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2050年カーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギー(以下再エネ)の普及拡大は必須であるが、再エネは地域に吹く風や照り付ける太陽光など地域由来のエネルギーであることから、その普及においては地域市民の理解や協力など、地域の社会的受容性を確保した地域主体の再エネ普及が重要となる。
再エネ普及で先行する欧州では、コミュニテイーパワーと呼ばれる地域の社会的受容性を背景にした地域主体による普及形態が浸透しており、景観悪化などの地域トラブルが回避されているが、再エネ普及に遅れる日本では地域主体の再エネ普及を促す施策の整備は進んでいない。
政府は2050年カーボンニュートラルの実現に向けて地域の再エネを最大限活用することで、脱炭素に向かうモデルとなる「脱炭素先行地域」を創出し、2030年から全国展開していく脱炭素ドミノを推進する方針にあるが、そのためには日本においても地域主体の再エネ普及を促進することが欠かせない。
また、先ごろドバイで開催されたCOP28では、各国の自治体のリーダーが集まり気候変動問題に対する地域の役割を議論する「ローカルクライメートアクションサミット」(Local Climate Action Summit)がCOPの歴史上初めて開催されたなど、気候変動問題への対処には自治体をはじめとする地域のステークホルダーの具体的な行動が重要であるという認識が高まってきている。
「地域主体による再生可能エネルギーの普及に必要な施策」研究プログラム(研究期間2022年7月~2024年3月)では、2050年カーボンニュートラルに向けて、そしてウクライナ危機に端を発したエネルギー安全保障問題への対処など様々な視点から再生可能エネルギーの普及が求められている中、ドイツのシュタットベルケを事例に、いかにすれば日本においても地域主体の再生可能エネルギー普及を促進できるかを研究してきた。その最終成果として、本書および解説動画では、喫緊に取り組まねばならない7つの施策を提言している。
折しも日本のエネルギー政策の大方針となる次期(第7次)エネルギー基本計画策定のタイミングを迎えており、地域主体の再生可能エネルギー普及政策の立案は重要な政策課題として十分議論されることが望まれる。地域主体の再生可能エネルギー普及政策の立案にあたり、本書および解説動画がそのための一助として寄与できれば幸いである。
目次
エグゼクティブ・サマリー- 第1章 再生可能エネルギーの普及動向
- 第2章 欧州の地域主体による再生可能エネルギー事業
- 第3章 日本の第三セクターの失敗
- 第4章 独シュタットベルケと市民の関係性(事例分析)
- 第5章 独シュタットベルケと市民の関係性の特徴
- 第6章 第三セクター(日本版シュタットベルケ)と独シュタットベルケの違い
- 第7章 独シュタットベルケから見る地域主体による再生可能エネルギー事業創出に必要な要件
- 第8章 地域主体による日本の取り組み
- 第9章 提言:地域主体による再生可能エネルギーの普及に必要な施策
■政策研究「地域主体による再生可能エネルギーの普及に必要な施策~独シュタットベルケからの考察~」全文はこちら(PDF:6MB)
解説動画
■発表資料「地域主体による再生可能エネルギーの普及に必要な施策~独シュタットベルケからの考察~」
平沼 光(東京財団政策研究所 主席研究員)※研究代表者
※こちらの解説動画で紹介している『政策研究』はPDFデータでの配布となります。