2019年の世界金融市場の動きを振り返れば、米中貿易戦争の動きに一喜一憂しながら、極端に不安定な展開だった。東アジアに焦点を当てれば、その不確実性の震源地が中国であることは明白である。2020年の東アジア情勢を展望すれば、2019年同様、トラブル続きの年になる可能性が高い。
米中両政府はこれから第2段階の貿易交渉を始めるとしているが、合意に達する見込みはほとんどない。米中対立のリスクを回避すべく、多国籍企業は中国にある工場の一部を東南アジアなどへ移転させており、その動きは2020年も続くものと思われる。その結果、グローバルサプライチェーンが大きく再編成されることになる。
一方、香港の抗議デモは収束しておらず、台湾では、独立志向の高い蔡英文総統が選挙で再選される可能性が高い。北京にとり、いずれも都合の悪い結果になりそうだ。
中国国内情勢に目を転じると、少数民族地域の不安定化に加え、経済成長が大きく減速している。習近平政権はこのような内憂外患の難局をどのようにして切り抜ければいいのだろうか。習近平国家主席の本心としては、一刻も早く米国との貿易戦争を終戦に持ち込みたい。ただし、弱腰外交と批判されるのを警戒して、簡単には、譲歩することができない。
北京は台湾を緩い一国二制度の枠組みで統一したいと考えているが、想定外の香港情勢の複雑化は台湾情勢に影を落としている。むろん、蔡英文総統が任期中に独立すると宣言するとは思わない。問題は、アメリカがどのような形で台湾情勢にかかわってくるかにある。
北京がもっとも嫌がるのは、アメリカなどの外国が台湾問題にかかわることである。北京のコンテキストでいえば、台湾問題は内政であり、いかなる外国も干渉してはならないということになる。しかし、アメリカは北京のコンテキストで台湾問題を論じていない。トランプ政権になってから、台湾への武器輸出を再開し、政権幹部が台湾に旅行できる法案も採決されている。明らかにアメリカは中国の核心的利益を脅かしている。
総じていえば、2020年の東アジア情勢は米中両国の国益が衝突する結果次第で明暗が分かれると思われる。