【アメリカ大統領選 DATANK】選挙戦終盤・注目の激戦州(1)

世界が注目する2020年11月のアメリカ大統領選挙。予断を許さない選挙戦の行方について、データからは何を読み取ることができるでしょうか。ここでは候補者支持率などをはじめ、大統領選を読み解く上で鍵となるデータをわかりやすくまとめ、定期的にアップデートしていきます。

選挙戦が進むにつれ、当初から注目されてきた接戦6州(ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンノースカロライナ、フロリダ、アリゾナ)以外にも、いくつかの州が激戦州として浮上してきている。これらの州の動向次第では、トランプ大統領の余裕をもった再選からバイデン候補の大勝までさまざまな可能性が考えられる。

今回検討するのは、16年大統領選挙でトランプ大統領が勝利したアイオワ、オハイオ、ジョージアの3つの州とネブラスカ州下院第2選挙区(以下NE-2区と略記)[1]である。バイデン氏が民主党の指名を確実にした今年春の時点では、これら3つの州におけるトランプ大統領の勝利とNE-2区での接戦が予想されていた。現在、政治情報サイト「270toWin」では3つの州はToss Up(拮抗)、 NE-2区はバイデン氏のLean(若干優勢)状態と表示されている[2]

16年選挙でトランプ氏が50%以上得票し、クリントン氏に9.5%の差をつけて勝利したアイオワ州では[3]1017日現在、政治情報サイトReal Clear politics (RCP)のまとめによるとバイデン氏の支持率が1.2%上回っており、秋に入ってからトランプ大統領をわずかに逆転した形だ[4]。人口のほとんどを白人が占めるアイオワ州では、両候補の支持率におけるジェンダーギャップが激しくなっている。地元紙デモイン・レジスターの調査では、男性のトランプ氏支持率がバイデン氏の支持率を21%上回っているのに対し、女性からの支持率では逆にバイデン氏がトランプ氏に20%の差をつけている[5]2018年中間選挙においても指摘された、郊外に住むイデオロギー的には穏健保守~中道の白人女性の「トランプ離れ」がアイオワでも明瞭に見て取れる。

オハイオ州は重要なスウィング・ステートとして知られ、1964年以降半世紀以上にわたってオハイオ州を獲得した候補者は必ず大統領の座を手にしている[6]16年大統領選挙ではトランプ氏が90年代以降では最大となる8.1%の差をつけて勝利し[7]、製造業の停滞と雇用の流出に苦しむ中西部の白人労働者層からの支持の強さを見せつけた。これに対してバイデン陣営は経済政策の中で国内製造業の復興・強化をうたい[8]、いわゆるラスト・ベルト地域の奪還を期している。9月以降の主要な世論調査では、両候補の支持率はほぼ互角となっており、RCPによる平均値[9]ではトランプ大統領がわずかに上回っている[10]

ジョージア州は、南部アーカンソー州出身のビル・クリントン大統領を支持した92年を最後に共和党候補が獲得し続けており、16年選挙ではトランプ氏がヒラリー・クリントン氏に5.1%の差をつけて勝利した。白人が多く住む郊外・非都市地域は共和党が、都市中心部や黒人の多く住む地域は民主党が強いという典型的な南部の政党支持パターンが見られる。アトランタなど都市部の人口増加によって民主党と共和党の勢力は拮抗しつつあり、16年のトランプ氏は12年のロムニー氏より得票率を2.5%減らしている。2018年の知事選挙では州議会議員であったステイシー・エイブラムス氏が共和党候補であったブライアン・ケンプ氏に1.4%差まで迫り、バイデン氏の副大統領候補として検討されるなど民主党の新星として注目を集めた[11]。世論調査では10月に入ってからバイデン氏が支持を伸ばし、RCPの平均値でトランプ氏を逆転して1.2%リードしている[12]

ネブラスカ州最大の都市であるオマハ市の中心部を含むダグラス郡と南隣のサーピー郡の西部からなるNE-2区は、12年および14年の下院選ではそれぞれ現職の議員が落選するなど民主・共和両党の勢力が拮抗している。大統領選では08年にオバマ氏が2.1%差で獲得(州全体ではマケイン氏が勝利)したが、12年にはロムニー氏が7.1%差で、16年にはトランプ氏が2.2%差で獲得している[13]RCPには9月末のニューヨーク・タイムズ紙による調査のみが掲載されている[14]が、その他の世論調査でもバイデン氏が一貫してトランプ大統領をリードしている[15]

バイデン氏が接戦6州に加えこれらの州・地区をすべて獲得した場合、2008年のオバマ大統領(獲得選挙人365人)を上回る大勝を収めることになる[16]。トランプ大統領はアイオワ州で集会を開催[17]してテコ入れを図るなど対応に追われている。


[1] ネブラスカ州では州全体における勝者に2人、各下院選挙区における勝者に1人ずつ、計5人の選挙人が割り当てられる。

[2] https://www.270towin.com/

[3] https://www.realclearpolitics.com/epolls/2016/president/ia/iowa_trump_vs_clinton_vs_johnson_vs_stein-5981.html

[4] https://www.realclearpolitics.com/epolls/2020/president/ia/iowa_trump_vs_biden-6787.html

[5] https://www.desmoinesregister.com/story/news/politics/2020/10/14/trump-rally-des-moines-iowa-poll-tied-biden/5973945002/

[6] https://www.270towin.com/states/Ohio

[7] https://www.realclearpolitics.com/epolls/2016/president/oh/ohio_trump_vs_clinton_vs_johnson_vs_stein-5970.html

[8] https://joebiden.com/made-in-america/

[9] Real Clear Politicsでは、直近の約半月間に発表された主要な世論調査の平均値を“RCP Average”として掲載している。

[10] https://www.realclearpolitics.com/epolls/2020/president/oh/ohio_trump_vs_biden-6765.html

[11] https://www.politico.com/election-results/2018/georgia/

[12] https://www.realclearpolitics.com/epolls/2020/president/ga/georgia_trump_vs_biden-6974.html

[13] https://www.realclearpolitics.com/epolls/2016/president/necd2/nebraska_cd2_trump_vs_clinton-5906.html

[14] https://www.realclearpolitics.com/epolls/2020/president/necd2/nebraska_cd2_trump_vs_biden_vs_jorgensen-7278.html

[15] https://projects.fivethirtyeight.com/polls/president-general/nebraska/2/

[16] https://www.270towin.com/maps/EBPPo

[17] https://www.desmoinesregister.com/story/news/2020/10/10/trump-plans-wednesday-rally-des-moines-international-airport/5953954002/

宇野 正祥

  • 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程