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ワシントンUPDATE  「大統領選投票に向けて:国際派の苛立ち」

August 21, 2012

ポール・J・サンダース
センター・フォー・ザ・ナショナル・インタレスト常務理事
東京財団「現代アメリカ」プロジェクト・海外メンバー

米大統領選の観測筋の間では、国民が国際問題に無関心であると捉える向きもあるようである。しかしこれは誤りだろう。実際のところ、多くの米国人は世界の動向を注視しており、選挙活動において国際問題は少なくとも国内政策と同程度に重要な争点と考えている。しかし、現行の外交政策に対して多くの国民が不満を抱いているものの、ではどうすればよいのか、という点に関しては意見が分かれ、確たる答えを見いだせずにいる。選挙後、こうした不満や懐疑の声を背景に、次期大統領が米国の国際社会における目標を大幅に見直す可能性もある。

ダートマス大学のベンジャミン・ヴァレンチノ教授によるYouGov世論調査が、4月後半から5月のはじめにかけて実施された。それによれば、調査対象者の49.4%が、大統領選の投票に際して、候補者の外交政策と国内政策を同程度に重視すると述べている。そして、6.2%が、外交政策の方がやや重要である、あるいはより重要である、と答えている。国内政策の方がやや重要である、と答えたのは26.2%、はるかに重要である、と答えたのは18.3%であった。つまり、国内問題のみに注目している国民もかなりの数に上るものの、過半数を超える国民が、外交政策により大きな注目を寄せていると回答しているのだ。

注目すべきは、一部から孤立主義的との誤解を受けているティーパーティー運動が勢力を伸ばす中、民主党員より共和党員の方が国際問題重視の傾向がやや強いという点である。逆に、調査対象の共和党員の4分の3が、ティーパーティーを強く支持する、あるいはやや支持する、と回答した。共和党員が候補者の外交政策に関心を示していることを踏まえると、ティーパーティー支持者が孤立主義者であるとは全く考えられない。そして、そうした支持者の間に不満が高まっている。共和党員の5人に4人が、米国の現在の外交政策は自身が考える望ましい方針を「わずかしか反映していない」、あるいは「全く反映していない」と答えたのだ。しかし驚くべきことに、民主党員の60%、更に無党派層の80%以上が同様の回答をしている。全体として、米国人の75%が外交政策に不満の意を示しているわけだが、共和党員、民主党員、無党派層でその理由は異なる。

こうした相違は、特にアフガン戦争への見解において明らかだ。同戦争を一貫して支持してきた、と答えた民主党員が40%以上であるのに対して、無党派層はわずか26%、民主党員は10%程度である。逆に、一貫して反対してきた、と答えた民主党員47%に対して、無党派層は31%、民主党員はわずか16%に過ぎない。共和党員および無党派層の約30%は、かつてアフガン戦争を支持していたものの、現在は反対の立場に回っている(民主党員は22%)。こうした変化こそ、オバマ大統領のアフガンからの撤退を決めた一番のポイントであり、それ以前の2008年にはオバマを勝利に導いた重要な要因でもあった。

同調査では、主要同盟国や中国を含む大国との関係に関する挑発的な質問もなされた。例えば、全回答者の55.3%、共和党員の64.7%が、米国はイスラエルと正式な防衛条約を結んでいる、と信じていることが分かった(これは勿論誤りである)。逆に、NATO加盟国の中でも大国であるドイツと同様の条約を締結していると考えている回答者の割合はわずか36.6%、ルーマニアおよびラトビアというNATO加盟国の中でも新しい両国に至っては、同数値はそれぞれ7.5%、4.8%であった。日米同盟の存在を知っていたのは42.4%で、この数値を上回ったのは、リストアップされた13カ国のうち、韓国のみであった(46.7%)。

調査のなかでも最も印象的に感じられるのは、経済的懸念が、米同盟国への姿勢、ひいてはより広範な外交政策への不安感に色濃く反映しているという点である。例えば、米国と同盟を結んでいるがゆえに、日本の防衛費は本来日本政府が投じるべき額を下回っている、という項目に対して、やや同意する、あるいは強く同意する、とした回答者の割合は52.9%に達した。欧州の米同盟国に対しては、同数値は59.3%に上る。また、大部分の米同盟国は、米国からの支援に見合うだけの支援を米国に対して行なっていない、という項目に対して、やや同意する、あるいは強く同意する、とした回答者は4分の3を超え、特に共和党員の60%以上が強く同意している。米国はもはやすべての現同盟国の防衛に手を差し伸べる余裕はない、という項目に対して、やや同意する、あるいは強く同意する、とした回答者は61.6%であった。

これは、米国経済の将来や中国の急速な経済成長に対する不安が広まっていることを反映した数字と言えるのではないか。米国が世界で影響力ある存在となっている最大の要因は何か、という問いに対して、経済規模、と答えたのが45%に対して、軍事力を選択したのはわずか25.9%であった。米国が世界最大の影響力を有する国家で在り続けることが、やや重要である、あるいは非常に重要である、とした回答者は76.6%、共和党員に限っては91.2%に上る。しかし、米国民は中国の経済成長に対して大きな懸念を抱いており、調査回答者の大多数は、仮に中国経済の成長が鈍化し、今後も米国経済の規模を下回るという状態が続くのであれば、自国の低成長経済も受け入れるだろう。米中両国が共に高成長を続けることを好ましいと考え、その結果中国が米国を経済規模で上回ってもよい、としたのはわずか5人に1人の割合であった。

調査の回答からは、明らかな矛盾も見られた。米国が世界最強の軍事大国であり続けることについて、やや重要である、あるいは非常に重要である、と回答したのが73.6%(共和党員に限っては93.1%)に対して、49.9%(共和党員に限っては52.2%)が、軍事力トップの座を確保するためにこれ以上高い税金を払うつもりはない、と答えている。同様に、大多数が戦争のための税引き上げに反対している。にもかかわらず、米-アジア貿易保護のためアジア太平洋地域における現行の米軍事力を維持すべき、という項目には、64%がやや同意する、あるいは強く同意する、と答えている。

YouGov世論調査は、米国民の姿勢と懸念材料を明らかにしてくれるという点で興味深いが、それに加えて、米国民が何に対して「分からない」と忌憚なく認めているかを知るうえでも同様に興味深いものがある。回答者の20%以上が、特に様々な選択肢について判断が求められる問いに対して、明確な回答を避け「分からない」と繰り返し答えている。例えば、台湾が独立を宣言し、その結果中国から攻撃を受けた場合、台湾を守るために軍事力を行使することを支持するか、という問いに対して、約40%が分からない、と答えている。同様に、同意するか否かを選ぶ問いに対しても、回答者の30~40%が頻繁に「どちらでもない」と答えていた。これは、複雑難解な選択を迫られた時の「分からない」と同義である。また、大半の問いに対して、多数が、やや同意する、と答えていた。つまり、自身の意見はあるが、それを変えることもやぶさかではないということだ。

こうした曖昧な状態は、2つの帰結をもたらすだろう。ひとつは、米国人の一部に不安感がより強まっていくというものである。将来への明確な道筋が見えないままに、重大な問題に直面しなければならないという状況下では、特に不安が高まる。さらにこれは周囲に対する不満を増長させることにもつながる―例えば、米国への見返りが足りないと思われる同盟国や、解決策を打ち立てるどころか政敵との争いに多くの時間と労力を費やしている米国指導者層への不満が高まることになるだろう。

もうひとつは、11月大統領選後に非常に重要な意味を持つ可能性がある―つまり、明確かつ楽観的なビジョンを有し、はっきりした物言いで説得力ある大統領が、世論の変化を促し、真の意味でこの国を引っ張るのではないかというものである。これは、意見の相違を均すということではない。実際、多くの米国人はそれぞれ確固たる意見を有している。しかし、上記のようなリーダーであれば、重要な外交(および内政)問題に対処する持続可能かつ効果的な政治的協調体制を構築できるだろう。多くの米国人は、2008年、そうした資質を備えたリーダーを選んだと思っていた。しかし、今回の調査では、大多数が米国の外交政策に失望感を示している。2012年大統領選で誰が勝利しようと、新大統領は、米国の国際的リーダーシップを見つめ直す義務とチャンスの両方を手にすることになる。

■オリジナル原稿(英文)はこちら

    • Senior Fellow in US Foreign Policy at the Center for the National Interest President, Energy Innovation Reform Project
    • ポール・J・ サンダース
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