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【論考】「1人」の労働者を受け入れたとき、日本は「何人」受け入れているのか ―「技人国」と家族帯同
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【論考】「1人」の労働者を受け入れたとき、日本は「何人」受け入れているのか ―「技人国」と家族帯同

August 21, 2026

1. はじめに

これまで、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下、「技人国」)による就労の急増、雇用実態の見えにくさ、派遣就労における責任の分散、言語能力の確認などの問題を扱ってきた[1]。いずれも、働く本人と雇用する企業が対象だった。

しかし、外国人労働者の受け入れは、働く本人だけの移動ではないことがある。「技人国」をはじめとする一定の就労系在留資格では、配偶者と子の帯同が認められている。単身で来日する場合もあれば、配偶者や複数の子どもとともに来日する場合もある。一人の外国人労働者を受け入れることは、必ずしも日本社会が一人の生活者を受け入れることを意味するわけではない。

外国人の受け入れは、通常、在留資格ごとの人数で語られる。2025年末の在留外国人数は4125,395人であり、その内訳として、「技人国」が475,790人、「技能実習」が456,618人、「特定技能」が39296人である[2]。政策の議論も、おおむねこの単位で行われる。これらが示しているのは、就労する本人の人数である。

在留外国人統計を見れば、「家族滞在」[3]で在留する人の総数が352,875人に上ることも分かる。しかし公表統計上、この二つは別々の在留資格として集計されている。そのため、ある就労資格を持つ本人一人の受け入れが平均して何人の家族の移動を伴っているのかは見えてこない。つまり、就労外国人の受け入れ人数と、その受け入れを起点として実際に日本社会が受け入れる人口は一致しない。差を生むのが家族帯同である。にもかかわらず、その差がどの程度なのかは、現在の公表統計からは分からない。

特定の在留資格を持つ親の子どもが何人いるか、ということが問題なのではない。外国人労働者を「何人受け入れているのか」と考えるとき、私たちは何を数えているのか、ということはあまり議論の対象になっていない。就労資格を持つ本人だけを受け入れの単位とする見方から、その移動に伴って日本で暮らすことになる家族を含む世帯へと視野を広げる必要がある。 

2. 学校現場の統計に現れる、本人の背後にいる人口

家族を伴う移動の一部が統計として現れる場所の一つが学校である。2026525日、文部科学省は「令和7年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」の結果を公表した[4]。公立学校(小学校・中学校・高等学校)に在籍する日本語指導が必要な児童生徒は84,759人で、前回の令和5年度調査から15,636人、22.6%増加した。国立・私立学校を含めると88,045人となる。このうち外国籍の児童生徒は73,313人で、前回から15,595人、27%増えた。在籍校も11,123校から12,668校へ増え、公立学校のおよそ4割に、日本語指導を必要とする児童生徒が在籍している。

この数字を外国人労働者に伴って来日した子どもの数と推計するのは早計である。日本語指導が必要な児童生徒には日本国籍の子どもも含まれる一方、日本語を十分に使用できる外国籍の児童生徒は含まれない。就学前の子ども、高校を卒業した後の若者、外国人学校に通う子どもも含まれない。加えて、この調査から親の在留資格を把握することもできない。この数字から就労系在留資格に伴う家族人口を推計することはできない。

むしろ重要なのは、この数字が家族を伴う国際移動によって生じる人口の一部分しか捉えていないにもかかわらず、すでにこれだけの規模に達していることである。公立学校に在籍し、日本語指導を必要とすると判定された児童生徒、という条件で切り取った部分だけで8万人を超えている。働く本人の人数だけから眺めていると視野に入りにくい人口が、学校という生活制度の側では、これだけの集団として現れている。

労働市場の側では就労者本人が数えられ、学校の側では児童生徒が数えられている。その間にある家族移動の規模が、直接には見えてこない。

3. 「家族滞在」35万人は、誰の家族なのか

前述のとおり、2025年末時点で、「家族滞在」の在留者は352,875人である。在留資格別に見て第6位にあたり、「定住者」の226,438人や「日本人の配偶者等」の152,898人を上回る。ではその35万人は誰の家族なのか。

在留外国人統計は「家族滞在」の在留者数を国籍別、都道府県別、年齢別に示すが、扶養者がどの在留資格を持つかは示していない。仮に「家族滞在」の全員が475,790人いる「技人国」の家族としても、その比は0.74にしかならない。しかし実際には「留学」、「経営・管理」、「企業内転勤」など他の在留資格の家族も「家族滞在」に含まれるため、「技人国」固有の倍率を算出することはできない。

結果として、どの程度の人が家族を帯同しているのか、帯同する子どもが何人でどの年齢層にあるのかは分からない。在留者数が増えたとき、その増加が何人分の人口移動を伴っているのかを計算できない。他の統計で補うこともできない。国勢調査は国籍を尋ねるが在留資格を尋ねない。外国人雇用状況の届出は在留資格別の労働者数を示すが、家族を伴っているかどうかは対象としていない。在留資格と家族関係を同時に捉える公表統計が存在しないのである。

これは行政が家族関係や世帯を把握していないという意味ではない。「家族滞在」の在留資格を申請する際には、扶養者との身分関係や扶養能力が確認される。入国後も、中長期在留者は住民基本台帳の対象となり、市町村は住民票を通じて、在留資格や世帯主との続柄を含め、どの在留資格の者がどの家族とどこで生活しているかを、世帯単位で把握することができる。個々の行政手続の段階では、親と子は切り離されていない。

親子の関係が見えなくなるのは、外国人として集計され公表される段階である。親は就労系の在留資格を持つ一人として数えられ、配偶者や子どもは「家族滞在」の在留者として別に数えられる。さらに学校では、子どもは児童生徒として別の統計に現れる。親は記録され、子も記録され、世帯も別の統計では把握されている。しかし、誰の家族であるかという対応関係は、公表統計からは見えなくなる。

 図1:外国人の受け入れと家族帯同

出典)筆者作成 

4. 「1人」の意味は在留資格によって異なる

倍率が見えないことの帰結は、個々の世帯の実態が分からないことにとどまらない。在留資格別の在留者数を横に並べるだけでは、それぞれの受け入れ経路が日本社会にもたらす人口の規模を比較することができない。

「技能実習」と「特定技能1号」は、原則として家族の帯同を認めていない。これらの在留資格では、1人の受け入れはおおむね1人の移動を意味する。これに対して「技人国」では、1人の受け入れがそのまま1人の移動の場合もあれば、3人、4人、5人の移動である場合もある。したがって、「技人国」および「特定技能1号」がそれぞれ1万人増加する場合、就労者本人の増加数は同じであるが、日本社会が受け入れる人口数は同じとはならない。地域に加わる住民の数も、学校に通う子どもの数も、必要となる住居や生活支援の量にも相違が生じる。在留資格別の在留者数を並べただけでは、この違いを把握することはできない。

この点は、政策の管理手法との関係でも確認しておく必要がある。「特定技能」は分野ごとに向こう5年間の受け入れ見込み数が定められている。「技能実習」も受け入れ人数枠が事業所規模等に応じて設定されてきた。性格の異なる仕組みではあるが、いずれも人数によって受け入れの規模を管理しようとするものである。他方、家族帯同を認める「技人国」には、受け入れ人数の上限が設定されていない。そのため、どちらの経路でより多くの人口が生じているかを推測することはできない。

5. 「世帯」に視野を広げた外国人受け入れ政策を考える

家族帯同によって増えるのは、入管統計上の「家族滞在」の人数だけではない。配偶者や子どもは、日本で住居を持ち、地域で生活し、医療や日本語学習の機会を利用し、学齢期であれば学校に通う。就労資格を持つ本人を受け入れるという決定は、労働市場の外側にも人口を生じさせる。

問題は、その人口が受け入れ人数を数えるときには視野に入らず、別の行政領域で需要として現れた段階で初めて可視化されることである。必要なのは、新たに外国人世帯を把握する仕組みを設けることではない。すでに行政が把握している情報が、受け入れの規模とその社会的な影響を検討するための統計として集約されていない、ということが問題である。

具体的には、「家族滞在」の在留者について、扶養者の在留資格別の内訳を公表することが考えられる。「技人国」の在留者が何人で、その「家族滞在」が何人か。「経営・管理」では何人か。「企業内転勤」では何人か。この形で示されれば、就労資格ごとの倍率が見え始める。「家族滞在」の申請段階で扶養者との身分関係は確認されているのだから、新たな情報の収集を要するものではない。個人を特定する情報を公表する必要もない。集計の単位を変えるだけである。

これにより、受け入れ見込み数を設定するとき、その数が本人の数なのか家族を含む人口なのかを区別できるようになる。学齢期の子どもがどの程度含まれうるかが概算できれば、日本語指導の体制や地域の受け入れ準備についても、一定の見通しをもって設計できる。

ここで改めて述べておきたい。問題は、「技人国」で働く人が家族を伴って来日することにあるのではない。また、家族を新たな選抜の対象とすべきだということでもない。家族帯同を制度として認める以上、その就労者の受け入れによって配偶者や子どもの移動も生じることを、受け入れ政策の側が最初から織り込んでおく必要がある、ということである。

外国人労働者を「何人受け入れるか」と考えるとき、就労資格を持つ本人の人数だけを数えるのでは足りない。問われるべきなのは、その受け入れを起点として何人が日本で生活することになるのかである。外国人労働者の受け入れは、労働者の受け入れであると同時に、世帯の受け入れでもある。家族帯同を認める以上、受け入れ政策の単位もまた、本人だけではなく、世帯へ広げて考える必要がある。


[1] 【論考】誰が「技人国」の仕事を確認するのか派遣元と派遣先に分散する責任
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=5015

【論考】在留資格「技人国」による雇用実態はなぜ見えにくいのか統計と現場のあいだ
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4991

【論考】急増する「技人国」での就労誰が、どのような経路で日本に来ているのか
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4977

[2] 出入国在留管理庁「在留外国人統計」(202512月末)
https://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_touroku.html

[3] 在留資格の一つで、「高度専門職」、「技人国」、「特定技能2号」等の在留資格をもって在留する者の扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動を行うことが認められる。

[4] 文部科学省「令和7年度日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について」
https://www.mext.go.jp/content/20260525-mxt_kyokoku-000049811_03.pdf

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