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【論考】人口減少社会における地域メディアの現在地 ③ケーブルテレビ
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【論考】人口減少社会における地域メディアの現在地 ③ケーブルテレビ

October 5, 2026

はじめに
1.ケーブルテレビ「3つの事業」
2.人口減少社会に向けた業界指針『2030ケーブルビジョン』
3.ケーブルテレビの地域メディア機能
おわりに

はじめに

現在、「人口減少社会における地域メディアの機能のあり方」研究プロジェクトを実施中である。地域メディアと一言でいっても多様である。放送は大きく3種類(地上放送<県域・ブロック>・ケーブルテレビ・コミュニティ放送局)、新聞も大きく3種類(全国紙地域版・地方紙<県域・ブロック>・地域新聞)がある。また、特定の地域に特化したインターネット上のメディアも増えている。

地域にメディア機能の空白地を作らないため、俯瞰的視点でメディアを横断した施策をどう検討していくべきか。その前提として、既存の地域メディア業界が置かれている状況を概観するシリーズ、3回目の今回はケーブルテレビについて考える。

1.ケーブルテレビ「3つの事業」

ケーブルテレビは、同じ放送でも地上放送とは異なり、契約世帯向けのサービスである。加入世帯数は約3,188万世帯、世帯普及率は約52.0%で、総世帯数の半数以上がケーブルテレビを経由して地上テレビ放送を視聴している[1]。また、放送だけでなく、通信、それ以外の事業の3つを生業としている。

その中で、ケーブルテレビの地域メディア機能は何かと問われれば、狭義でいえば、放送事業の中における、事業者自身が制作する「コミュニティチャンネル(以下、コミチャン)」であろう。しかし、地域メディア機能を、地域の人と人をつなぐ場の運営や、地域活性化のためのプロモーション展開、課題解決のためのソリューション提供など広義に捉えるとすれば、3つの事業が重なりあう中に取り組みを見出すことができる。これが、他のメディアにはないケーブルテレビの最大の特徴であり強みでもある。まず、3つの事業について、ケーブルテレビの歴史から見ておきたい。 

①放送事業

1955年、群馬県の伊香保で、地上テレビ放送の電波が届かない山間部の家々に、電波を受けられる場所(受信点)からケーブルを敷いて、テレビを視聴できるようにしたことがケーブルテレビの始まりであった。当初は地域の人たちによる任意団体によって自主的に運営される形で山間部を中心に広がった。このサービスは「地上再放送[2]」と呼ばれ(図1)、ケーブルテレビ事業の原点である。 

(図1)「地上再放送」サービスの仕組み(筆者作成)

地上テレビ放送の電波が届かなかったのは山間部だけではない。1970年代以降は、ビルなどで電波が遮られてテレビが視聴できない、いわゆる都市難聴の対策や、マンションや集合住宅の共同受信を目的とした開局が相次いだ。これは都市型ケーブルテレビと呼ばれ、電鉄系や建設系の企業が相次いで参入した。1980年代後半からは、地上放送に加えて衛星放送による多チャンネルサービスの提供も手がけるようになっていった。

これらの放送事業は、他事業者が制作したチャンネルをケーブルで届けるインフラサービスである。ケーブルテレビ事業者の中では、独自で制作するコミチャンを充実させて、地域メディアとしての存在感を高める事業者も増えていった。 

②通信事業

1990年代後半からは、新たな事業の柱となる通信サービスを開始した。地上放送を届けるために敷設したケーブルを、インターネット接続サービスに活用したのである。電話やモバイルサービスなども積極的に展開し、「テレビ・電話・ネット」をパッケージで提供する「トリプルプレイ」サービスが定着した。規制緩和も行われ、複数のケーブル局を統括して運営するMSO事業者(統合運営会社)が誕生した。

2015年頃からは、通信サービスに無線が加わってくる。地域BWAやローカル5Gといった専用の周波数を使うものから、低消費電力で広域をカバーする無線通信方式のLPWAまで、多様な仕組みを活用して、ライブ(情報)カメラ、見守り、防災、防犯、各種センサーの活用で地域DXサービスを展開する事業者が増えていった。それに伴い、地域の課題解決を担う企業としての意識も高まっていった。 

③その他事業

放送・通信の情報インフラの担い手として地域で存在感を増してきたケーブルテレビは、近年は電力・ガス・交通などの生活インフラにも事業を拡張している。また、通信インフラを前提としたオンライン医療やスマートホームサービスを手掛ける事業者も増えている。こうしたその他事業が3本目の柱となり、現在に至っている。 

(図2)ケーブルテレビ事業の歴史(筆者作成)

2.人口減少社会に向けた業界指針『2030ケーブルビジョン』

2021年6月、(一社)日本ケーブルテレビ連盟(以下、連盟)は、『2030ケーブルビジョン(以下、ケーブルビジョン)[3]』を発表した。2030年の社会を想定し、その時点でのケーブルテレビ事業者がありたい姿を考え、その姿に向けて戦略的に歩みを進めようという考えで策定されたものである。

図3は、そのケーブルビジョンに記載された、2030年の日本社会の想定である。人口減少や少子高齢化が大前提となっていることはいうまでもないが、一方で、人々の地方への回帰や、多様な暮らし方の選択の動きが進むことも想定されている。 

(図3)『2030ケーブルビジョン』P3

こうした将来を見据えて、ケーブルテレビのビジネスをどのように変化させていくべきか。それを示したのが図4である(第3版改訂版)。前章で述べた3つの事業について、取扱高[4]ベースで、ケーブルビジョン策定時の2020年、第3版改訂時の2024年、そして2030年の姿を示している。 

(図4)『2030ケーブルビジョン』(第3版改訂)

まず放送事業である。視聴者・ユーザーのテレビ離れ(リアルタイム視聴離れ)の進行と動画配信サービスの伸長によって、事業領域は縮小せざるを得ない。その分、2030年までに、ケーブルテレビ事業者が制作するコンテンツを国内外に展開し、ビジネスを拡張していくことが掲げられた。

次に通信事業である。こちらは取扱高を有線と無線に分けて、地域DXの領域で伸長が期待される無線事業の拡張に注力することが掲げられた。そして、その他事業では、世帯数の減少に伴う契約減に備えて、従来型のBtoC(顧客向けサービス)に加えて、地域の行政や企業向け(BtoG、BtoB)にもビジネスを拡張していくことが掲げられた。

以上の戦略を通じて、2020年時点では約1.3兆円だった業界総取扱高を、2030年には約1.7兆円を目指すとしている。第3版改訂版公表の2024年時点では、約1.5兆円となっており、ケーブルビジョンで示された計画は順調に進んでいるといえよう。 

3.ケーブルテレビの地域メディア機能

ここからはケーブルテレビの地域メディア機能についてみていく。狭義と広義で見ていく必要があるということを前述した。狭義のコミチャンからみていく。

コミチャンは、地上デジタル放送の周波数を使って放送される、ケーブルテレビ契約者向けのチャンネルである。大別すると、映像を主体とする番組と、テキストを主体とする文字放送・データ放送の2種類がある。 

①番組制作としてのコミチャン

コミチャンでは実際にどのような番組が放送されているのか。2025年12月に、財)研究学園都市コミュニティケーブルサービスの太田秀也理事長が発表した「ケーブルテレビのコミュニティチャンネルの最近の状況[5]」によれば、連盟に加盟する(MSO[6]、広域事業者を除いた)ケーブルテレビ330局のうち、ホームページでコミチャンの番組表が確認できた175局の番組を集計・整理した結果、3075番組が存在したという。そこでどのような内容が放送されているのか、太田氏の視点で分類したものが図5である。 

(図5)コミチャンの番組ジャンル(太田氏の論考から引用)

圧倒的に多いのが⑦の「暮らし・教養・娯楽」だが、①~④はいずれも地域に関連した情報の伝達と捉えることができるだろう。気になるのは、コミチャンでニュースやジャーナリズムといった報道は行われているのかである。この分類で最も近いのは②であるが、「時事・出来事情報」と分類されているため、どこまで報道的要素が入っているのか、この結果からは不明である。②が全体の番組の2割弱であることも合わせて考えると、報道的要素が含まれるコミチャンはそう多くはないということがいえよう。これは、筆者の取材実感とも合致する。コミチャンは総じて、地域に生きる視聴者・ユーザーの暮らしを彩り、日常に役に立つ情報やコンテンツを提供する存在であるといえるだろう。

コミチャンの番組制作については、事業者の中で温度差が極めて大きいことを指摘しておかなければならない。番組制作には取材・撮影・編集・収録などを伴うため、ヒト・モノ・カネの持続的な投入が必要である。ただ、どの事業者も、コミチャン単体での有料契約は行っていない。また、広告を入れている事業者も一部いるが、地上放送に比べてはるかに少ない収益にしかなっていない。そのため、コミチャンを住民とつながり地域に貢献し、信頼を得て地域で成長するための重要な経営資源と捉える局もあれば、できるだけコストを抑え、生放送の対応は行わず、リピート中心の放送をし続けるだけの局もある。先に述べた通り、ケーブルテレビは複数の事業で成り立っているため、地域メディアとして論じる際には、その機能が薄い事業者も少なくないことには留意が必要である。

ただ、前章のケーブルビジョンでも触れたように、近年は業界として共通テーマで番組制作を行ったり、ネット上に共通プラットフォームを作ったり、海外での番組販売を手がけたりと、地域外に番組を展開する仕掛けを作り、コンテンツビジネスに力を入れていこうという動きが加速中である[7](図6)。こうした動きに伴って、今後、これまでは消極的だった事業者の中にも、番組制作に力を入れようとする所が出てくる可能性もある。 

(図6)ケーブルテレビ事業者による共通テーマでの番組制作[8]

②文字放送・データ放送としてのコミチャン

コミチャンのもう1つの柱が、文字放送やデータ放送である。地域の各種情報の伝達を主目的としたもので、画面はテキストや図表などを中心に構成されている。行政区単位の狭域情報の伝達も可能だ。

また、1チャンネルを「防災チャンネル」として固定し、平時から放送する動きも増えている。度重なる水害に襲われてきた佐賀県武雄市をエリアに抱えるケーブルワンの取り組みが先駆けとなったもので、情報と各種データに定点ライブカメラ映像を組み合わせた構成で24時間365日、伝え続けている。また、自社のライブカメラに加えて、国土交通省の各整備局が所有する河川監視カメラの映像や各種データを共有し、コミチャンなどで流す「地域防災コラボチャンネルプロジェクト」にも、2024年末現在で33社が参加中である。

河川や道路などのライブカメラの映像をセンサーとして活用する形で、コミチャンを通じて地域の防災・減災に貢献するのは、無線事業を手掛けるケーブルテレビの最大の強みであり、放送×通信の掛け算による地域メディア機能といっていいだろう。更に最近では、無線ネットワークによって得られる気温・雨量・風速などのセンサー情報をリアルタイム表示する仕組みも開発され、採用が進んでいる(図7・図8)。 

(図7)ZTV(三重県津市)のデータ放送『JC-data[9]』の河川カメラの画面[10]

(図8)広域高速ネット二九六(千葉県佐倉市)のデータ放送の冠水エリア図イメージ[11]

ただ、こうした情報はコミチャンを視聴している視聴者にしか届かない。そのため、テレビを見ていなくても、防災行政無線などで緊急情報が発令されたら強制的にテレビを起動して情報を伝達する取り組み(イッツコムなど)や、対象デバイスをスマートフォンや告知端末などに広げて緊急情報を伝達する取り組み(旭川ケーブルテレビ、愛媛CATVなど)も拡大中である。

③放送事業×通信事業×地域事業の相乗効果

本稿で繰り返し述べてきた通り、ケーブルテレビ事業者の生業は、放送、通信、その他事業の3本柱である。特にここ10年は、BtoBやBtoGの無線事業やその他事業に力を入れてきた。それらの事業を通じて地域の要望や課題に直接、向き合い、その経験がケーブルテレビの地域メディア機能を強化させているというのが、筆者の認識である。その1つの例が、前章で述べた防災チャンネルであろう。

2025年のケーブルビジョン第3版では、地域の課題に向き合う事業者として、「地域DXで『街と人の健康』の担い手になる」という新たな目標が掲げられた。2026年7月の「ケーブルコンベンション」では、連盟の「地域ビジネス推進タスクフォース」が、先駆的な地域事業を行う10社が登壇するセミナーを企画した。河川監視システムの構築、シェアサイクル事業、プログラミング教室の運営、地域のデータ連携基盤の構築、電力事業などの多様な取り組みが紹介され、その後の交流会では、横展開に向けた相談が積極的に行われた。

これらの事業は、ケーブルテレビにとっては新規事業領域であるといえる。他のベンダーとの協業も多く、代理店業務もある。新規事業は、短期間で成果につなげられるか、どれだけ利益率を上げられるかにとかく注目が集まりがちである。しかし、セミナーでは、事業を通じて地域の困りごとが解決できるか、地域と共生・成長し続ける企業としてはどの事業を選択すべきか、という視点を強く感じた。そして興味深いのは、多くの事業者がこうした地域事業の実践とコミチャンの制作を連動させているということであった。 

おわりに

放送、新聞など他の地域メディアの多くは、収益の柱が長らくメディア事業1本であった。そのため、経営が苦しくなってから事業の多角化を図っても、なかなか成果を出すことができず、現在も苦しんでいる。一方、ケーブルテレビは、そもそも事業の多角化を続けながら発展してきた事業者である。変化の激しさをエンジンに変える力を持っている。加えて2021年の段階で、業界をあげてバックキャスティング思考[12]で将来像を描いたことも大きかったと思われる。

では今後、同じ地域メディアとして、地方紙やローカル局との経営統合の動きは進んでいくだろうか。報道・ジャーナリズムが強い地方紙と、映像コンテンツ制作が強いローカル局、地域事業が強いケーブルテレビには、相互補完関係があると筆者はかねてから考えてきた。また、地方紙やローカル局は新規事業に悪戦苦戦中だが、ケーブルテレビが手掛ける、無線と中心とした通信インフラで地域の課題解決を行うという地域DXは、新規事業の中でも、今後、更にビジネス領域が拡張していく分野である。様々な形での連携や協業が可能ではないだろうか。

一方で、ケーブルテレビに課題がないわけではない。自治体ケーブルや経営規模の小さな事業者は、ケーブルの光化の投資が困難で事業継続の危機に直面している。今後、業界全体としては淘汰や再編が加速していくだろう。この問題は、地上テレビ放送のインフラをどう維持していくのか、という議論に通じるテーマである。改めて考えていきたい。


[1] https://www.catv-jcta.jp/u/pdf/gyokaireport_2025

[2] 地上放送がアナログ放送の時代には「地上再送信」と呼ばれていた

[3] JCTAからのお知らせ | 一般社団法人 日本ケーブルテレビ連盟

[4] 企業などがある期間に取り扱った商品やサービスの総額を示す指標。売上高との違いは、代理店業務や仲介業務などの取引も含めた規模を示すもの

[5] 太田秀也「ケーブルテレビのコミュニティチャンネルの最近の状況[5]」『人と国土21 2025年12月号(第51巻5号)』(国土計画協会)

59-62 特別寄稿/太田様.indd

[6] J:COM、CNCi、CCJ、TOKAIケーブルネットワーク

[7] 日本デジタル配信(株)(JDS)「satonoka4K/TV」『壮観劇場』『田舎で暮らそう~移住の先に見えるもの』、ジャパンケーブルキャスト(株)(JCC)『えんてれ』、コミチャン配信サービス「ロコテレ」など

[8] 『おまつりニッポン』は㈱おまつりジャパンとケーブルテレビ連盟とのコンテンツ提携

[9] ジャパンケーブルキャスト(株)が提供するコミュニティチャンネル向けサービス

[10] https://www.cablecast.co.jp/news/20260106.html から引用

[11] https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000138708.html から引用

[12] 望ましい未来像を描いた上で、現在の課題を見つめ、解決していく道筋を考える思考のこと。現在の延長線上に未来を描いていく「フォアキャスティング(Forecasting)」の逆の意。

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