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【アメリカ大統領選 論調Update第2回】バイデン候補の副大統領候補選びに影を落とす人種問題
写真提供 Getty Images

【アメリカ大統領選 論調Update第2回】バイデン候補の副大統領候補選びに影を落とす人種問題

June 10, 2020

世界が注目する2020年11月のアメリカ大統領選挙。アメリカ国内では今、何が論点となり、どのように論じられているのでしょうか。主要メディアによる記事や、シンクタンク報告書、学術論文の要点など、アメリカ国内の最新論調をわかりやすくまとめ、シリーズで紹介します。



本年48日にサンダース上院議員が指名争いから撤退したことによって事実上の民主党候補となったジョー・バイデン前大統領は、315日に行われた第11回の民主党候補者討論会において女性を副大統領候補に指名すると表明し、注目を集めていた。5月上旬には有力候補として民主党の左派を代表するウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)、予備選でバイデン氏と中道票を争ったクロブチャー上院議員(ミネソタ州選出)、討論会でのバイデン氏への批判が注目され一時は支持率で第2位に浮上したハリス上院議員(カリフォルニア州選出)、2018年の中間選挙で注目を集めたエイブラムス前ジョージア州下院院内総務、クロブチャー議員と同じ中西部に地盤を持つミシガン州のホイットマー知事、ヒスパニック系女性として初めて上院議員となったコルテス・マスト上院議員(ネヴァダ州選出)などの名前が挙がった

CBSニュースの調査によると、バイデン氏が誰を副大統領候補として選ぶべきかという質問に対し、10%を超える回答を得たのはウォーレン議員、ハリス議員、エイブラムス氏、クロブチャー議員の4人で、党内融和の観点からとくに強い支持を得たのはウォーレン議員(39%)であった。ハリス議員とエイブラムス氏は黒人有権者への、クロブチャー議員は中西部の有権者へのアピールという強みをもっている。大統領候補と副大統領候補の信頼関係、高齢のバイデン氏に代わって大統領職を遂行する可能性から重視される(ある程度の)若さや実務能力などの観点で評価が高かったのは、上院での豊富な経験を有し、またスーパー・チューズデーの直前に予備選から撤退してバイデン氏への支持を表明した後も連絡を取り合っていたと伝えられるクロブチャー上院議員であるとされていた。

しかし、事態は一変してしまった。525日にクロブチャー議員の地元であるミネソタ州のミネアポリスで、黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人警官に頸部を8分以上にわたって膝で押さえつけられて死亡するという事件が生じ、この事件への抗議活動は全米に拡大し、一部で暴徒化して混乱を引き起こした。ここで問題になったのはクロブチャー議員が2006年の上院選に当選する前のキャリアであった。ミネソタ州へネピン郡の郡検察官を務めていた1998年から2006年までの間、フロイド氏の死に直接関わった警官を含む20名以上の警官の問題行為について訴追を拒否したのではないかとの批判を受け、クロブチャー議員厳しい立場に追い込まれた。

また、これに先立って、史上初の黒人大統領であったオバマ大統領の副大統領として黒人有権者からの根強い人気を誇るバイデン候補は「(自分とトランプ氏の)どちらに投票するか迷っているようでは黒人ではない」という失言をし、「黒人からの支持を自明と思ったことはない」と釈明に追われる一幕もあった。

これらの事態を受けて、黒人からの支持を固めたいバイデン氏が黒人女性を副大統領候補に指名するのではないかという観測が強まっており、最有力候補のハリス上院議員のほか、エイブラムス氏、接戦州フロリダ州選出のヴァルデミングス下院議員、ジョージア州アトランタ市のボトムズ市長、ライス元国連大使などの名前が浮上している。中でもフロリダ州オーランドの警察署長を務めたこともあるヴァルデミングス下院議員は黒人と警察官の両方の立場を知る人物として注目を集めている

フロイド氏の死によって再び顕在化したアメリカの根深い人種問題は、大統領選挙、とくに黒人有権者の多くが支持する民主党の動きに大きな影響を与えていると言えるだろう。


◇参照記事◇

    • 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
    • 宇野 正祥
    • 宇野 正祥

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