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【政策研究部】「給付付き税額控除」と「国家資源戦略」の政策提言のその後―提案から実装への発展―
April 23, 2026
1.はじめに―いかに「知を形にし、未来を切り拓く」のか?―
当財団は名実ともに「世界に通じる本格的な独立系政策シンクタンク」として発展することを目指し、「知を形にし、未来を切り拓く」を合言葉に役職員一同、調査研究や人材育成に日々取り組んでいる。その中でも、最近発表した政策提言の発表後に見られたいくつかの動きは、当財団の望むべき方向性を示す良い例ではないかと感じている。そこで、本稿ではそれらの動きを簡単にご紹介し、今後の当財団に求められる取り組みを考えてみたい。
2.政策提言「『給付付き税額控除』の導入に向けた具体的な制度設計」の発表(2026年4月10日)
2026年4月に発表した政策提言「『給付付き税額控除』の導入に向けた具体的な制度設計」では、米国では低所得の勤労者への就労支援を税額控除と還付(給付)の組み合わせで行っており、就労インセンティブの向上と格差是正の両面で実績を上げていることなどを踏まえ、就職氷河期世代の非正規雇用者など、雇用保険(第1のセーフティネット)と生活保護(第3のセーフティネット)の間に位置する「第2のセーフティネット」の不在により、既存の制度からこぼれ落ちる中低所得勤労者への支援が長年の課題となっている現状を改善すべく、就労支援と所得再分配の両立を図る「給付付き税額控除」を日本に即した形で実現するための、2段階の具体的制度設計を示した。
この政策提言の発表後、『朝日新聞』などの主要メディアが一斉にその内容を紹介するなど、これまで深刻な課題として捉えられながらも、抜本的な対策が十分に講じられてこなかった中低所得勤労者をめぐる課題を解決する一手として、大きく注目を集めることとなった。
3.政策提言「13兆円の宝の山―積極活用への提言」の手交(2026年3月31日)
2026年3月に赤澤亮正・経済産業大臣に手交した政策提言「13兆円の宝の山―積極活用への提言」では、国富の流出を防ぎ「強い経済」につながる新たな成長基盤づくりを目指し、レアアースの需給不安定化による「第2のレアアース危機」や鉱物資源の輸入依存による国富の流出といった鉱物資源リスクを見据え、国内に蓄積された廃棄物(都市鉱山)を「宝の山」の国産資源として活用する循環経済(サーキュラーエコノミー)を起点とした「国産資源戦略」を提案した。また、鉱物資源関係だけでなく化石燃料の輸入も含めた資源の海外依存による国富の流出は莫大な額にのぼることから、あらゆる国産資源を物理的、経済的に循環活用する“日本流”サーキュラーエコノミーによる資源・エネルギー循環型社会を構築する必要性を示した政策提言「38兆円の宝の山―積極活用への提言」も併せて手交した。
この政策提言の手交後、政府は2026年4月21日に開催された第4回循環経済に関する関係閣僚会議において、「循環経済行動計画」を決定し、2030年までに技術開発や施設整備などに官民で約1兆円を投じる方針を固めたが、政策提言で提案した「再資源化拠点等の構築」や「廃棄物や未利用資源などの国内資源を活用した地域脱炭素の推進」、「循環経済を国民運動に」などといった取り組みが多数登載されている。
4.おわりに―「政策の窓」をこじ開けるために―
以上、当財団の最近の取り組みをご紹介した。公共政策分野における理論モデルの1つに「政策の窓」モデルというものがある。詳しくは、提唱したキングダン(John W. Kingdon)の研究(Kingdon 1984)などをお読みいただきたいが、一言で言うと、ある政策が採用されるためには、「社会におけるある問題」、「その問題に対処するための政策」、そして、「その政策を受け入れるための政治(状況)」が揃うと政策を受け入れるための状態が形成される、即ち「政策の窓が開く」という考え方である。
当財団はこれまで優れた調査研究を進めるとともに、その成果に基づく政策提言を多く発表してきた。しかし、政策を実現するためには、政治家や省庁関係者をはじめとした政策起業家(policy entrepreneur)が理解することが重要だ。このような問題意識を踏まえ、当財団では本稿でご紹介した取り組みをはじめとして、今後もさまざまな形で政策提言を政策起業家に届け、「政策の窓をこじ開ける」べくさまざまなアプローチを進めていく所存である。今後の当財団の活動にぜひご期待いただきたい。