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【テキスト版】2年後導入「給付付き税額控除」徹底解説
September 2, 2026
※本記事は2026年8月26日公開の「【動画解説】2年後導入「給付付き税額控除」徹底解説」を、テキスト記事化したものです。([]内は動画内の参考時刻です。)
給付付き税額控除を導入する背景とは?
南雲: 高市総理大臣が中所得者・低所得者の負担軽減策の「本丸」とする「給付付き税額控除」が、2029年度から導入されることになりました。しかし一方で、具体的な内容については不透明な部分もあります。まずは、この全く新しい制度が導入されることになった背景について教えていただけますか? [00:45]
森信: 実は、この給付付き税額控除というアイデア自体は20年ほど前から政府内にあり、過去に2回法律にもなっているのです。しかし、政府側に本気度がなかったため、放置されていました。 転機となったのは5年前です。私が高市総理(当時は議員)からご相談を受けた際、「諸外国には就労インセンティブを高める給付付き税額控除という制度があり、単なるばらまき減税ではなく労働供給を増やす仕組みだ」とお話ししました。高市さんは「非常に良い制度だ」と共感され、ご自身の著書や総裁選の公約にも取り入れられました。今回ここまで話が進んだのは、高市総理の強いリーダーシップがあってこそだと思います。
給付付き税額控除の仕組み
南雲: そもそも「給付付き税額控除」とはどのような仕組みなのでしょうか?分かっているようで詳しく知らない部分も多いです。 [03:24]
森信: 仕組み自体はシンプルですが、少し解説が必要ですね。 本来、所得税は「所得控除(配偶者控除など)」で税負担を減らしています。しかし所得控除の場合、適用税率の高い高所得者ほど減税額が大きくなり、低所得者は減税額が少なくなってしまうという不公平が生じます。 そこで、所得に関わらず同じ金額だけ税額から差し引く「税額控除」に置き換えます。その際、「税金を払っていない(課税額より控除額の方が大きい、または非課税の)人にはどうするのか?」という問題が生じますので、その差額分を現金で「給付」する、これが「給付付き税額控除」です。単なる減税ではなく、累進性を高める所得税の構造改革であり、「働けば給付が得られる」という就労意欲を高める設計にできるのが特徴です。 [05:05]

南雲: こうした控除制度は、諸外国ではどのように導入されているのでしょうか? [06:32]
森信: アメリカ、イギリス、カナダ、オランダなど多くの先進国で導入されています。
- アメリカ: 勤労税額控除(EITC)と呼ばれ、働いて収入が増えるほど給付が増え、一定額に達したあと緩やかに減っていく「台形」の形をしており、労働を奨励する目的が強いです。
- イギリス: 社会保障制度と統合し、低所得者層への生活保護的な給付も組み込んだ形をとっています。
- カナダ: 主に消費税の逆進性(低所得者ほど負担感が重くなること)を緩和するための給付として機能しています。 このように、国ごとの課題に応じて形状や目的が異なります。

<社会保障国民会議資料を一部抜粋>
社会保障国民会議の中間とりまとめ案について
南雲: 日本が今やろうとしている制度は、どの国の形に近いのでしょうか? [09:03]
森信: 先日の政府の実務者会議が出した中間取りまとめ案のイメージ図を見ると、カナダの案(台形の右半分)に近い形をしています。 地方税の非課税ライン(約119万円)を超えると給付額が増えていき、ピークに達した後は緩やかに減っていく設計です。また、税金を払っていない非課税世帯にも一定の定額給付を行う形になっています。 なお、イギリスなどでは「世帯」単位でカウントしますが、日本の案では「働く人を増やす」観点から「個人」を対象にしている点が特徴です。

<社会保障国民会議資料に点線等一部加筆・抜粋>
東京財団の具体的試算とは?
南雲: 「誰がいくらもらえるのか」「どこから給付が減っていくのか」といった具体的な数値は、まだ決まっていないのでしょうか? [12:02]
森信: はい、政府案ではまだ具体的な数値が出されておらず、世間の関心に対して不透明な状態です。 そこで東京財団では、私たちが中心となって独自の具体的な試算案を作成・公表しました。
私どもの案では、年収130万円からの給付を提案しています。なぜ130万円かというと、日本では130万円を超えると社会保険料の本人負担(約15%)が発生し、手取りが減ってしまう「130万円の壁」が存在するためです。130万円時点で約20万円の給付を行うことで、社会保険料負担による手取りの逆転現象を打ち消し、就労の阻害要因を解消します。 この制度を年収250万円程度まで段階的に減額していく設計にした場合:
- 対象者: 約1,600万人(日本人のおよそ8人に1人)
- 必要財源: 約2兆8,000億円(消費税率およそ1%分に相当) このように具体的な試算を示すことで、初めて議論が前に進むと考えています。 [14:34]

食料品の消費税減税についての期待と課題
南雲: 制度が導入される2029年度までの「2年間のつなぎ」として、来年4月から食料品の消費税率を1%に引き下げる減税策が予定されています。森信さんはこの「つなぎの消費税減税」についてどうお考えですか? [15:55]
森信: 私はこの消費税減税については、どちらかといえば否定的な立場です。理由が2つあります。
1つ目は、自民党の公約にあった「検討の加速」の答え(財源問題や農漁業者への還付手続きの手間など)が出ていないまま、減税だけが先行して決まってしまった点です。 [16:19]
2つ目は、経済効果(物価引き下げ効果)が薄い点です。過去のイギリスやドイツの例を見ても、食料品の消費税を下げても店頭価格はその分だけ下がりませんでした。流通のプロセス(生産者→卸→小売)の中で、原材料高などで利益が削られている事業者がマージンを確保しようとして価格を引き上げてしまい、減税分(8%から1%への7%分)が相殺されてしまうためです。結果として、消費者が受ける恩恵は半分や2〜3%程度にとどまってしまう可能性が高いのです。 [17:21]
南雲: 財源の確保について不安視する声もありますが、こちらはいかがでしょうか? [19:57]
森信: 財源については年末の予算編成に向けて議論されますが、今取り沙汰されている「外国為替資金特別会計(外為特会)の含み益(へそくり)」を財源に充てることには大きな問題があります。
例えば、「1,500万円の借金がある人が、別口座に500万円のへそくりを持っている」とします。この人の純借金(ネット債務)は1,000万円です。 この500万円のへそくりを表の口座に移して減税で使い切ってしまったらどうなるでしょう?純借金は1,500万円に増えてしまいますよね。 [20:56] 特別会計に溜まっている資金を一般会計に持ってきて減税に使ってしまえば、国の純債務は増え、実質的な国債発行(国の借金増)と同じになります。これは会計操作のようなものであり、根本的な解決にはならず、マーケット(市場)の理解も得られないでしょう。歳出削減やしっかりとした財源確保を行うことが不可欠です。 [22:14]
南雲: 財源確保を中心に、導入に向けた議論は本当にこれからが本番ですね。解説ありがとうございました。
森信: はい、これからが本番です。ありがとうございました。
※本記事は2026年8月26日公開の「【動画解説】2年後導入「給付付き税額控除」徹底解説」を、テキスト記事化したものです
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