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【論考】42.8%が「関心がない」:データからみる人口減少社会への課題意識
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【論考】42.8%が「関心がない」:データからみる人口減少社会への課題意識

September 7, 2026

このレビューのポイント

1. 人口減少社会の諸課題に「関心がない」と回答した人が約4割を占めた。
2. 人口減少社会への対応として想起される施策は、経済的支援を中心とする傾向がみられた。
3. 人口減少社会をめぐる人々の認識を把握することは、政策形成を考える上で重要である。

・はじめに
・調査概要
・調査結果
・考察
・おわりに

はじめに

背景

日本では少子高齢化と人口減少が進み、社会保障、雇用、地域経済、教育、公共サービスなど、社会の幅広い領域に影響が及んでいる。人口減少は、人口規模の縮小にとどまらず、社会の仕組みや制度の見直しを迫る長期的な課題である。

東京財団は、中期経営計画「Vision 2029」において、人口減少社会における持続可能な発展を重点課題に位置づけている。政策研究部では、「未来社会データ事業」にて、人口減少社会に関するデータを収集・分析し、研究や政策提言の基盤となるエビデンスの構築を進めている。

問題意識

少子高齢化や人口減少をめぐる問題は日常的に報じられ、さまざまな政策が議論されている。一方で、人々が人口減少社会をどのように認識し、どのような課題や対応策を想起しているのか、その実態は十分に明らかになっていない。人口減少社会をめぐる人々の認識を把握することは、今後の調査研究や政策形成を進める上で重要な基礎資料となると考える。

目的

本調査では、人口減少社会に対する人々の関心や課題認識、想起される施策の実態を探索的に把握し、今後の調査研究や政策議論に向けた基礎的知見を得ることを目的とした。

調査の位置づけ

「未来社会データ事業」では、今後、地域住民や企業を対象とした継続的なアンケート調査を計画している。本調査は、その調査設計に先立ち実施した予備調査であり、今後の本調査に向けた調査項目や設問構成を検討するための基礎資料として位置づけるものである。

調査概要

調査方法・期間

・方法:インターネット調査

・期間:2026123日(金)~127日(火)

調査対象

・対象者:1869歳の男女(性別・年齢・地域を人口構成比に基づき割付)

・エリア:全国7地方区分(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州沖縄)

・有効回答数:5,000人

質問内容

本調査は予備調査であるため、質問項目を限定した。人口減少社会に対する回答者の課題認識や政策イメージを把握するため、「関心がある」と回答した人には課題として認識している事項と想定される施策を、「関心がない」と回答した人にはその理由を、それぞれ自由記述形式で回答を求めた。

実際の調査票で使用した質問文は、以下の通りである。

日本は総人口12,615 万人(2020年)から長期の人口減少過程に突入しています。50年後には総人口が現在の7 割に減少し、そのうちのおよそ4 割を65 歳以上が占める社会になることが予測されています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)。

この現状を踏まえて、以下の質問にお答えください。

1.人口減少社会の諸課題について関心がありますか。

・はい  2.1

・いいえ  3.

2-1「はい」と答えた方にお聞きします。人口減少社会のどのような課題について関心がありますか。箇条書きで最大3つ、具体的にお書きください。

2-2 2-1で挙げていただいた課題について、それぞれどのような施策があると考えられますか。既存の施策でもアイディアでもかまいませんので、最大3つ、具体的にお書きください。

 3「いいえ」と答えた方にお聞きします。人口減少社会の諸課題に関心がない理由を具体的にお書きください。

調査の限界と留意点

本調査は予備調査として全体傾向の把握を目的としたものであり、結果の解釈には以下の留意が必要である。

  • 対象は調査委託先のインターネットモニターであり、性別・年齢・地域の構成比を人口統計に合わせているが、得られた分布を国民全体の意識としてそのまま一般化することはできない。
  • 群間の差については統計的検定を行っていない。本文で示した属性別・地域別の差は記述統計上の差であり、母集団における差の存在を示すものではない。
  • 自由記述は分析者が内容を読み取ってカテゴリに分類したものであり、分類には判断が介在する。提示した分類は解釈の一案である。

調査結果

人口減少社会の諸課題に対する関心

「人口減少社会の諸課題について関心がありますか。」という質問に「はい」と回答したのが全体の57.2%、「いいえ」と回答したのが42.8%であった。

図1 人口減少社会の諸課題についての関心度

 

属性別にみると、「はい」と回答した割合は女性より男性で高く、若年層より高年齢層で高い傾向がみられた。地域別の差は、性別および年代別の差と比べて小さかった。

 2 人口減少社会の諸課題に対する関心有無(性別・年代)

 図3 人口減少社会の諸課題に対する関心有無(地域)

人口減少社会における課題意識および想定される施策

では、人々は人口減少社会についてどのような社会課題に関心を持っているのだろうか。

今回の調査では「人口減少社会のどのような課題について関心がありますか。」という質問で、最大3つまで自由記述回答を求めた。回答内容をどのような社会課題・施策に言及しているかについて、テーマ分析に基づき分類した結果、以下の9つのカテゴリと「その他」に整理された。

1.少子化・育児・教育
2.社会保障・経済的負担
3.労働力不足・雇用
4.高齢化・医療介護
5.地方衰退・地域課題
6.経済的影響・市場縮小
7.外国人・移民課題
8.インフラ・社会基盤の維持
9.国力低下・国際競争力

図4 人口減少社会における課題認識の分類

 以下では、特に回答の多かった5つの社会課題「少子化・育児・教育」「社会保障・経済的負担」「労働力不足・雇用」「高齢化・医療介護」「地方衰退・地域課題」について詳しく見ていく。

1.少子化・育児・教育

人口減少社会の主要な社会課題のうち、回答者の2割以上が挙げたのが少子化・育児・教育に関わる問題である。具体的には、少子高齢化、晩婚化・未婚化、子育て資金の不足、出生率の低下、これに伴う労働力人口の減少を指摘する回答が多かった。

最も多く挙げられた施策は、補助金・手当、育児環境整備、保育園充実といった子育て支援全般と、晩婚化対策・婚活支援や結婚祝い金等の結婚・出産支援の強化である。また、教育費に対する経済的支援も多く挙げられた。無償化、補助、学費削減等、支援の程度には幅があった。

図5 「少子化・育児・教育」に関する改善策

 2.社会保障・経済的負担

今回の調査で2番目に多く挙げられたのが、社会保障・経済的負担の問題である。

具体的には、現役世代の負担増や制度崩壊といった年金の問題、社会保障の維持に係るコスト増、税負担が重い一方で税収は減少することが指摘された。これらの回答からは、主たる問題意識は社会保障制度を維持するための経済的負担が重くなっていることや、負担増にもかかわらずこれまでのように維持されなくなることとみられる。挙げられた対策を見ても、税金軽減や子育て減税、消費税廃止といった減税・による経済的支援が多かった。

他方で、負担の公平化(高齢者負担増、医療費の自己負担増、高所得者への課税強化)、税金の使途見直し(コストカット、無駄削減、透明化等)、年金制度改革のような、制度に踏み込んだ施策を求める意見も多くみられた。

図6 「社会保障・経済的負担」に関する改善策

 3.労働力不足・雇用

労働力不足や雇用の問題は、3番目に多く挙げられた(「その他」を除く)。

対策としては、外国人材の受入れが最も多く挙げられ、次いで技術活用・DXAI、ロボティクス等)が挙げられた。高齢者の雇用・活用 (就労促進、就業年齢引き上げ等)や雇用・働き方改革等も挙がったものの、上位2つの施策と比べると低い水準にとどまった。

この結果からは、回答者が想起する労働力不足は、外国人材やAI、ロボティクスによる代替が想定される領域を中心として認識されている可能性が示唆される。

図7 「労働力不足・雇用」に関する改善策

4.高齢化・医療介護

高齢化・医療介護に関しては、社会保障制度の維持や医療・介護体制への負担が主な課題として挙げられた。

具体的には、高齢者の将来的な介護を担う人材の不足や医療費の高騰、現役世代の負担増などに関する回答がみられた。高齢化は少子化と併せて言及されることが多い一方、回答者は人口動態上の問題にとどまらず、医療・介護をはじめとする社会保障上の課題として認識していることがうかがえた。

想定される対策としては、高齢者雇用や年金制度といった経済基盤の確保に関わる施策や、社会保障制度を支える現役世代に向けた出産・子育て支援と同程度に、医療費負担の見直し(高齢者の負担増等)を含めた経済施策が挙げられた。また、「その他」の中には「医療・介護人材の確保・待遇改善」や「介護サービスの拡充」といった意見も散見された。

図8 「高齢化・医療介護」に関する改善策

 5.地方衰退・地域課題

地方衰退・地域課題としては、過疎化、地方インフラの維持困難や65歳以上が集落人口の50%以上となる限界集落の増加、市町村の存続に関する懸念等が挙げられた。

対策としては、地方創生関連の施策を挙げる回答が多かった。具体的には、機能集約化や居住形態の効率化を図るコンパクトシティ化、Uターン支援や住みやすい環境整備等の地方移住促進、移住者や企業の誘致等の地方活性化である。また、こうした地方基盤の維持管理に向けた交通手段確保、老朽化対策等のインフラ整備も挙げられた。

図9 「地方衰退・地域課題」に関する改善策

 人口減少社会の諸課題に関心がない理由

最後に、「関心がない」と回答した人が挙げた理由を確認する。関心がない理由は、次の7つのカテゴリに整理された。このうち、6,7については「その他」内で具体的な記述があった内容を挙げている。

  1. 問題意識・興味・関心の欠如、現状維持
  2. 個人ではどうにもならない・無力感、諦め・宿命論
  3. 自分の生活で手一杯・余裕のなさ
  4. 社会・制度への不満
  5. 知識・理解不足
  6. 個人的な事情・ライフステージ
  7. 将来への影響の低さ・無関係

10 人口減少社会の諸課題に「関心がない」理由の分類

このうち「個人的な事情・ライフステージ」には「自分に子供がいない」「もう歳だから」、「社会・制度への不満」には「物価が高いからどうしようもない」「政府が無策だから」といった回答が含まれる。

無関心の理由の約7割には、そもそも問題意識の欠如がみられた。こうした層に対しては、人口減少社会の諸課題が自身に関わる問題であることを示し、その深刻さを伝えること自体に意義があると考えられる。

考察

本調査で最も注目される結果は、人口減少社会の諸課題に「関心がない」と回答した人が42.8%を占めたことである。少子高齢化や人口減少に関わる諸問題が日常的に報じられているにもかかわらず、現役世代である2050代においても、「関心がない」と回答した人が半数近く存在した。この結果は、人口減少が社会全体に関わる問題でありながら、その深刻さや影響が必ずしも人々の関心に結びついていない可能性を示している。

もっとも、本調査は予備調査であり、結果を広く一般化することには留意が必要である。一方で、人口減少社会に対する関心や課題認識の現状を把握し、今後の調査で検討すべき論点を明らかにする上で、基礎的な知見が得られた。

また、課題ごとに想起される施策には一定の特徴がみられた。「少子化・育児・教育」に関する課題では、子育て支援や教育費負担の軽減などの経済的支援を挙げる回答が多く、少子化対策が家計負担の軽減を中心に認識されている傾向がみられた。「社会保障・経済的負担」では、補助金・手当や減税などの経済的支援に加え、負担の公平化や年金制度改革を求める意見もみられた。一方、「労働力不足・雇用」では、外国人材の受入れや技術活用・DXに回答が集中した。

このように、課題によって想起される施策の内容は異なるものの、全体としては補助金・手当や減税などの経済的支援を挙げる回答が多かった。これらの結果は、人々が人口減少社会の課題をどのように認識し、それに対してどのような政策対応を想定しているのか、その一端を示すものである。

おわりに

人口減少は、日本のみならず、世界の多くの国や地域が直面する長期的な社会課題である。その影響は、社会保障、雇用、地域経済、教育、公共サービスなど、社会の幅広い領域に及ぶ。

こうした課題に対応するためには、制度や政策の設計に加え、人々が人口減少社会をどのように認識し、何を課題として捉え、どのような対応を求めているのかを把握することは欠かせない。社会の認識と政策上の論点との間にどのような隔たりがあるのかを明らかにすることは、実効性のある政策を検討し、建設的な議論を形成する上で重要であるからだ。

本調査は予備的なものであるが、人口減少社会への関心が社会全体に十分に広がっているとはいえない現状と、人々が想起する課題や施策の特徴を示した。今後は、調査対象や質問項目を拡充し、属性による違いを分析するとともに関心の背景をさらに深掘りしていく必要がある。

東京財団では、具体的な政策提言に加え、人々の認識や社会の実態に関するエビデンスを蓄積・発信することで、人口減少社会をめぐる政策議論に貢献していきたい。

  

  • 研究分野・主な関心領域
    • 社会調査
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