所有者不明土地問題と政策動向――新たな土地制度の普及へ

写真提供:Getty Images

所有者不明土地問題と政策動向――新たな土地制度の普及へ

日本の土地制度が大きな転換期を迎えています。所有者不明土地問題をきっかけに、土地基本法の改正や、所有者不明土地の活用の仕組みの創設が進み、2021年4月には民法・不動産登記法の改正が行われました。今後、相続登記は義務となり、新たに相続土地国庫帰属制度も始まります。この特集ページでは、所有者不明土地問題をめぐるこれまでの議論をアーカイブとして公開するとともに、問題の背景と制度見直しの要点をわかりやすく発信します。

【アーカイブ】論考一覧、文献情報、フォーラムレポート、報告書、政策情報
【解説】
制度見直しの契機は? ―所有者不明土地問題の広がり
問題の背景は? ―人口減少時代の土地の継承
何が変わるのか? ―土地制度の転換期

【論考一覧
この問題をめぐるさまざまな論点について、各分野の専門家・実務家によるこれまでの論考キーワード別にご紹介します。

【文献情報
もっとよく知るために。論考執筆者の論考執筆者の著書や参考文献をキーワード別にご紹介します。

Multimedia

【フォーラムレポート (1) 政策動向と今後の論点
相続登記や土地の「受け皿」機関など、政策対応のあり方を具体的に論じた公開フォーラムの記録です。

【フォーラムレポート (2) 問題構造と政策課題
南三陸町での実例をもとに、問題の構造と課題をさまざまな角度から論じた公開フォーラムの記録です。

【報告書】
土地の「所有者不明化」~自治体アンケートが示す問題の実態~』(2016)では、全国の実態と問題の構造を分析しています。

【政策情報】
所有者不明土地問題に関わる国の決定事項や法律の制定状況について、関連サイトへのリンクを時系列でご紹介します。

【解説】

制度見直しの契機は? ―所有者不明土地問題の広がり

皆さんはご実家や親族が持つ土地の所在や登記の状況をご存じでしょうか。2011311日に発生した東日本大震災の復興事業では、不動産登記簿の情報が古いままだったために所有者が直ちに判明しない、又は判明しても連絡がつかない「所有者不明土地」が多数見つかり、用地取得の難航と事業の遅れに繋がりました。実は、同様の問題は各地の空き家対策や公共事業の現場、さらに近年多発する豪雨や地震被害の復旧においても発生しています。

問題の背景は? ―人口減少時代の土地の継承

こうした問題が広がる背景には、これまで相続登記が任意であったことに加え、土地に対する需要や関心の低下、親族関係の希薄化による遺産分割協議の難しさなど、人口減少に伴う社会の変化があります。地域の土地の「受け取り手」や「担い手」が減る中、このままでは管理や登記が積極的に行われず、いざというとき円滑に利用できない土地が増えるおそれがあります。所有者不明土地問題は、人口減少時代における相続の問題であり、土地の継承を社会としてどう支えあうか、という大きな課題を突きつけています。

何が変わるのか? ―土地制度の転換期

国は問題の解決に向け、すでに不明化してしまった土地への対応策に加え、問題の発生予防の観点から、土地政策の理念や民事基本法制にも踏み込んだ抜本的な制度見直しを行いました。とくに大きな政策の節目と言えるのが、次の3つです。(番号の色は下図と対応)

(1)所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の制定(2018年6月成立)
(2)土地基本法の改正(2020年3月成立)
(3)民事基本法制の見直し(2021年4月21日成立、同月28日公布)
   ①不動産登記法の改正(公布日から2年以内に施行。相続登記の義務化の施行は3年以内)
   ②民法の改正(2年以内に施行)
   ③相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の制定(〃)

 図:主な改正点出所)「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」第8回会合の配付資料などを基に作成

こうした一連の制度改正は、所有者が不明な土地だけでなく、所有者が判明している土地や、土地以外の財産全般に適用されるものもあり、私たちの日々の土地利用や相続に大きな影響を与えるものです。今後は改正内容の周知を図り、新たな制度が実際に地域における課題解決に繋がるよう、国、地方自治体、地域・民間が連携して取り組んでいくことが重要です。

所有者不明土地問題は、人口減少という社会の変化と、これまでの人口増や「土地は資産」という前提に立った制度の間で広がってきた構造的な課題です。万能薬はありません。新たな制度の実効性や効果を検証しながら、人口減少時代の土地の利用・管理のサイクル(循環)をつくっていくことが求められます。

※ 改正の要点は「東日本大震災と所有者不明土地問題」(2021年3月11日付論考)もご参照下さい。