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【特集】「骨太の方針」閣議決定を受けて―「日本列島を、強く豊かに」する必勝策:国産資源の積極活用で38兆円の国富流出を防げ
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【特集】「骨太の方針」閣議決定を受けて―「日本列島を、強く豊かに」する必勝策:国産資源の積極活用で38兆円の国富流出を防げ

July 23, 2026

2026721日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太の方針2026)を閣議決定しました。高市内閣として初となる本方針は、私たちの社会をどのように導こうとしているのでしょうか。本連載では、政策の方向性や課題、実効性について多面的な視点から検討し、今後の社会の在り方を考えます。
これまでの特集記事は<政策フロントライン>のページからご覧いただけます。

この記事のポイント
 ・海外の資源依存による交易条件の悪化が国力弱体化の大きな要因の一つ。
 ・日本には再生可能エネルギー、海洋資源、都市鉱山など様々な国産資源がある。
 ・国産資源を積極活用することで、実質賃金向上や経済安全保障問題、気候変動問題への対処が可能になり「日本列島を、強く豊かに」することができる。                                                                                     

日本復活のカギは「交易条件」の改善
豊富な日本の国産資源
国産資源の活用でレアアースの供給不安もホルムズ海峡封鎖も怖くない
国富流出38兆円の削減を赤澤経済産業大臣へ提言

日本復活のカギは「交易条件」の改善

国内投資の縮小、GDP成長率の停滞、上がらない実質賃金など、日本は「失われた30年」と言われるように国力が弱体化した厳しい時期を過ごしている。

2026721日に閣議決定された「骨太の方針2026」(経済財政運営と改革の基本方針2026)は、こうした日本の弱体化した状況を克服するため、「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」を一体的に実現するなどにより、「日本列島を、強く豊かに」することが目指されているが、そのために必須となるのが「交易条件」の改善だ。

人口減少によって働く人より支えられる人の方が多くなる人口オーナスの状況下では、労働生産性を向上させることが経済成長を維持するための定石とされ、これまで取り組まれてきた。日本人の並々ならぬ努力により、1990年代半ばから2020年代半ばにかけて日本の時間当たり労働生産性は約40ポイントも向上している。当然、一人当たり実質賃金も向上しているものと思いきや、残念ながら向上するどころかマイナス成長に陥っているという状況にある。(図表1)

労働生産性を向上させたにもかかわらずなぜ実質賃金が上がらないのか。その大きな要因の一つになっているのが交易条件だ。

交易条件とは、輸出物価指数を輸入物価指数で割って算出されるもので、海外との貿易における国の稼ぎやすさを示す指標である。1990年代半ばから2020年代半ばにかけての日本の交易条件は、労働生産性向上の推移とは真逆にマイナスで推移しており、実質賃金向上の足かせになっていると言える。(図表1)

すなわち、日本は、一生懸命に労働生産性を上げて自動車や高度な半導体製造装置などを輸出して儲けても、儲けた以上に化石燃料や鉱物資源をはじめとする様々な物資を海外から輸入しているため、極めて稼ぎにくい体質になっていると言える。

足元を見ても、財務省が722日に発表した2026年上半期(16月)の貿易収支は半期ベースで10期連続の赤字となる1144億円の貿易赤字となっており、儲かっていない。[1]儲かっていなければ企業は「物言う株主」がいる手前、人件費を上げることは難しく、労働分配率も悪くなるのは当然のことであろう。
 

図表1)実質賃金と労働生産性、交易条件、労働分配率の推移(全産業)

出所:日本銀行ワーキングペーパーシリーズ「わが国の潜在成長率と物価・賃金の関係を巡る論点」2024 10 月 https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j17.pdf P24 図表17から抜粋、一部加筆

 

特に、「資源に乏しい」と自称する日本は、資源の多くを海外からの輸入に依存しており、2024年の鉱物性燃料(化石燃料)と主な鉱物原料品・原料別製品の輸入額は合わせて約38兆円という莫大な金額に上っている。これはまさに国富の流出と言え、なんとかしなければいつまでたっても交易条件は改善せず、「強い経済」を実現するのは難しいだろう。(図表2)

(図表2)日本の鉱物性燃料と主な原料品・原料別製品輸入額推移

出所:財務省貿易統計「令和6年分」、「平成16年分」から作成(原料品:非鉄金属鉱及び鉄鋼、原料別製品:木製品等(除家具)を除く)

豊富な日本の国産資源

「資源に乏しい国」と自虐的に自称する日本であるが、実は日本には再生可能エネルギー(以下、再エネ)や海底鉱物資源、都市鉱山など、交易条件の改善に資する様々な資源が国内にある。

(再生可能エネルギー)

再エネは日本の年間発電電力量の2倍以上のポテンシャルがあることが既にわかっている[2]。再エネの弱点とされる気象条件による発電の変動性も電気自動車(EV)を電力系統に統合して需給調整の役割を担わせるV2GVehicle to Grid)など、昨今の情報通信技術(ICT)を駆使することで変動を平準化できることがわかっている[3]。また、V2Gを導入することで平準化にかかるコストも大幅に削減でき、他の電源と十分競争力のある価格となることも報告されている[4]

再エネは電気だけでなく燃料も生み出す。再エネが普及すれば、水を再エネ電力で電気分解するP2GPower to Gas)によってグリーン水素という燃料を製造することも可能となる。水素は天然ガスの主成分の一つであることから、燃料電池車(FCV)の燃料という用途だけでなく、既存の天然ガスパイプラインに注入して国産燃料として利用することもできる。

(海底鉱物資源)

埋蔵資源に乏しいとされている日本だが、日本を取り巻く海の底には海底鉱物資源をはじめとする多様な資源が存在していることもわかっている。コバルトは国内消費量の約75年分以上、ニッケルは約11年分以上という豊富な資源量が見積もられているほか、昨今注目されているレアアースも、南鳥島沖の海域に世界3位の規模の資源があることが報じられている。駿河湾から日向灘沖にかけて広がる南海トラフの東部の海底には、日本の液化天然ガス(LNG)輸入量(2021年)の約6年分に相当する膨大な量のメタンハイドレートの存在も確認されている。

(都市鉱山)

日本は地上の埋蔵資源には恵まれていなくとも、資源を使って製造された製品の廃棄物が都市鉱山という形で膨大な量が蓄積されている。例えば、難燃剤として欠かせないアンチモンは世界の地下埋蔵量の22%に相当する約41万トンが蓄積されているほか、錫は世界の地下埋蔵量の19%に相当する約81万トン、銀は世界の地下埋蔵量の11%に相当する約6万トンが蓄積されている。高価な金は10%に相当する約5千トンが蓄積されており、日本の金の蓄積量はアフリカをはじめとする金の資源国の埋蔵量を超える資源量があるとされている。(図表3)

プラスチックについても都市鉱山の活用が期待できる。2021年の廃プラスチックの排出量は約824万トンとされているが、そのうちプラスチックとしてリサイクルされたのはわずか20%程度に止まっている[5]ことからさらなるリサイクルが期待でき、都市鉱山から各種資源を回収することで日本はリサイクル資源という国産資源を得ることができる。

(日本の優れた技術資源)

日本の貴重な資源として“優れた技術”があることも忘れてはならない。前述したEVも日本が2010年に世界初となる量産型の実用乗用車としてのEVを一般市場投入しており、EVは日本が開発した日本の技術資源といえる。昨今注目されている電力需要を劇的に削減する光電融合技術についても日本は開発の先頭集団にいる。データセンターの増加などにより電力需要の急増が懸念されている中、NTTが開発している光電融合技術IOWNでは、従来の8分の1の消費電力で動作するコンピュータを実現したことが公表されており、最終的には電力消費を100分の1にまで削減することが目指されている[6]

こうした日本の優れた技術は日本の資源として捉え、積極的に活用すべきだろう。

(図表3)日本の都市鉱山の資源量例

出所:サステイナビリティ技術設計機構我が国の都市鉱山蓄積2020”から作成

国産資源の活用でレアアースの供給不安もホルムズ海峡封鎖も怖くない

日本の様々な国産資源を積極活用すれば、レアアースの供給不安やホルムズ海峡の封鎖による化石燃料途絶などの経済安全保障上の問題にも対処できる。

レアアースのリサイクルについては、日本の自動車メーカーと化学メーカーの共同により、使用済み製品からレアアースを抽出するプロセスを、実験レベルではなくリサイクルプラントの量産工程で世界で初めて確立したことが2012年という早い段階で公表[7]されており、都市鉱山からのレアアースリサイクルを進めることで国産のレアアースを調達することができる。

ホルムズ海峡の封鎖による化石燃料の調達不安も国産資源を活用することで状況を改善することができる。

2021年における日本の天然ガスの用途は、電力用:57.3%、都市ガス用:36.4%、その他:6.3%となっているが、電力用については技術資源である光電融合技術などの日本の省エネ高効率技術と国産資源である再エネの普及によるエネルギー転換で大幅に天然ガス需要を削減することができる。都市ガス用については再エネによるグリーン水素の普及を進めることで民生・事業用燃料としての天然ガス需要を削減することができる。(図表4)

また、2024年の石油の用途別割合は、ガソリン:32%、ナフサ:25%、軽油:22%が上位3位となっている。このうちガソリンと軽油の主な需要は自動車をはじめとする運輸交通部門の需要になることから、従来のガソリン車を日本の技術資源であるEVFCVに置き換えることで5割以上の石油削減が理論上可能になる。

ナフサについては需要の約6割以上がプラスチック[8]であることから、都市鉱山からプラスチックを回収してリサイクルプラスチックを確保することで大幅に削減することができる。(図表5)

このように国産資源の積極活用は資源の海外依存を改善し、経済安全保障上のリスクにも耐えうる強い経済の構築につながるだろう。

 (図表4)日本の天然ガス用途別消費割合(2021年度)

出所:JOGMECホームページ:「天然ガスが暮らしを灯すまで(使う)」 から作成

 

(図表5)日本の石油製品(燃料油)の国内需要(2024年度)

出所:石油連盟「今日の石油産業2025」から作成

国富流出38兆円の削減を赤澤経済産業大臣へ提言

「失われた30年」といわれるように日本の国力が低下している中、国産資源の積極活用は流出していた38兆円を国内に還流させ、交易条件の改善と実質賃金の向上につながるだろう。さらに、国産資源の積極活用は資源の海外依存を解消し、レアアースの供給不安や、ホルムズ海峡の封鎖による化石燃料途絶などの経済安全保障上の問題にも耐えうる強い日本を構築するだろう。また、都市鉱山から回収したリサイクル資源の活用は、地中から採掘して生産されるバージン資源を活用するよりも圧倒的に二酸化炭素の排出量が少ないため、気候変動問題への対処と企業の脱炭素化の促進に有効だ。

欧州をはじめとする各国では、リサイクル資源をサプライチェーンの中で循環して活用することで経済を成り立たせる循環経済(サーキュラーエコノミー)の構築が急速に進められており、既に欧州では製品製造におけるリサイクル資源の使用割合の義務化が進んでいる状況にある。

さらにサーキュラーエコノミーのグローバル市場は、2030年の4.5兆ドルから2050年には25兆ドルにまで成長する[9]ことが見込まれていることから、市場争奪戦が激化する見通しにある。

筆者は、資源の海外依存による国富流出38兆円を解消し「日本列島を、強く豊かに」する必勝策として、国産資源を積極的に活用する国産資源戦略を記した提言書「38兆円の宝の山 ~積極活用への提言」、および都市鉱山の活用に焦点を絞った「13兆円の宝の山 ~積極活用への提言」を去る331日に赤澤経済産業大臣へ直接手交した。

提言書を受け取った赤澤経済産業大臣からは、「国産資源を活用することは循環経済の面でも重要であると考えており、いただいた提言を成長戦略及び骨太の方針に入れるよう努める」とのコメントを頂戴するとともに、421日には当方の提言内容が含まれた「循環経済行動計画」が決定されている。さらに、「循環経済行動計画」は721日に決定された「骨太の方針2026」の本文(P10)に「『循環経済行動計画』に基づくメタルリサイクル推進戦略等を通じ、再生資源に係る供給サプライチェーンの強靱化等に取り組む。」として盛り込まれるに至っている。今後当プロジェクトは「循環経済行動計画」並びに「骨太の方針2026」に記載された循環経済構築の方針が“絵に描いた餅”にならないよう、社会実装に向けた活動を進めていく予定である。

 

提言内容はこちらをご参照ください
・政策提言「13兆円の宝の山」を経産省 赤澤大臣に手交 「国産資源戦略」で強い経済へ
・「38兆円の宝の山 ~積極活用への提言」
・「13兆円の宝の山 ~積極活用への提言」


[1] 財務省「報道発表 令和8年上半期分貿易統計(速報)の概要」令和8722
https://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/gaiyo2026_1-6.pdf

[2] 環境省地球温暖化対策課「我が国の再生可能エネルギー導入ポテンシャル 概要資料導入編」令和4年4月 

[3] 低炭素社会戦略センター シンポジウム2018年「『明るく豊かな低炭素社会』に向かう2050年の姿」資料、「2050年、低炭素化の実現とSociety 5.0~自動車会社の視点からの考察~」日産自動車株式会社 企画・先行技術開発本部 技術企画部 朝日弘美 20181212

[4] 経済産業省総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第67回会合)配布資料「基本政策分科会に対する発電コスト検証に関する報告」P188 令和6年1217⽇ 発電コスト検証ワーキンググループ

[5] 経済産業省 「プラスチック資源循環促進法の施行状況と 成長志向型の資源自律経済戦略」 令和5年11月 https://www.kansai.meti.go.jp/3-6kankyo/R5fy/20231130shiryo1.pdf

[6] NTT HP「光技術によるコンピューティングの革新~IOWN 2.03.0への進化、そして量子への飛躍~」https://www.rd.ntt/forum/2025/keynote_1.html

[7] Hondaニュースリリース「使用済み部品に含まれるレアアースの再利用について」2012417日 https://global.honda/jp/news/2012/c120417.html

[8] 石油化学工業協会(JPCAHP「石油化学製品の需要分布」https://www.jpca.or.jp/statistics/annual/juyou.html

[9] 経済産業省「資源循環経済政策の現状と課題について」 令和5年9月 

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