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深層中国第4回「2022年中国経済の展望-党大会に向けた試練」
画像提供:共同通信

深層中国第4回「2022年中国経済の展望-党大会に向けた試練」

January 19, 2022

R-2021-038

中国経済がアメリカ経済を抜いて世界一になるのは時間の問題といわれているが、今の中国経済を考察しても、そこまでの力強さが見受けられない。中国経済がある種の失速感に包まれている。中国経済を減速させる短期的な要因について、いわゆるゼロコロナ政策などがあげられる。世界主要国のほとんどでは、ウィルスの感染が増えても、できるだけロックダウンを回避するようにウィズコロナ政策が取られている。それに対して、中国政府はいまだにゼロコロナ政策を堅持している。都市封鎖による経済の下押し効果が予想以上に大きい。

むろん、ゼロコロナ政策はあくまでも景気を押し下げる短期的な要因である。中国経済にとっての本当の試練はゼロコロナ政策ではなく、長期的な構造問題である。

中国経済の構造問題
バブル崩壊の可能性
2022年の中国経済の展望

中国経済の構造問題

長い間、中国の経済成長を支えてきたのは豊富かつ廉価な労働力だった。中国の労働力と外国資本が結合して、中国を「世界の工場」へと導いた。中国で作られた廉価な商品が大量に輸出され、この比較優位戦略こそ中国のこれまでの経済成長を支えてきたのである。そのうえ、経済成長とともに、中国の一人当たりGDPが急拡大した。一人当たりGDP3000ドルを超えた時点から、モータリゼーションが始まった。それから中国は徐々に「世界の工場」から「世界の市場」になっていった。

しかし問題は、生活が豊かになるにつれ、先進国と同じように中国の出生率も低下すると容易に予想されるにもかかわらず、厳格に実施されていた出産制限の「一人っ子政策」が遅々として解除されなかったことにある。最近になって、「一人っ子政策」がようやく解除されたが、すでに遅すぎた。中国のポリシーメイキングは硬直的すぎて禍となっているのである。

 

そして、習近平政権になってから、国有企業をより大きく強くすることを重視する姿勢を示している。これまで自由化を軸とする「改革・開放」政策によって経済成長が成し遂げられた。その基本方針が見直されれば、中国の経済はこれから厳しく統制されるようになるとみられている。このような大きな方針転換こそ経済成長を妨げるものになると心配されている。

近年、アリババやテンセント、タクシーの配車アプリの「滴滴」などの民営企業に対する締め付けは経営者に大きな不安を与えているに違いない。すなわち、中国が歩もうとしている道は自由な市場経済なのか、厳しく統制された経済なのかが問われている。中国では、雇用の創出、納税、経済成長への寄与のいずれについても民営企業は国有企業以上に重要な役割を果たしている。民営のリーディングカンパニーが統制されてしまうと、中国経済は急減速を免れない。中国経済はいわば分水嶺に差し掛かっている。

 

さらに、習政権は所得格差と資産格差の拡大を問題視している。格差を縮小させるために、「共同富裕」のスローガンが掲げられている。基本的に中国はまだ社会主義国である。かつて、毛沢東は政権を樹立したとき、人民に対して平等かつ裕福な生活を公約した。しかし、実際は毛時代の中国で数千万人の人が餓死しただけでなく、知識人などが迫害され、数百万人が犠牲になった。ようやく1978年以降、鄧小平は「改革・開放」政策を推進し、一部の人が先に豊かになるのを奨励する「先富論」を唱えた。これにより、中国人はかつて考えられないほど豊かになった。反面、所得格差と資産格差も拡大している。

「共同富裕」の考えは間違っていないが、税制などの制度改革を行わなければ、それはあくまでも絵に描いた餅に過ぎない。要するに、「共同富裕」を実現しなければ、共産党への求心力が高まらない。 

バブル崩壊の可能性

中国経済はこのような構造問題を抱えながら、奇跡的ともいわれるような高成長を成し遂げてきた。しかし、経済が急成長を遂げると、構造問題などが見えにくくなってしまう傾向がある。かつて、鄧小平は「発展こそこの上ない理屈だ」と呼び掛けた。その結果、中国政府のポリシーメイカーの間で成長至上主義をとる人が多くみられる。経済成長を促すために、中国政府は都市再開発と不動産開発を奨励した。しかし、それにかかわる土地制度と不動産税(固定資産税)関連の税制などの改革がほとんど行われていない。

都市再開発と不動産開発の進展によって中国人の居住面積が著しく拡大した。1978年当時、中国人の一人当たりの平均居住面積はわずか3㎡だったのに対して、今は35㎡を超えており、先進国並みになっている。反面、行き過ぎた不動産開発の結果、マンションなどの不動産価格は高騰し、不動産税が導入されていないため、富が著しく偏在している。すなわち、富裕層は不動産投資によって大量の富を支配するようになった。

中国の不動産市場は明らかにバブルになっている。しかし、多くの中国人は、不動産需要が根強いことから不動産バブルは崩壊しないと信じているようだ。実際は、崩壊しないバブルは世の中に存在しない。中国の最大手不動産デベロッパーの一つである恒大集団のデフォルトは中国の不動産バブル崩壊の始まりであろう。

 

問題は不動産バブル崩壊そのものではない。恒大集団の例を挙げれば、同社が債務不履行に陥った後も、同社の経営者や政府の監督者のいずれも記者会見を行っていない。正規のルートから正しい情報開示がなされていないため、投資家はインターネットやSNSなどを通じて情報を収集するが、何を信じればいいかわからない。投資家を安心させるには、正しい情報を開示するしかない。さもなければ、市場では投資家が疑心暗鬼になって、危機はますます広がってしまう恐れがある。

かつて、日米欧のいずれも歴史上何回も経済危機と金融危機に見舞われた。正確な情報を開示するなど危機に正しく対処すれば、大事にならなくて済む。ここで、重要なのは危機をもたらした責任の所在を明らかにすることである。考えてみれば、外国人投資家が中国での投資について自信を失えば、中国経済にとってプラスになるはずがない。

現状において不動産価格が高すぎて、不動産バブルが危険な状況にあるのは明々白々である。中国政府のポリシーメイカーが優先的に考えるべきことはバブルを崩壊させないのではなく、バブルが崩壊したときに、いかにソフトランディングに導くかである。

2022年の中国経済の展望

2022年の中国政治日程についてもっとも重要なのは、秋に開催される党大会で習近平国家主席の続投が決定される予定ということである。従来の規定では、習主席は二期が終了した今年の秋に退任しなければならないが、2018年に開かれた党大会で憲法が改正され、国家主席の任期制限に関する規定が撤廃されてしまった。

むろん、憲法が改正されたからといって、共産党内で任期制限の撤廃について反対する勢力がないわけではない。習主席の続投についてその正当性が問われることになる。要するに、これまでの10年間における中国の政治、経済、社会がどうであったかが検証されなければならない。

もっとも習政権の功績として挙げられるのは、これまでの10年間で累計700万人以上の腐敗幹部が追放されたことである。しかし、腐敗幹部の追放は功績といわれているが、これだけの幹部が腐敗すること自体、ガバナンスの欠如によるものである。それに、経済運営を振り返れば、政権が誕生した直後から、減速した経済をニューノーマル(新常態)と定義していた。これまでの10年間、中国経済は順調に成長してきたとはいえない。とくに、コロナ禍により、中国の経済と社会は完全に一変してしまった。失業者が増えた。上で述べたように、不動産バブルは崩壊しそうになっている。

こうしたなかで、習政権は社会と企業への統制を強化している。一旦自由を味わった中国人は自由が再び奪われることについて当然のことながら抵抗すると思われる。

 

このような問題意識を踏まえ、2022年の中国経済を展望すれば、高成長に戻ることはほとんどあり得ないと思われる。否、それよりも、中国経済を取り巻く内外の環境をみれば、一段と減速する可能性が高い。

具体的に、第1四半期の経済活動はこのまま停滞していくと思われる。コロナ禍がいつ終息するかは予測不可能だが、コロナ禍が終息しても、その傷が癒えるには予想以上に時間がかかる。そのうえ、不動産バブルの崩壊はおそらく避けられない。中国経済をけん引してきた建設業などが大きく落ち込むようになれば、2022年の中国経済は過去40余年来、経験したことがないほどの低成長に落ち込む恐れがある。習主席と李克強首相は国内で行った演説で人民に対して「これから厳しい生活を送る準備をしなければならない」と呼び掛けている。2022年の中国経済は予想以上に厳しくなる可能性が高い。

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