【論考】急増する「技人国」での就労―誰が、どのような経路で日本に来ているのか | 研究プログラム | 東京財団

東京財団

詳細検索

東京財団

【論考】急増する「技人国」での就労―誰が、どのような経路で日本に来ているのか
画像提供:Getty Images
  • Review

【論考】急増する「技人国」での就労―誰が、どのような経路で日本に来ているのか

June 4, 2026

1. はじめに

在留資格「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる「技人国」で働く外国人が近年急増している(図1)。出入国在留管理庁によれば、20256月末には458,109人となり、「技能実習」449,432人を上回って、「永住者」に次ぐ第2位となっている。2024年末からの半年間で39,403人の増加である[1]

この数字は何を意味しているのか。文字どおり解釈すれば、「専門的・技術的分野の外国人材が増えている」ということになる。だが、それだけでは現在の「技人国」の実態を捉えきれない。むしろ、この数字から読み取るべきなのは、「技人国」がもはや一部の高度専門職のための細い入口ではなく、日本の労働市場に外国人を接続する大きな制度的入口になっているということである。

 

1 在留資格「技術・人文知識・国際業務」による在留外国人数の推移(2006年~20256月)

出典)出入国在留管理庁HP「在留管理統計」各年度より筆者作成

ただし、ここで注意が必要である。「技人国」による在留外国人の数が増えたとはいえ、単純に「専門的技術的分野の高度な外国人材が増えた」と理解するのは早計である。現在の「技人国」による在留外国人は、日本の大学や専門学校を卒業して国内で就職する元留学生、海外から新規に「技人国」で来日する人材、日本国内外の人材紹介会社や仲介組織を通じて来日・就職する人材など、さまざまなルートを経由しており、彼らを一概に「高度な人材」と呼ぶことはその実態として適切ではないないからである。本稿では、特に「留学」から「技人国」という国内で形成される就労回路に注目し、誰が、どのような経路で日本の労働市場に参入しているのかを考えたい。 

2. この10年で何が変わったのか

「技人国」による在留外国人が増大した背景を理解するには、この10年ほどの社会的・制度的変化を押さえる必要がある。

第一に、2015年に「技術」と「人文知識・国際業務」が統合され、現在の「技術・人文知識・国際業務」が成立した。これにより、理系技術職、人文社会系の専門職、国際業務を包括する、比較的柔軟な就労資格として「技人国」が運用されるようになった。

第二に、2008年に「留学生30万人計画」が策定された[2]。この政策は、単に外国人学生を日本の教育機関に受け入れる政策ではなく、日本で学んだ留学生を、卒業後に日本企業へ接続する政策的意味を持っていた。留学生の受け入れは、教育政策であると同時に、将来の外国人材受け入れ政策でもあった。

第三に、日本企業の人手不足感が一貫して強まり、地方企業、製造業、宿泊・飲食、サービス業、小売、建設、医療・福祉など、さまざまな分野で人材確保が難しくなり、外国人材への期待が高まった。

第四に、日本に在留する外国人の絶対数そのものが大きく増加した。20256月末の在留外国人数は3956,619人となり、過去最高を更新し続けている[3]。外国人が増えることで、企業の採用慣行が変わり、仲介業者や支援サービスの市場が拡大し、「技人国」への流入経路も多様化している。これら四つの変化が相まって、「技人国」は、制度上は専門的・技術的分野の在留資格でありながら、実態としてはより広い外国人就労の入口になってきたのである。

3. 「留学」から「技人国」へ国内で形成されたルート

「技人国」の拡大を考えるうえで、まず重要なのが、留学生の日本企業への就職である。「留学生30万人計画」は、日本で学び、日本語能力を身につけ、日本社会に一定程度適応した人材を、卒業後に日本企業へ接続する回路を広げた。「留学」は、単に学ぶための在留資格ではなく、その後の就労につながる入口としての意味を持つようになったのである。

実際、2019年に日本企業等への就職を目的として、在留資格「留学」から在留資格変更が許可された者は3947人であり、そのうち「技術・人文知識・国際業務」への変更は28,595人で全体の92.4%を占めていた[4]。これは、「留学」から「技人国」への接続が、国内で形成された外国人若年層を日本の労働市場へつなぐ主要な経路となっていたことを示している。

ただし、ここでも単純化はできない。「留学」から「技人国」への移行において、すべての者が専門職に就労するわけではない。日本の大学・大学院を経て、研究開発、IT、国際業務、企画、専門職などに就く人もいれば、日本の専門学校等で学んだ知識や日本語能力を生かし、企業の事務、営業、通訳・翻訳、海外取引、顧客対応、現場と管理部門をつなぐ業務などに従事する人もいる。つまり、「留学」から「技人国」への経路は、高度専門職予備軍のルートであると同時に、ミドルレンジの労働市場へ外国人若年層を接続するルートにもなっている。「留学生の就職=高度人材化」という単純な認識では、この多様性を捉えきれない。

もっとも、「技人国」の拡大は、国内留学生の就職だけで説明できるものではない。海外から日本企業等に就職するために、「技人国」の在留資格認定証明書を取得して来日するルートも拡大している。出入国在留管理庁の「日本企業等への就職を目的とした在留資格『技術・人文知識・国際業務』に係る在留資格認定証明書交付状況」によれば、2014年の交付人数は18,480人であったが、2019年には5527人に増加している[5]2019年の国籍・地域別では、ベトナムが12,982人で最多、次いで中国が1975人であった。

つまり、「技人国」の入口には、大きく二つの経路がある。第一は、海外にいる外国人が、来日前に在留資格認定証明書の交付を受け、新たに「技人国」で来日する経路である。第二は、日本国内の留学生が、卒業後の就職に伴って在留資格を「留学」から「技人国」へと変更する経路である。この二つを分けて見ることで、「技人国」が、国内で形成された留学生の就職回路と、海外からの新規就労ルートの双方を包摂する資格になっていることが分かる。

4. 国籍別に見る「技人国」の意味-ベトナム×「技人国」の増加

国籍別在留資格別データを見ると、さらに重要なことが分かる。2024年末時点のデータを見ると、「技人国」ではベトナムと中国が大きな割合を占めており、これに続き、インドネシア、ネパール、ミャンマーなどが上位に並ぶ(図2)。しかし、この数字を「どの国の人が多いか」というランキングとして捉えるだけでは不十分である。むしろ重要なのは、同じ「技人国」であっても、国籍によってその意味が異なるという点である。 

図2 国籍別×在留資格別 在留外国人数(2024年末)

出典)出入国在留管理庁HP「在留管理統計」2024年度より筆者作成

 注目すべきは、ベトナムである。日本で就労する外国人を国籍別にみると、長らく中国が1位だったが、ベトナムは2020年に中国を抜いて1位となり、20256月の時点でも首位となっている[6]。しかし、その理由を、在留統計だけから断定することはできない。たとえば、「留学生が大量に「技人国」へ移行した」「「技能実習」や「特定技能」から「技人国」へ移った」「送り出し機関が「技人国」を商品化した」「日本企業が高度人材として大量採用した」といった説明は、いずれも可能性としてはありうるが、この統計だけで証明できるものではない。

ただし、推定できることはある。厚生労働省の外国人雇用状況届出を見ると、2010年代後半のベトナム人は、「技能実習」と「資格外活動」、つまり留学生アルバイトを中心に拡大していた。2017年時点では、ベトナム人労働者のうち「技能実習」が43.9%、「資格外活動(留学)」が41.0%を占めていた。2019年時点でも、ベトナム人は「技能実習」が48.3%、「資格外活動(留学)」が32.6%を占めていた[7]

つまり、ベトナムから日本への移動は、最初から「技人国」中心だったわけではない。2010年代には、「技能実習」と「留学」を軸として移動インフラが形成された。そのうち、「留学」で来日していた集団の一定数は、日本の教育機関を修了後、「技人国」へと在留資格を変更していると考えられる。その後、「技人国」で在留する者が親族を呼び寄せることで「家族滞在」などが加わり、形成済みの移動インフラの上に複数の移動ルートが順次接続して、拡大していった。したがって、ベトナム人の「技人国」急増は、ある時点で突然、専門的技術的分野の人材が大量に流入した結果というより、すでに形成されていた日本向けの移動インフラの上に、「技人国」という就労資格が接続した結果として理解するほうがよさそうである。拙稿「在留資格「技術」とは何だったのか」[8]でも述べたが、近年は「技人国」で就労するベトナム人労働者をめぐり、派遣会社による賃金不払いや虚偽申請の事案も表面化している。ただし本稿で注目したいのは、個別事案の詳細ではない。むしろ、なぜ「技人国」がこうした派遣・仲介・現場就労と接続しやすくなっているのか、その背景にある入口の変化である。ベトナムにおいて「技人国」は、専門的技術的分野の職への上昇ルートとしてだけでなく、留学、技能実習、特定技能、海外採用、送出機関、日本語教育、人材紹介などに接続する、より広い日本就労ルートの一部として機能している可能性がある。 

5. 終わりに-次回への問い

ここまで見てきたように、「技人国」の拡大は、単に専門人材が増えたことを意味しない。それは、留学から就職、海外からの新規来日、技能実習・特定技能からより自由度の高い就労資格、日本語学校から企業など、複数の経路から一つの在留資格に流れ込んでいることを示している。だからこそ、「技人国」取得者を一律に「高度人材」と見ることはできない。かといって、一律に「低専門化した資格」と見ることも適切ではない。重要なのは、どの国籍・地域の人材が、どのような経路を経て、どのような労働市場に接続しているのかを見極めることである。「技人国」は、いまや日本の外国人材受け入れの中核的な入口である。だからこそ、その入口を、高度専門職予備軍の移動とミドルスキル移動に分けて考える必要があるのではないか。次回は、こうして日本の労働市場に参入した人々が、実際にどのような産業や雇用現場に接続しているのかを、雇用統計や仲介の実態を手がかりに検討したい。 


[1] 出入国在留管理庁HP「令和7年6月末現在における在留外国人数について」
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00057.html

[2] 文部科学省HP「留学生30万人計画」骨子の策定について
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1420758.htm

[3] 出入国在留管理庁HP「令和7年6月末現在における在留外国人数について」
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00057.html

[4] 文部科学省HP「出入国管理行政の現状と課題」令和3年2月
https://www.mext.go.jp/content/20210210-mxt_syogai01-100003289_2.pdf

[5] 出入国在留管理庁HP「日本企業等への就職を目的とした在留資格「技術・人文知識・国際業務」に係る在留資格認定証明書交付状況について」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00024.html

[6] 厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」(令和210月末現在)
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000729116.pdf

[7] 厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」(報道発表)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/gaikokujin-koyou/06.html

[8] 在留資格「技術」とは何だったのか―2000年代の高度人材受け入れ政策と在留資格「技人国」の原型
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4972

注目コンテンツ

BY THIS AUTHOR

この研究者のコンテンツ

0%

PROJECT-RELATED CONTENT

この研究者が関わるプロジェクトのコンテンツ

INQUIRIES

お問合せ

取材のお申込みやお問合せは
こちらのフォームより送信してください。

お問合せフォーム