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「地方自治体におけるAI導入の現状と課題 -デジタル基盤標準化の重要性」
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地方自治体におけるAI導入の現状と課題 -デジタル基盤標準化の重要性

January 26, 2024

R-2023-085

はじめに
自治体におけるAIの導入状況
デジタルガバメントと標準化
おわりに

はじめに

人工知能(AI)をはじめとするデジタル技術は急速に成長しており、あらゆる産業、分野で使われる汎用的な用途をもつ技術として、新たな産業革命・変革をもたらすことが期待されている。自治体、公共サービスにおいても、人手不足問題や、限られた予算の中で質の良いサービスを提供するためにAIをはじめとするデジタル技術の導入が目指されている。
日本では、2020年、新型コロナウイルス感染症の流行によるデジタル活用において、その遅れと海外との差異が顕在化した。それにより、これまでのIT戦略を改革し、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」をはじめとしたデジタル政策が推進されているところである。「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」においては、目指すべきデジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」が示された。このビジョンの実現のためには、住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割が極めて重要であると位置づけられている[1]

また、自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」における重点取組事項のひとつに自治体のAIRPAの利用推進がある。その背景には、少子高齢化によって自治体の経営資源が制約される中、法令に基づく公共サービスを的確に実施するために、自治体で業務の自動化・省力化につながる破壊的技術(AI やロボティクス、ブロックチェーンなど)を使いこなすことで、職員は企画立案業務や住民への直接的なサービス提供など、職員でなければできない業務に注力するスマート自治体へと転換する必要がある[2]という『自治体戦略2040構想』と連動した課題意識がある。

自治体におけるAIの導入状況

そこで、総務省の令和4年度(2022年)「地方自治体におけるAIRPAの実証実験・導入状況等調査」[3]のデータを参照し地方自治体におけるAI導入状況をレビューする。
AIの導入済み団体数は、2021年度時点で、都道府県・指定都市で100%となった。2022年の調査では、その他の市区町村でAIの導入済み団体は45%であった。傾向として、人口が多い地方自治体での導入が進んでおり、導入済み団体の人口カバー率は約85%である。

1は、各都道府県内の全市区町村数のうち、何らかのAIツールを導入済みである団体が占める割合を可視化したものである。半数に満たない都道府県が多い中で、割合が高い愛知県、滋賀県、岐阜県、山口県では、県が主体となってAIツールの共同利用を行っている。共同利用によって、コスト削減のほか、学習データや導入ノウハウの共有といったメリットが想定される。総務省のアンケート調査からも、特に人口が少なく規模の小さい地方自治体では、共同利用が導入のきっかけになっていることが多い。

1 都道府県別 AI導入自治体割合
[総務省(2023b) 令和4年度「地方自治体におけるAIRPAの実証実験・導入状況等調査」[4]
AI
導入状況調査結果のデータをもとに筆者作成]

 

22022年時点で都道府県・指定都市を含めた地方自治体において導入されているAIの機能別導入件数を表したものである。音声認識、文字認識、チャットボットによる応答といった識別機能をもつAIは多くの地方自治体で導入が進んでいる一方で、予測や実行といった高度な機能を有するAIの導入事例は、依然として少ないという状況である。

2 地方自治体のAIの機能別導入状況[総務省(2023b)概要版 [5]のデータをもとに筆者作成]

 

技術導入が可能な部分のみの業務の最適化という起点でAIツールが導入されると、これまでのようにシステムが乱立することになりかねず、再び統合に困難が伴うという問題が発生しうるため、プロセス全体の最適化を念頭に置いたAI導入を行うことに留意する必要がある。それによって、将来的には、個人最適化による行政サービスの更なる質の向上が期待できるだろう。
また、自治体の経営資源が減少していく中でスマート自治体として望まれる姿は、自治体の業務プロセスや業務システムを大胆に標準化・共同化して、AIを含む、ICTの活用を前提とした自治体行政を展開する[6]というものである。標準化・共同化によって、AIの横展開が期待される。
そのため今後はますます、デジタル化に伴う業務の見直し(トランスフォーメーション)と標準化、共通システムの提供、データの標準化などが重要になる。

デジタルガバメントと標準化

共通システムの提供、データの標準化の遅れは、Government AI Readiness Index 2022[7]においても指摘されているところである。当指標は、Oxford Insights(2022) Government AI Readiness Index 2022”によって開発されたものであり、政府がAIベースのツールを公共サービスの提供に実装する準備ができているかどうかを測定することを試みて、政府、技術部門、データとインフラ、以上3つの柱に分けられる10の次元にわたる39の指標をもとに点数をつけ、ランキング化したものである。日本の総合的な順位は、9位であるが、Foundation IT infrastructure(政府の基盤ITインフラ)の順位が101位であった。これは、世界銀行による GovTech Maturity Index 2022CGSI(Core Government System Index)からデータが参照されている。日本が順位を落とした原因は、政府エンタープライズ・アーキテクチャのフレームワーク、政府間の相互運用性フレームワーク、政府機関間の包括的な接続プラットフォーム及び公共投資管理システムが存在していないと回答[8]していたためである。
GovTech Maturity Index 2022のレポートでは、政府基幹システムは各国において投資が進められているが、プラットフォームのほとんどはまだ切り離されており、ウェブサービスやアプリケーション・プログラミング・インターフェースを使ったデータ交換は十分に自動化されていない。既存のプラットフォームの運用コストを大幅に削減し、効率を向上させるためには、ガバメントクラウドやサービスバスなどの共有デジタルプラットフォームへのさらなる投資と、相互運用性フレームワークの開発が必要である[9]との記述があり、日本も例外ではないと考えられる。

地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化に向けて、基幹業務システムを利用する原則全ての地方公共団体が、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムに移行できる環境を整備する「自治体システム標準化」の目標は当初2025年度末であったが、その期限を延長せざるを得ない状況にある。
国は、基礎自治体、都道府県などの意見を丁寧に聴きながらシステム移行に必要な支援を積極的に行うとしているが、一方で、移行や運用に伴うコスト問題、データ標準化、外部システムとの連携、ネットワークやシステムのセキュリティ確保など、数多くの課題群を基礎的自治体、都道府県、政府の間で着実に解決してゆかなければならない。 

おわりに

行政DXによって、同一都道府県内や近隣自治体における共同利用だけでなく、地理的制約を超えた広域連携などの事例も多く見られるようになっている
データ基盤、システム基盤の統合をスムーズに整備していけるかは、今後の行政DXにおける決定的に重要な鍵といえよう。 

 

脚注

  1. 総務省(2023a)「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画 【第1 版】」
    https://www.soumu.go.jp/main_content/000910649.pdf
  2. 総務省(2018) 「自治体戦略2040構想研究会 第二次報告 ~人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか~」4, p.29参照https://www.soumu.go.jp/main_content/000562117.pdf
  1. 総務省(2023b) 令和4年度「地方自治体におけるAIRPAの実証実験・導入状況等調査」概要版
    https://www.soumu.go.jp/main_content/000890320.pdf
  2. 総務省(2023b) 令和4年度「地方自治体におけるAIRPAの実証実験・導入状況等調査」AI導入状況調査結果
    https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.soumu.go.jp%2Fmain_content%2F000890289.xlsx&wdOrigin=BROWSELINK
  3. 総務省(2023b)概要版 7
    https://www.soumu.go.jp/main_content/000890320.pdf
  1. 総務省(2018) p.2
  2. オックスフォードインサイトと国際開発研究センター(IDRC) が開発した指標。
    参照:Oxford Insights(2022) “Government AI Readiness Index 2022”
    https://static1.squarespace.com/static/58b2e92c1e5b6c828058484e/t/639b495cc6b59c620c3ecde5/1671121299433/Government_AI_Readiness_2022_FV.pdf
  1. 2022年上半期のデータ集計時点
    参考:
    https://app.powerbi.com/view?r=eyJrIjoiNjkyYjcyNDItMDA1MS00YjBhLTlmMTAtMzllOTczNjZkNGZmIiwidCI6IjMxYTJmZWMwLTI2NmItNGM2Ny1iNTZlLTI3OTZkOGY1OWMzNiIsImMiOjF9&navContentPaneEnabled=false
    回答データリンク:
    https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fdatacatalogfiles.worldbank.org%2Fddh-published%2F0037889%2FDR0089805%2FWBG_GovTech%2520Dataset_Oct2022.xlsx%3FversionId%3D2023-03-28T18%3A42%3A27.4858550Z&wdOrigin=BROWSELINK
  1. World Bank(2022) WBG GovTech Maturity Index 2022 Update: Trends in Public Sector Digital Transformation; Washington, DC. World Bank
    https://openknowledge.worldbank.org/server/api/core/bitstreams/5e157ee3-e97a-5e42-bfc0-f1416f3de4de/content  p.48

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