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【論考】在留資格「技人国」による雇用実態はなぜ見えにくいのか―統計と現場のあいだ
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【論考】在留資格「技人国」による雇用実態はなぜ見えにくいのか―統計と現場のあいだ

June 26, 2026

1. はじめに

在留資格「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる「技人国」は、留学生や海外人材にとって、日本の労働市場へ参入する主要な回路となっている[1]。本稿で問いたいのは、その次の段階である。「技人国」を取得して労働市場に参入した人々は、実際にどのような産業や雇用の現場に接続しているのだろうか。一見、単純な問いに見えるが、答えるのは難しい。在留外国人に関する統計において「技人国」は専門的・技術的分野の在留資格として把握されているものの、「技人国」による外国人労働者がどのような雇用形態で、どのような職務を担い、どのような経路を通じて職場に結びついているのかは、公的統計からは十分に見えてこないからである。

2. 「技人国」は特定産業に紐づく資格ではない

「技人国」とその就労実態の見えにくさの出発点は、制度の設計そのものにある。「技能実習」や「特定技能」は、対象となる分野や業務が制度上ある程度明示されている。これに対して「技人国」は、特定の産業に対応した在留資格ではない。学歴・専攻と職務内容との関連性、雇用契約、報酬水準などをもとに認められる資格であり、情報通信、製造、卸売・小売、宿泊、飲食サービス、その他サービス業まで、さまざまな産業に接続しうる。

図1:在留資格「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」との違い

出所)出入国在留管理庁HP 在留資格「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」の違いについて
   https://www.moj.go.jp/isa/content/001452975.pdf

1が示すように、「特定技能」と「技人国」の違いは、対象業種の違いだけではない。「特定技能」は、人手不足が深刻な特定産業分野に紐づき、分野ごとに想定される活動内容が比較的具体的に整理されている。これに対して「技人国」は、特定の産業分野ではなく、自然科学・人文科学の分野に属する技術・知識、または外国文化に基づく思考・感受性を必要とする業務に紐づく在留資格である。

そのため、「技人国」で認められうる活動は、産業名ではなく、学歴・専攻と職務内容の関連性、雇用契約、報酬水準などとの関係で判断される。結果として、同じ製造業、宿泊業、外食業のなかでも、「特定技能」で想定される活動と「技人国」で認められうる活動が隣接し、実務上の区分が曖昧になる領域が生じる。したがって、「技人国」の実態を把握するには、産業分類だけでなく、その内部で担われている職務内容を見る必要がある。同じ製造業やサービス業のなかにも、設計・開発、生産管理、通訳・翻訳、顧客対応、店舗管理など、専門的職務から現場に近い職務まで幅広い仕事が含まれるからである。 

3. 統計から浮かび上がる「技人国」の輪郭

厚生労働省「外国人雇用状況」の届出によれば、202510月末の外国人労働者は257万人を超え、過去最多を更新した[2]。産業別では製造業が最も多く、全体の約4分の1を占める。都道府県別では、東京都に次いで、製造業の集積する愛知県が2位に続く。在留資格別に見ると、2024年には「専門的・技術的分野の在留資格」が、届出義務化以降はじめて最も多い区分となり、86万人を超えた。「技人国」はこの区分の中で中核をなしている。東海地方の労働局が発表した資料からも、外国人労働者が製造業の集積地域に多く、専門的・技術的分野の在留資格が近年大きく増えていることが読み取れる[3]

日本の外国人就労に関する主要な公的統計は二つある。一つは出入国在留管理庁の在留外国人統計で、国籍・地域・在留資格・年齢・性別・都道府県・市町村別の在留外国人をとりまとめている。これによれば、「技人国」の在留者は20256月末で458千人を超え、「技能実習」や「特定技能」を上回り、就労を目的とする在留資格のなかで最大の集団となっている[4]。もう一つが、前述した外国人雇用状況の届出で、こちらは雇用主に義務付けられた外国人労働者に関する届け出により、国籍・在留資格・都道府県別の外国人労働者数、外国人を雇用する事業所の状況などについてとりまとめている。ただし注意したいのは、両統計の「専門的・技術的分野の在留資格」という区分には、「技人国」だけでなく、「高度専門職」や「特定技能」、「介護」なども含まれている点である。この区分の数字を、そのまま「技人国」の数字と読み替えることはできない。

統計からはこうした産業別・地域別の在留外国人数などの大まかな輪郭が浮かび上がってくる。しかし、輪郭は見えども詳細は見えにくい。

4. 統計から見えにくいもの職務・雇用形態・仲介経路

第一に見えにくいのは、職務内容である。製造業で働く外国人労働者の数は統計から把握できるが、設計、生産管理、通訳、現場管理、営業補助などの内訳は、産業分類だけからはわからない。製造業従事者の専門性が低いとはいえず、逆に、専門的・技術的分野の在留資格を取得しているとしても高度な専門職に従事しているとはいえない。しかも、在留資格の申請時に仲介業者や内定先企業から説明された職務と、入職後に実際に担う職務とが、時間の経過とともにずれていくこともある。例えば、設計や通訳として在留を認められた人が、現場の補助的な業務も一時的に担い、いつの間にか補助業務に比重が移ったとしてもこうした職務の変化は、統計の産業分類にも在留資格名にも現れない。

第二に見えにくいのは、雇用形態である。「技人国」の在留資格取得者数を統計から調べることはできるが、彼らが直接雇用なのか、派遣・請負を介して働いているのかは判別できない。近年、外国人雇用の現場では、製造業の集積地域を中心に、派遣・請負を含む間接的な雇用形態で働く外国人が増えている。派遣や請負そのものが直ちに問題だとはいえず、「技人国」の増加が派遣・請負の増加を直接引き起こした、と単純にいえるわけでもない。重要なのは、専門的・技術的分野の在留資格である「技人国」が、必ずしも「直接雇用された高度専門職」だけを意味しているとは限らない、という可能性である。在留資格の上では専門職、働き方の上では間接雇用の現場労働、という二重性が生じうる。来日して間もない「技人国」の人材が、派遣会社から仕事を割り当てられないまま自宅待機を強いられ、エスニックネットワークを頼って自分で職を探している、という事例もこの二重性の一断面である。

第三に見えにくいのは、仲介経路である。「技人国」で働く外国人は、どのような経路で日本企業に結びついたのか。大学や専門学校の就職支援か、海外の紹介会社か、国内の人材紹介会社か、あるいは行政書士や派遣会社を含む複数の仲介者を経由したのか。仲介経路は、雇用の安定性、職務内容の理解、来日前後の就業先のミスマッチに深く関わるが、統計上はほとんど把握されていない。教育機関から紹介会社、行政書士、派遣会社、受入企業へと責任が分節化し、その結果、来日前の説明と実際の職務内容の不一致、派遣先が未定のまま入国後待機させられる、契約条件をめぐるトラブル、突然の解雇、在留資格を更新しないとの通告を受けた後、職務経験や日本語能力、専門性が蓄積されていない状態で、当事者本人が自力で次の就労先を探さなければならないといったさまざまなリスクが生じる。こうした責任の分節化とリスクの個人化も、まさにこの「経路の不透明さ」と表裏一体である[5] 

こうした統計だけでは確認できない事実を把握するには、在留資格・産業・職務内容・雇用形態・仲介経路を組み合わせて見る必要がある。在留外国人統計は在留資格別の人数を、外国人雇用状況は産業別の分布を示すが、いずれの統計も、詳細な内訳を示していない。既存の統計は「何人いるか」「どの産業にいるか」といった概要は示しても、「どのように職場に接続したのか」といった詳細は示さないのである。

5. 東海地方における「製造業×技人国」-産業分類だけでは見えない働き方

こうした見えにくさが、比較的はっきりと表れる地域の一つが東海地方である。愛知県・静岡県・岐阜県・三重県を中心とする東海地方は、自動車産業を軸に製造業が集積してきた地域であり、外国人労働者の受け入れも製造業を中心に展開してきた。東海地方は、日本の外国人雇用の全国的傾向が、製造業集積という地域特性のもとで先鋭的に現れる地域だといえる。

ここで注目したいのは、製造業に接続している外国人労働者は、「技能実習」や「特定技能」の人々だけではないという点である。愛知県では、「専門的・技術的分野の在留資格」で働く外国人のうち、約37%が製造業に従事している。この数字は「技人国」単独の数値ではなく、「高度専門職」や「介護」などの資格取得者を含むため、慎重に解釈する必要がある。とはいえ、「専門的・技術的分野の在留資格」が、情報通信業や専門サービス業だけでなく、製造業にも相当程度接続していることを示す材料にはなる。

もちろん、自動車産業や機械産業には、設計、開発、生産技術、品質管理、海外取引、通訳・翻訳、外国人従業員の管理など、「技人国」に該当しうる職務が数多く存在する。製造業という産業分類のなかには、研究開発に従事する高度な技術者もいれば、生産管理や現場管理、通訳、営業補助など、専門職と現場労働のあいだに位置する職務を担う人々も含まれる。そのため、東海地方の状況から見えてくるのは、「製造業で働く技人国=低専門化」といった単純な図式ではない。むしろ重要なのは、産業分類だけでは職務の内実が見えないという点である。統計上は同じ製造業に分類されていても、その内訳として設計・開発を担っているのか、生産管理を担っているのか、通訳・翻訳を担っているのか、現場管理を担っているのかは判別できない。製造業との接続が見えたことにより、職務内容の見えにくさが浮かび上がるのである。

さらに、東海地方では、派遣・請負を含む間接的な雇用形態の存在も無視できない。厚生労働省「外国人雇用状況」の届出によれば、労働者派遣・請負事業を行っている事業所に就労する外国人労働者の比率は、全国平均では16.7%であるのに対し、愛知県26.1%、静岡県35.1%、岐阜県22.0%、三重県27.5%と、東海4県はいずれも全国平均を上回っている。

図2:外国人労働者に占める派遣。請負事業者就労者の比率-東海4県と全国平均


これは、製造業が集積する地域において、受注量の変動に応じた人員調整の一部を、派遣・請負を含む間接的な雇用形態が担っている可能性を示している。ただし、派遣・請負そのものが直ちに問題なのではない。また、「技人国」の増加が派遣・請負の増加を直接引き起こしたと単純にいうこともできない。重要なのは、在留資格名だけを見ても、その人が直接雇用なのか、派遣・請負を介しているのかが見えにくいという点である。「専門的・技術的分野」の在留資格で働いているという事実は、必ずしも、直接雇用された高度専門職として安定的に働いていることを意味しない。

2024年末以降、愛知県で表面化した外国人労働者への大規模な賃金未払い事件は、この見えにくさを考えるうえで示唆的である[6]。この事件では、対象となったベトナム人労働者らは「技人国」の在留資格で来日し、就労していた。労働者は派遣会社を通じて複数の企業に配置されており、対象者は約150人、派遣先企業は約30社、未払い額は約1,668万円にのぼった[7]。ここで重要なのは、専門職として入国・在留した人々であっても、派遣会社や受入先との関係のなかで不安定な立場に置かれ、仕事の内容や賃金、相談先をめぐる困難を抱えることがあるという点である。こうした困難は、在留資格名や産業分類だけからは見えにくい。

報道された事件は、全体像の一部にすぎない。人数や未払い額が大きい場合には社会問題として可視化されるが、説明と異なる業務、不安定な雇用、相談先の乏しさ、派遣先・雇用主・仲介者のあいだで責任の所在が曖昧になるといった状況は、統計にも事件記録にも現れにくい。東海地方の製造業集積地域は、「技人国」がどのような労働市場に接続しているのかを考えるうえで重要な手がかりを与えてくれる。しかし同時に、そこに見えるのは、統計で把握できる輪郭と、現場で起きている問題とのあいだにある大きな距離でもある。

「技人国」は、求職ルート、移動経路、就労実態、従事する職務、雇用形態のいずれについても、制度上は見えにくい構造となっている。そのなかで東海地方は、製造業の集積と派遣・請負を含む間接雇用の広がりによって、「技人国」の雇用実態が比較的見えやすい地域である。全国的には把握しにくい「技人国」の経路や働き方が、東海地方では、製造業における派遣・請負という間接雇用の形をとって現れやすいからである。 


[1] 【論考】急増する「技人国」での就労誰が、どのような経路で日本に来ているのか
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4977

[2] 厚生労働省HP「外国人雇用状況」届出状況まとめ
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68794.html

[3] 愛知労働局HP 令和710月末時点における 愛知県の「外国人雇用状況」の届出状況について
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/603093.pdf

静岡労働局HP 静岡県の「外国人雇用状況」の届出状況まとめ (令和7年10月末現在)
https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/content/contents/002549594.pdf

岐阜労働局HP 「外国人雇用状況」(令和710月末現在)
https://jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/content/contents/002545052.pdf

三重労働局HP 「外国人雇用状況」(令和710月末現在)
https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/content/contents/002558313.pdf

[4] 出入国在留管理庁HP「在留外国人統計」
https://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_touroku.html

[5] 東京財団Review「人口減少社会における外国人受け入れの条件―「技人国」が問う「選抜なき定住化」
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4992

[6] 愛知労働局HP「労働基準法違反容疑で逮捕・送検-派遣労働者に対する賃金不払の疑い-」
https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/content/contents/002373471.pdf

[7] 千葉日報 20241222日付記事「ベトナム人に給与未払いか、愛知 数千万円以上、大使館が調査要請」
https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20241222/1318769

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