タイプ
その他
プロジェクト
日付
2018/2/28

土地相続登記 改善が急務

研究員

吉原祥子

登記が3代放置された結果、一筆の土地の法定相続人は150人に(出典 東京財団「国土の不明化・死蔵化の危機」2014年)

 

 所有者不明の土地を巡る問題が新たな局面を迎えている。政府はこの夏にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に、問題解決に向け、どのような施策を講じるのかの方向性を盛り込む方針だ。

 そもそも、所有者不明の土地とは何か。相続登記が行われていないなどの理由で、不動産登記簿などを見ても、所有者の所在が直ちに判明しない土地のことだ。国土交通省の調査では、地方を中心にこうした土地は2割を占める。震災などが起きた時に、土地の所有者が不明だと復興が遅れてしまう。また、所有者をたどるための行政コストが壁となり、空き家対策などに支障が出かねない。

 相続登記を行わない人が多いのは、登記が任意、つまり相続人の判断に委ねられているからだ。このため、いかに相続登記を促進するのかが喫緊の課題の一つとなっている。

 登記をしない場合の罰則を設け、義務化するという案もある。ただし、その必要性について国民の十分な理解を得ないと、実効性に欠ける恐れもある。所有者の権利を保全するという不動産登記制度の趣旨を踏まえた丁寧な議論が必要だ。

 まずは、土地を所有する意味あいについて、私たち一人ひとりが問い直す必要がある。土地とは暮らしの土台であり、農林業などの生産基盤であり、代替性のない国土である。所有者は土地が荒れないように物理的に管理し、権利を保全し、次の世代に継承する責務を負う。回り道かもしれないが、所有者の責務として、人々が登記の必要性を理解していくことが大切だ。

 登記手続きの簡便化も欠かせない。数代にわたり相続未登記が続き一部の相続人が不明だったりすると、手続きが煩雑になり、あきらめる人も出るからだ。

 土地に関する情報基盤の見直しも必要だ。土地の所有・利用については、不動産登記簿のほか、固定資産課税台帳、農地台帳などが目的別に作成されている。だが、内容や精度にバラツキがある上、台帳同士の情報連携も一部に限られる。効率的に整備・共有していくために、各台帳に掲載する氏名、住所、生年月日、性別などの基本情報を標準化し、データの互換性を確保することが急務だ。

 土地の「受け皿」作りも重要だ。経済が右肩上がりで、新規の土地需要が見込める時代と異なり、今後は人口減少も加速するため、利用見込みのない土地は増えるだろう。こうした土地の管理や相続登記が放置されることを防がなければならないが、個人や市場に任せるだけでは解決は難しい。地域の民間NPOが受け皿となり、所有者が処分に悩む土地を一時的にプールし、自治体や国が法的、財政的に支援するといった仕組みが必要だ。

 私たちが直面しているのは、社会の変化と現行制度の狭間で徐々に広がってきた構造的な問題であり、解決への万能薬はない。不明となる要因を丁寧に分析し、これまでの制度をいかしながら、地道に解決策を模索すべきだ。(聞き手・編集委員 阿部文彦)

 

2018年2月22日『読売新聞』「論点」より転載