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アメリカ大統領選挙UPDATE 2:政治資金をめぐる状況 (西川賢)

December 12, 2011

2008年の大統領選挙において、バラク・オバマ候補が公的資金による補助を一切辞退しつつも7億7800万ドル以上という記録的な額の政治資金を集めたことは未だ記憶に新しい。
2008年選挙では史上初めて二大政党の大統領候補が集めた政治資金の総額が計10億ドルを突破したが、2012年の大統領選挙ではこれを上回る政治資金が集金・支出される可能性が高いといわれる。現在までの主要候補の政治献金内訳は以下の通りである *1


支持率低下に悩まされているオバマ大統領であるが、政治資金に関しては他の候補に対して圧倒的優位に立っているといってもよい状況にあることが上記の表から窺われる。オバマ大統領は2011年度第二四半期に約4800万ドルを集め、ブッシュ前大統領の四半期で5000万ドル超を集めるという記録に肉薄してみせた。2011年度第三四半期に至ってオバマ大統領の資金の伸びはやや鈍くなったものの、それでも4000万ドルを超える資金を集めることに成功している。現役の大統領が再選を目指す場合、最初の選挙の時よりも再選を目指す時の方がより多くの政治資金が集まるという法則がある *2 。仮にこれが2012年のオバマにも当てはまるとすると、デイヴィッド・アクセルロッドが語ったように10億ドル以上の政治資金を集める可能性もあながち誇大妄想とは言い切れないであろう。

さらに、オバマ陣営に関しては政治献金の総額に加えて、特に際立つのが、献金額が200ドル以下の所謂「小口献金」の多さである。前嶋和弘氏が指摘しているように、2008年の大統領選挙においてオバマ大統領は小口献金額で他の候補を大きく凌いでいた。2011年11月現在、オバマ大統領に対する小口献金が既に56万ドル以上に達しているとの報道がなされており、これは2008年をも上回るペースともいわれている。また、数多くの小口献金を纏める役割を果たす「バンドラー」は2012年12月現在、オープン・シークレッツが明らかにしているだけでも357名にのぼる。小額の献金者は大口献金者よりも候補者に積極的に投票し、ボランティアなどにも積極的にコミットする傾向が強いとされる *3 。前回の選挙同様、今回の選挙においてもオバマに対する小口献金が依然として高い水準にあるということは、グラスルーツ・レベルでのオバマ支持が低落してなお、強靭であることを窺わせるものであろう。

次に、共和党候補を個別にみていくと、まず2011年11月現在、支持率を伸ばし始めたギングリッチであるが、政治資金に関してはこれまで280万ドル程しか集められておらず、今後深刻な資金不足に陥る可能性が懸念される。

これに対して、8月に一足遅れて立候補を表明したペリーは第三四半期だけで1700万ドルあまりを集め、政治資金の面では第三四半期の共和党候補中では最も多くの額を集めることに成功している。ただし、ペリーに関しては大口献金への依存が目立って大きいことや、第三四半期に集めた約1700万ドルのうち約60%が地元テキサス州からの献金であり、地域に偏りなく献金を集めることに成功しているロムニーやポールに比して不利な状況にあるとする声も聞かれる。

一方、2011年5月にロムニーは一日で1000万ドル以上も政治献金を集めるなど、第二四半期に総額1800万ドルの政治献金を集め、他の共和党候補を圧倒していた。しかし、ペリー同様、小口献金の額が少なく大口の献金者に大きく依存している点などはマイナス材料であろう。他の共和党候補に比べれば相対的に安定しているとはいえ、横ばい状態の支持率同様、政治資金の面でもロムニーは今ひとつ伸び悩んでいる状況にあるといえる。

他方で第二四半期までに400万ドルしか集められなかったロン・ポールは第三四半期で小口献金を大幅に伸ばすことで800万ドルを集めることに成功し、政治資金面では健闘しているといえよう。ポール陣営によればポールに寄付した献金者は延べ10万人以上に上り、これはペリーの5倍にも相当する数であるという。しかし、依然として支持率の面ではポールは低空飛行を続けている状況である。


*1 :2011年11月24日アクセス。
*2 :Larry J. Sabato (ed.) Pendulum Swing (Longman, 2011), p.149.
*3 :吉野孝・前嶋和弘編『2008年アメリカ大統領選挙:オバマの当選は何を意味するか』(東信堂、2009年)、40-42頁。

    • 津田塾大学学芸学部教授
    • 西川 賢
    • 西川 賢

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