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高齢化社会とデジタル田園都市構想を考える
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高齢化社会とデジタル田園都市構想を考える

March 27, 2024

R-2023-122

高齢化社会とデジタルトランスフォーメーション
高齢者の生活と現代社会
デジタル田園都市構想での実践
デジタル実装タイプTYPE2/3の事例
おわりに

高齢化社会とデジタルトランスフォーメーション

日本社会の高齢化と、デジタルトランスフォーメーション(DX)には密接な関係がある。もちろん、一概にDXといっても、産業面での遅れがあることや、組織改革には至らないことなど、足踏みの続いている現状があるのも事実だ。しかし、地域社会を高齢化の面から考えたときに、デジタル技術を利用して高齢者や彼らをとりまく人々の生活を、当事者自らの力で豊かなものにしていくことはできる。例えば、電通の調査によると、昨今、シニアのスマホライフは充実したものになっているという[1]。シニアに対しては、スマホに限らず、日常生活でもデジタル技術のリテラシー向上にむけて、自治体や企業を中心に、あらゆる取り組みがなされている。一方で、視力の低下や精神衛生の面からも、健康を害する可能性は否めない上に、詐欺の横行も問題になっている[2]。重要なのは、必ずしもDXを手放しで称賛するのではなく、その功罪を見極め、多様なステークホルダーの参加を通して、技術を適切に取り入れていくことだ。 

高齢者の生活と現代社会

ところで、日本社会における高齢化には、2つの側面がある。一つは、少子化に伴って社会全体に対する高齢者人口の割合がますます大きくなりつつあるということ、もう一つは、あらゆるライフイベントを迎える年齢が高齢化しているということだ。定年の延長を具体例として考えてみよう。定年延長政策の背景には、年金の受給年齢の引き上げがある。支給開始年齢と退職年齢にはギャップがあり、退職後に年金だけで生活水準を維持するのは困難というのが現状だ。補助があるとはいえ、医療費も介護費用もかかる中では、貯蓄は枯渇していく一方だ。加えて、労働力人口が減少する問題もある。この政策の効果については、健康面に関していえば、総じて正の影響があるということが実証されている[3]。高齢者の貧困を阻止し、社会としても労働力を確保できるという点では、年老いてなお働くということには大いに利点が見出されている。

デジタル田園都市構想での実践

日本政府は、地域社会が抱える課題をデジタル技術の力で克服しようとする取り組みを重要政策として掲げている。このデジタル田園都市国家構想は、具体的には、地方と都市の差を縮め、都市の活力と地方のゆとりの両方を享受できる国を実現し、地方の個性を活かしながら社会課題の解決と魅力の向上を図るものである[4]。また、誰一人取り残されず全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現することを目指している。デジタル田園都市国家構想におけるDXを考えるにあたって、デジタル基盤の整備は言わずもがな欠かせない。加えて、デジタル人材の充実も喫緊の課題である。外部から確保するだけでなく、年齢問わず人材を育成していくことが、社会の持続可能性にも影響するだろう。デジタル田園都市国家構想といっても、その規模感や交付金額は自治体によって異なるほか、目指すレベルも千差万別である。 

デジタル実装タイプTYPE/3の事例

ここでは、デジタル実装タイプTYPE/3に着目する。 

(「デジタル田園都市国家構想推進交付金デジタル実装タイプ(TYPE2/3)の採択結果について」8ページ目より引用)

上の図は、デジタル田園都市国家構想の実装タイプ1および2/3が目指す好循環を示したものである[5]。シビックテック(CivicTech)といった、市民がテクノロジーを活用して、社会課題や行政サービスの改善を目指す取り組み、すなわち草の根的に地方のDXを進めていこうとする活動はタイプ2/3の領域に含まれている。この領域における具体的な活用事例[6]の一覧をみると、共助や支え合いの観点から、誰一人取り残されないことを目指した活動である点が共通している。在宅医療や防災については特に注力されていることがうかがえる。自治体によっては、既存の仕組みを利用することで、サービスの円滑な普及に成功している事例もある。たとえば、全国に先駆けてスマートシティ化に取り組んでいる会津若松市では、行政手続きのデジタルIDとしてマイナンバーカードを活用している。[6]

このような試みは積極的に評価すべきであり、財政的サポートは重要な意義を有する。しかし、これらの活動をどのような指標を使って客観的に評価を行うかは事業継続にとって極めて重要な課題になる。そのためにはデータ整備とメトリクスの作成は不可欠だろう。

おわりに

日本社会全体でのDXの成果を把握することは困難である。しかし、デジタル田園都市国家構想のように、地方での積極的なDX促進の動きが、それぞれの地域でどのような活動として評価されているのかを把握することは、今後ますます求められるだろう。まだ始まったばかりのプロジェクトでも、長期的な視点で成果を捉えることが重要だ。プロジェクトの成果を長期的な視点でとらえることは、その取り組みの持続可能性にもかかわる。デジタル実装タイプ2/3で目指すような「エコシステム」を作り上げるには、デジタルサービスの提供者となる人材の育成のみならず、消費者を育成していくことが不可欠である。特に医療や福祉の面で比較的消費が大きい高齢者の労働のあり方が、サービスの消費者であり提供者でもあるような構図として実現することを期待したい。これが、社会における共助の促進にも繋がることを願う。


[1]電通がスマートフォン(スマホ)を利用する全国の60~70代男女1000名を対象に実施した「シニアのスマホライフ実態調査」(2022年)では、スマホが生活に必要だという回答が8割を超え、多くのシニアがその利便性を享受しているということがわかった。https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0912-010549.html
[2]アルソック研究所によると、警告画面を表示し、そこに記載されている連絡先に電話をかけさせ、問題解決のためのサポート料と称した金銭を騙し取るといった、「サポート詐欺」は、スマホへの依存度の高まりに伴うものだという。https://www.alsok.co.jp/person/recommend/2199/
[3]東京財団政策研究所が過去に掲載したレビューにおいて、定年延長が健康にプラスだということが示されている。https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3896
[4]考え方の詳細は、デジタル田園都市国家構想のホームページを参考にされたい。https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/index.html
[5]「デジタル田園都市国家構想推進交付金デジタル実装タイプ(TYPE2/3)の採択結果について」8ページ目を引用している。https://www.chisou.go.jp/sousei/about/mirai/pdf/denenkouhukin_saitaku_type23rr.pdf
[6]デジタル田園都市国家構想交付金 デジタル実装タイプ(TYPE2/3)の活用事例の詳細は下記を参照されたい。https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/10acd848-153a-4225-b4dd-d91c45e20912/8b5703e8/20230405_policies_digital_garden_city_nation_outline_01.pdf 

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