及する。

なお、補足すると、気候変動の問題を、外交・安全保障上の優先課題に位置づけている点も、「プログレッシブな外交」の大きな特徴である。ただし、こうした姿勢は、党内左派に限らず、今日の民主党で、かなり幅広く共有されているものでもある[6]。例えば、ピュー・リサーチ・センターの世論調査(20197月公表)によると、民主党支持者(及び民主党寄り)の84%が、気候変動をアメリカにとっての重大な脅威であると回答しており(以下の図を参照)[7]、調査対象となった7つの問題の中で、最も高い数字となった(逆に共和党支持者では最も低い数字となった)。ウォーレン氏については、気候変動をアメリカの生存にとっての脅威であると指摘し(『フォーリン・アフェアーズ』論文)、あらゆる政策に、気候変動対策を盛り込んでいく意向も示している[8]

Wide partisan gaps on threat from climate change, Russia; smaller differences on Iran, North Korea

ウォーレン氏とサンダース氏の相違点

以上のように、ウォーレン氏とサンダース氏が掲げる外交論には共通点が多く、両者の主張は「プログレッシブな外交」として、民主党の中で支持を広げつつあるように見受けられる。

しかし他方、ウォーレン氏とサンダース氏の間に、幾つかの相違点があることにも、一定の注意を払う必要はある。例えば、左派系のウェブサイトである「コモン・ドリームズ」によると、上院議員としてのサンダース氏が、国防予算に関する近年の法案の80%に反対票を投じたのに対して、ウォーレン氏は法案の3分の2に賛成票を投じたとされる[9]

また、サンダース氏が今日のアメリカとイスラエルの関係にかなり批判的で、対イスラエル支援の見直しも示唆しているのに比べて、ウォーレン氏は総じてイスラエルとの関係維持を重視してきたと見られる。その他、ここまでのところは、ウォーレン氏の方が中国関連の問題への言及が多いとの指摘もある[10]

加えて、具体的な政策案を意識的に多く打ち出そうとするウォーレン氏の姿勢も、サンダース氏との相違点として指摘できるであろう。例えば、ウォーレン氏は、「国務省の再建」として、国務省ポストの増設や、国務省内における性別・人種上の多様性の追求など、かなり詳細な具体案を、既に幾つか提示している[11]。また、香港デモの問題についても、ウォーレン氏は、デモ側への支持を表明する論考を『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿し、香港への警察備品の輸出停止や、香港市民への一時保護資格(TPS)の付与といった具体案も示している[12]

さらに、こうした政策面での違いに加えて、基本的な政治姿勢や人的交流のあり方が、両者の外交姿勢に違いを生む可能性もある。例えば、左派の政治家としての経歴が長いサンダース氏には、イギリス労働党のジェレミー・コービン(Jeremy Corbyn)党首など、世界各地の左派系政治家との強いつながりがあるが、ウォーレン氏にはこうした人的なつながりが今のところはない[13]

加えて、基本的な政治姿勢の違いとしては、民主党に対する向き合い方の違いなどが指摘される。例えば、左派系メディアの『ネイション』誌は、サンダース氏が「民主党の中で活動するプログレッシブな政治家」であるのに対し、ウォーレン氏は「プログレッシブな考えを支持する民主党の政治家」であるとした上で、ウォーレン氏が現状に不満を抱きながらも、民主党に忠実な存在であると指摘している[14]

また、ウォーレン氏が、富裕層の利益に配慮する「変質した資本主義」を問題の根源と見なし、こうした変質を正すことを目標に掲げているのに対して、サンダース氏は、資本主義そのものを問題の根源と見なし、より大掛かりな社会的改変を目標に据えているといった指摘も示されている[15]

こうした政治姿勢や人的交流の問題は、必ずしも両者の外交論に直結するものではないが、両者の外交姿勢に違いを生むきっかけにはなりうる。例えば、資本主義や市場経済に対する両者の姿勢の違いは、気候変動問題の解決に向けて両者が打ち出している政策案の中にも見て取ることができるとされる[16]

この論考で指摘したように、ウォーレン氏とサンダース氏の外交論については、相違点よりも共通点の方が多く、両者の主張が「プログレッシブな外交」を求める民主党内の動きを後押ししていることが、まずもって注目されるべき点であろう。

ただし両者の間に「微妙な違い」があるのも確かであり、こうした「微妙な違い」が民主党予備選の今後の展開を左右する可能性も排除はできない。特にウォーレン氏の勢いが増して以降、サンダース氏(及びサンダース支持者)は、自身こそが労働者や左派の声を代弁できる「本物の候補者」であるとの主張を強め、巻き返しを図っているだけに、外交政策の分野でも、両者の違いに注意する視点は必要になるであろう。

 


[1] “Read the Transcript of Elizabeth Warren’s Big Foreign Policy Speech,” The Boston Globe, November 29, 2018. <https://www.boston.com/news/politics/2018/11/29/elizabeth-warren-foreign-policy-speech-american-university>

[2] Elizabeth Warren, “A Foreign Policy for All: Strengthening Democracy—at Home and Abroad,” Foreign Affairs, January/February, 2019. <https://www.foreignaffairs.com/articles/2018-11-29/foreign-policy-all>

[3] Ganesh Sitaraman, “The Emergence of Progressive Foreign Policy,” War on the Rock, April 15, 2019. <https://warontherocks.com/2019/04/the-emergence-of-progressive-foreign-policy/>

[4] Jeff Colgan, “Three Visions of International Order,” The Washington Quarterly, Summer, 2019. pp.85-98; Thomas Wright, “The Problem at the Core of Progressive Foreign Policy,” The Atlantic, September 12, 2019. <https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2019/09/progressives-foreign-policy-dilemma/597823/>; Grace Segers, “What Does a Progressive Foreign Policy Look Like? Rep. Ro Khanna Says He Has the Answer,” CBS News, August 8, 2019. <https://www.cbsnews.com/news/what-does-a-progressive-foreign-policy-look-like-rep-ro-khanna-says-he-has-the-answer/>; Robert Borosage, “In Search of a Green New Foreign Policy,” The Nation, May 30, 2019. <https://www.thenation.com/article/war-climate-military-spending-2020/> など。

[5] Wright, op.cit.

[6] Borosage, op.cit; Alex Ward, “Democrats Want to Challenge Trump’s Foreign Policy in 2020. They’re Still Working out How,” Vox, April 24, 2019. <https://www.vox.com/policy-and-politics/2019/4/24/18510844/2020-election-trump-democrats-foreign-policy> など。

[7] “Climate Change and Russia Are Partisan Flashpoints in Public’s Views of Global Threats,” Pew Research Center, July 30, 2019, p.3. <https://www.people-press.org/wp-content/uploads/sites/4/2019/07/PP_2019.07.30_Foreign-Policy_FINAL.pdf>

[8] Umair Irfan, “A Guide to How 2020 Democrats Plan to Fight Climate Change,” Vox, September 19, 2019. <https://www.vox.com/2019/9/10/20851109/2020-democrats-climate-change-plan-president> 具体的には、アメリカ市場へのアクセスと引き換えに、環境保護策の強化を相手国に求める貿易政策などを提示している(『フォーリン・アフェアーズ』論文)。

[9] “Are Sanders and Warren Throwing a Lifeline to the Military-Industrial Complex?,” Common Dreams, August 26, 2019. <https://www.commondreams.org/views/2019/08/26/are-sanders-and-warren-throwing-lifeline-military-industrial-complex>

[10] Wright, op.cit. ただし対イスラエル支援については、ウォーレン氏も、2019年10月に、見直しの可能性を示唆する発言をしている。John Bowden, “Warren Says Making Israel Aid Conditional on Settlement Building is ‘on the Table’,” The Hill, October 20, 2019. <https://thehill.com/homenews/campaign/466661-warren-cutting-aid-to-israel-on-the-table-in-response-to-settlement>

[11] Elizabeth Warren, “Revitalizing Diplomacy: A 21st Century Foreign Service,” Medium, June, 2019. <https://medium.com/@teamwarren/revitalizing-diplomacy-a-21st-century-foreign-service-2d9d195698f>

[12] Elizabeth Warren, “It Is Time for the United States to Stand Up to China in Hong Kong,” Foreign Policy, October 3, 2019. <https://foreignpolicy.com/2019/10/03/it-is-time-for-the-united-states-to-stand-up-to-china-in-hong-kong/>

[13] Eric Levitz, “The Best Argument for Bernie Sanders is His Democratic Globalism,” Intelligencer, April 4, 2019. <http://nymag.com/intelligencer/2019/04/bernie-sanders-advantage-elizabeth-warren-democratic-globalism-foreign-policy.html>

[14] Adan Smith, “The Overlooked Difference Between Bernie Sanders and Elizabeth Warren,” The Nation, July 23, 2019. <https://www.thenation.com/article/the-overlooked-difference-between-bernie-sanders-and-elizabeth-warren/>

[15] Tara Golshan, “Are Elizabeth Warren and Bernie Sanders the Same? The Debate, Explained,” Vox, June 18, 2019. <https://www.vox.com/policy-and-politics/2019/6/18/18678000/elizabeth-warren-bernie-sanders-2020-similarities-differences >

[16] Conor Lynch, “Where Bernie Sanders and Elizabeth Warren Actually Differ,” The Week, September 12, 2019. <https://theweek.com/articles/864246/where-bernie-sanders-elizabeth-warren-actually-differ> など。

西住 祐亮

  • 中央大学法学部非常勤講師