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【開催報告】「フューチャー・デザイン・ワークショップ 2020」

【開催報告】「フューチャー・デザイン・ワークショップ 2020」

February 13, 2020

2020年1月25-26日に、東京財団政策研究所と日本学術会議経済学委員会・環境学委員会合同フューチャー・デザイン分科会の主催、高知工科大学フューチャー・デザイン研究所、総合地球環境学研究所の共催で、「フューチャー・デザイン・ワークショップ 2020」が開催された。
2日間で120名の参加があり、自治体関係者、市民団体などの実務家や、経済学や医療・教育分野などの研究者といった多様なバックグラウンドを持つ登壇者による発表や、参加者による活発な質疑応答が行われた。

 当日のプログラムはこちら

 

「フューチャー・デザイン:実践の原則」

西條辰義(東京財団政策研究所上席研究員、日本学術会議、高知工科大学フューチャー・デザイン研究所、総合地球環境学研究所)

西條氏は社会性・相対性・近視性・楽観性というヒトの性質が将来世代を取り込まないシステムである民主主義や市場を形作ったと指摘した。そのうえで、ヒトの<将来可能性(今を犠牲にし、将来を良くする性質)>を生む社会の仕組みのデザインとその実践としてフューチャー・デザインを提唱し、一つの手法として将来仮想世代のアイデアと宇治市における実践例を紹介した。また、フューチャー・デザインを行うにあたって必要な公開性の原則や、実践デザインについて議論した。

 発表資料はこちら(PDF1.71MB)  動画はこちら(32min.)

 

「京都府版下水道場『令和 京(みやこ)道場』におけるフューチャー・デザインの実践」

伊東章裕(京都府 建設交通部 水環境対策課)

伊東氏は、京都府内の下水道職員により構成される「令和 京(みやこ)道場」において、フューチャー・デザインを導入し30年後の下水道事業について議論した実施例を紹介した。
その中で、参加者やファシリテーターへ事前のディスカッションの心得を提示するなど、フューチャー・デザインをうまく実践する工夫について考察した。

  発表資料はこちら(PDF3.06MB)  動画はこちら(29min.)

 

「仮想将来人になりきって」

岸本悠記(京都府 府民環境部 公営企画課)

岸本氏は、京都府営水道連絡協議会において、構成員の研修事業としてフューチャー・デザインを導入し、市町の水道事業に関する課題やその解決方法・将来の方向性についてディスカッションセッションを行った事例を紹介した。それらのセッションを行った結果から、今後のフューチャー・デザインを実施する際に将来世代へ視点を変えるためのアイテムの必要性を論じた。

  発表資料はこちら(PDF3.77MB)  動画はこちら(29min.)

 

「フューチャー・デザインを活用した総合計画の策定」

高橋雅明(矢巾町 企画財政課)

高橋氏は、岩手県矢巾町において実施された、自治体のすべての計画の基本となる行政運営の総合的な指針となる総合計画の作成においてフューチャー・デザインワークショップを活用した事例を紹介した。
また、フューチャー・デザインワークショップで作成された提案について、80%以上の提言が計画案の施策に反映されるなど、フューチャー・デザインから政策の反映について報告した。

  発表資料はこちら(PDF2.14MB)   動画はこちら(35min.)

 

「吹田市第3次環境基本計画の策定に向けて-フューチャー・デザインの実装」

楠本直樹(吹田市 環境政策室)

楠本氏は、吹田市第3次環境基本計画の策定において、環境基本計画の案を評価するという形で4回に渡り行われたフューチャー・デザインワークショップの概要を紹介した。また、実施した結果としてフューチャー・デザインが長期的に考えるべき課題について検討する枠組みとして有用であるとし、今後実装していく上で特に将来シナリオの研究が重要であると述べた。

 発表資料はこちら(PDF1.69MB)   動画はこちら(30min.)

 

「フューチャー・デザインの可能性と経産省における実践の計画」

分部亮(経済産業省)

分部氏は、経済産業省の「働き方」の検討にあたり、職員の生産性向上、業務のあり方、官民のあり方といった観点でチーム分けを行い、フューチャー・デザインワークショップにより議論を行っている。実際に職員から挙げられた意見や、今後の取り組みとしてフューチャー・デザインの政策立案への有効性の検証などを行う計画について報告した。

 発表資料はこちら(PDF2.24MB)   動画はこちら(27min.)

 

「松本市でのフューチャー・デザインのとりくみについて」

山口正裕(松本市 政策部 政策課)

山口氏は、松本市におけるフューチャー・デザインのとりくみとして、松本市役所新庁舎を考えるワークショップ及び中心市街地の交通を考えるワークショップについて紹介した。
また、今後の取り組みとしてフューチャー・デザインの構造化について議論した。

 発表資料はこちら(PDF3.12MB)   動画はこちら(30min.)

 

「官民学連携で取り組むフューチャー・デザイン ~市民協働への広がり~」

杉本隆之(宇治市 文化自治振興課)

杉本氏は、京都府宇治市における行政主導から市民協働へと移行を目指すために、地域コミュニティの将来を考えるためのシンポジウムやフューチャー・デザインワークショップを実施した実例について報告した。これらの取り組みの中で、市民の目線が取り入れられ、今後官民学の連携により持続可能な未来づくりの可能性について考察を行った。

 発表資料はこちら(PDF1.67MB)   動画はこちら(13min.)

 

「市民団体によるフューチャー・デザインの取り組み」

上島均・瀬戸真由美

(フューチャー・デザイン宇治)

上島氏・瀬戸氏は京都府宇治市におけるフューチャー・デザインの取り組みに参加し、それをきっかけとして発足した、住民が主体的に地域づくりを考えるきっかけの場である「フューチャー・デザイン宇治」について解説した。また、自身が実際にフューチャー・デザインワークショップ体験したことについて、どのような感想を持ったかを紹介した。

 発表資料はこちら(PDF1.61MB)   動画はこちら(24min.)

 

<FD+医療>

「岐阜飛騨医療圏における持続可能な周産期医療システム構築の試み」

森重健一郎(岐阜大学大学院医学系研究科)

森重氏は飛騨圏域における持続可能な周産期医療体制の構築に向け、施設・マンパワーの適正配置と効率的運用を目指した「飛騨モデル」を提案した。その具体化の手法として、フューチャー・デザインによるワークショップの構想を提示した。

 発表資料はこちら(PDF1.04MB)   動画はこちら(30min.)

 

<FD+医療>

「ひきこもりという現象からみる未来社会の課題と可能性」

加藤隆弘(九州大学病院精神科神経科)

加藤氏は、ひきこもりという現象についてその原因や支援策について解説を行った。
また、ひきこもり支援策について、過去を扱う「精神分析」を発展させて未来人からの視点によるフューチャー・デザインを取り入れる可能性について議論を行った。

 資料はこちら(九州大学プレスリリース 1九州大学プレスリリース 2 

 

<FD+医療>

「臨床医学分野におけるフューチャー・デザインの役割」

藤本千里(東京大学大学院医学系研究科・耳鼻咽喉科頭頸部外科)

※共同研究者 原圭史郎氏による代理発表

  

「世代間倫理における責務と互恵性」

廣光俊昭(財務総合政策研究所)

廣光氏は、世代間倫理について責務と互恵性という観点から考察を行った。世代間における責務は実施可能性に乏しく、互恵性により世代間倫理の立て直しをすること可能性について考察している。互恵性による場合、サミュエルソン以来の重複する世代間の協力問題として考察することが行われているが、協力の連鎖が途切れてしまうと、協力が崩壊してしまうなどの欠点がある。これに対し、自らの死後も人類が存在することに価値を見出すことで、これらの問題点が解決されることを示した。

 

「リーディングプログラムにおけるフューチャー・デザインゼミ活動」

フューチャー・デザインゼミ(田中徹、水口高翔他、慶應義塾大学博士課程教育リーディングプログラム)

慶應義塾大学博士課程教育リーディングプログラムにおける "フューチャー・デザインゼミ" について、文献輪講やリビングラボ実践活動など、ゼミの活動内容を紹介した。
また、フューチャー・デザインの従来手法の問題点として将来世代になることの難しさや合意形成の困難さなどを挙げ、現在開発中であるFantasy Future Designについてその内容とプレ実装の結果を提示した。

 発表資料はこちら(PDF2.67MB)   動画はこちら(29min.)

 

「フューチャー・デザインに基づく未来教育」

倉敷哲生(大阪大学大学院工学科ビジネスエンジニアリング専攻)

倉敷氏は、災害などのリスクコミュニケーションを持続的に行う仕組みとしてフューチャー・デザインを用いた防災ワークショップの様子を紹介した。
フューチャー・デザインが参加者の自助・共助に対する意識の向上に寄与する点や、フューチャー・デザインによる事業戦略のための演習事例等について紹介した。

 発表資料はこちら(PDF5.11MB)   動画はこちら(29min.)

 

“Future Design and Social Cohesion: Evidence from Nepal”

Raja Timilsina(高知工科大学フューチャー・デザイン研究所)

Mr. Timilsina presented the result of Intergenerational Sustainability Dilemma game conducted in Rural and Urban areas of Nepal. The experimental evidence showed that the mechanism called Intergenerational Accountability (IA) increases the likelihood that sustainable option is chosen.

 発表資料はこちら (PDF1.42MB)  動画はこちら(29min.)

 

“Intergenerational sustainability dilemma and a potential solution: Future ahead and back mechanism”

Shibly Shahirier(総合地球環境学研究所

Mr. Shahirier summarized three experimental studies related to social behavior and sustainability. First, he presented a piece of experimental evidence that modernization of competitive society may change the social preference so that competition is more preferred.
In the second experiment, he showed that the modernization of society threatens the intergenerational sustainability. In the third experiment, he demonstrated that future ahead and back mechanism can maintain intergenerational sustainability in highly competitive societies, in which each generation first consider the decision from the viewpoint of the next generation, and then consider the decision again from the original position.

 発表資料はこちら  (PDF1.45MB)  動画はこちら(25min.)

 

“How do individuals behave in intergenerational sustainability dilemma? A strategy-method experiment”

Mostafa Shahen(高知工科大学

Mr. Shahen presented an experimental study showing that future ahead and back mechanism can increase the sustainability in an intergenerational sustainability dilemma game. In addition, he showed that information about the effect to the future generation could increases the empathy.

 発表資料はこちら(PDF571KB)   動画はこちら(26min.)

 

「仮想将来人たちがアイデア発想能力を最大限に発揮して討議できるようになるための紙芝居作成の試み ~近畿地方のある自治体でのフューチャー・デザインの実践例を素材として~」

中川善典(高知工科大学)

中川氏は、持続可能性の問題は定式化が困難な問題であるとし、その上で仮想将来世代がどのように独創的な定式化を可能にするのかについての概念モデルを提示した。また、仮想将来人として討議したグループのダイナミクスを可視化する手法を提案し、近畿地方のある自治体における上水道に関する討議を分析したものを紹介した。

 発表資料はこちら(PDF848KB)   動画はこちら(30min.)

 

「リーディングプログラムでの『サイエンス・フィクションワークショップ』」

シンギュラリティゼミ(牧野司、石川祐希他、慶應義塾大学大学院博士課程リーディングプログラム)

シンギュラリティゼミにおいて行われた、技術的な制約を排し、未来を実現するために今何を必要かを考えるワークショップであるSci-Fi Workshopについて紹介した。また、実際にフードロス問題についての簡易的なSci-Fi Workshopを会場にて行った。

 発表資料はこちら(PDF1.34MB)   動画はこちら(27min.)

 

「2019年の実践を通じたFD手法開発と時間選好・リスク選好に及ぼす将来世代インパクト -松本市における実践と佐久穂町における準備作業」

井上信宏・武者忠彦(信州大学経法学部)

井上氏は、松本市における実践を通じて、ワークショップの設計や仮想将来世代に変貌させるためのマニュアル作り、ファシリテーターやグラフィッカーへのマニュアルなど、フューチャー・デザインの構造化について議論を行った。
また、武者氏は中小規模の自治体におけるフューチャー・デザイン導入について、自律的な政策形成のツールとしてフューチャー・デザインが活用できること、テーマの設定が課題になることを指摘した。

 発表資料はこちら(井上)(PDF2.57MB)   動画はこちら(34min.)

 発表資料はこちら(武者)(PDF5.88MB)

 

「フューチャー・デザインの政策応用の可能性と効果」

原圭史郎(東京財団政策研究所、日本学術会議、大阪大学大学院工学研究所)

原氏はこれまでのフューチャー・デザインの実践例をまとめ、分析結果から、フューチャー・デザインの応用により政策立案・ビジョン設計においても新たなイノベーションが生まれる可能性について議論を行った。
フューチャー・デザインを政策立案プロセスに組み込む仕組み作りや、フューチャー・デザインをより活用しやすくするツールの開発など今後の課題を述べた。

 発表資料はこちら(PDF2.34B)   動画はこちら(33min.)

 

「ニューロサイエンスを活用したフューチャー・デザイン研究」

青木隆太(首都大学東京)

青木氏は、脳機能イメージング(fMRI)により脳活動をモニターすることで、フューチャー・デザインがなぜ有効なのかを神経生物学的基盤から理解することの重要性を論じた。その具体例として、参加者にMRI装置の中で世代間持続可能性ジレンマゲームに取り組んでもらう実験を行い、「将来から現在を考える」という認知プロセスが他者の内的なこころの状態を推測する能力に関連する脳領域をより強く賦活させることを示唆する結果を得たことを報告した。

前年度実施「フューチャー・デザイン・ワークショップ 2019」の開催報告はこちら

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