【論考】仕事の資格か、在留の資格か-在留資格「介護」と「技人国」にみる専門性の証明 | 研究プログラム | 東京財団

東京財団

詳細検索

東京財団

【論考】仕事の資格か、在留の資格か-在留資格「介護」と「技人国」にみる専門性の証明
画像提供:Getty Images
  • Review

【論考】仕事の資格か、在留の資格か-在留資格「介護」と「技人国」にみる専門性の証明

October 13, 2026

【サマリー】

◆現状・課題

  • 「技人国」の専門性は入管が申請ごとに審査するが、在留資格「介護」の専門性は、厚生労働省が所管する介護福祉士の資格によって決まる。
  • 介護の仕事は資格がなくてもできる。外国人にとって介護福祉士の資格は、介護職としてキャリアを積むためだけでなく、日本で働き続け、家族を呼び寄せるための条件にもなっている。
  • そのため厚生労働省による資格制度の変更が、外国人の在留期間や家族帯同を左右している。

◆政策上の示唆

  • 介護福祉士の資格制度は、介護人材政策としてだけでなく、外国人の受け入れと定住に関する政策としても検討される必要がある。

1. はじめに

「専門的・技術的分野」の在留資格は、申請人の専門性をどのように確かめているのか。この分野で最も在留者数の多い「技術・人文知識・国際業務」(以下、「技人国」)には、申請人全員に共通して要求される資格や試験はない。申請人の学歴や実務経験と、予定される職務との関連が、申請ごとに個別に審査される。専門性の根拠は、書類の上で説明される経歴と職務の対応関係に置かれている。

これに対して在留資格「介護」は、介護福祉士として登録されていることを要件とする[1]。専門性の根拠は、出入国在留管理庁(以下、入管)の審査の外側で、厚生労働省が所管する国家資格制度によってあらかじめ規定されている。同じ専門的・技術的分野に位置づけられ、同じく家族帯同と在留期間の更新が認められる2つの在留資格は、専門性の確かめ方において対照的である。基準としては在留資格「介護」のほうが明確にみえる。では、その国家資格は何を確かめ、何を分けているのか。本稿では、在留資格「介護」の仕組みを「技人国」と対比しながら、この点を検討する。

2. 複数の入口、1つの出口

在留資格「介護」に至る主な入口は4つある(図1)。介護福祉士養成施設で学ぶ留学生、経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士候補者、技能実習生、そして特定技能1号の外国人である。それぞれ教育、二国間の経済連携、技能移転、人手不足分野の労働力確保という異なる目的の制度に位置づけられ、在留できる期間も、転職や家族帯同の扱いも異なる。2027年4月からは技能実習に代わって育成就労制度が始まり、そこから特定技能1号へ進む経路が設けられる。

 図1 外国人介護人材受入れの仕組み

 

 出所)厚生労働省HP「外国人介護人材受入れの仕組み」より引用
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001669132.pdf
*1 図内注1の「令和8年度までの卒業者」への「経過措置」は、2026年の法改正により「令和13年度までの卒業者」に延長されている(本文4節参照)。

 

在留資格「介護」は2017年9月に設けられた。当初の対象は、国内の介護福祉士養成施設を卒業して介護福祉士の資格を取得した者に限られていた。2020年4月にこの限定が外され、実務経験を経て介護福祉士国家試験に合格した者にも認められるようになった。これにより、4つのどの入り口を経由しても、最終的に介護福祉士として登録されれば在留資格「介護」へ変更できるようになった。それ以外の経路では、EPAの介護福祉士は、「特定活動」のままでも在留期間の更新と家族帯同が認められる[2]。一方で留学、技能実習、特定技能1号の資格を経由して日本で介護の仕事を在留期間の上限なく続けるためには、在留資格「介護」へ変更するしかない。

在留資格「介護」のこの制度設計は、他の分野と比べると特徴がはっきりする。建設や製造、外食などの分野では、特定技能1号で働く人が技能試験に合格するなどして特定技能2号に移れば、在留期間の更新回数に上限がなくなり、家族帯同も認められる[3]。しかし、介護分野には特定技能2号が設けられていない。専門的・技術的分野の在留資格「介護」がすでにあることが、その理由とされている[4]。長期在留への出口を、入国管理制度の内側にある技能試験ではなく、外側にある介護福祉士という国家資格に委ねている。これは介護分野に特有の設計である。特定技能1号から日本で介護の仕事を続けようとする人にとって、介護福祉士の資格取得は事実上の関門になる。

3. 資格は何を分けているのか

介護福祉士は、名称独占の国家資格である。資格を持たない者が介護福祉士を名乗ることはできないが、介護の業務に就くこと自体に資格は求められない。医師や看護師のように、資格がなければ一定の業務を行えない業務独占資格とは性格が異なる。もちろん、資格に職業上の意味がないわけではない。介護報酬の加算や一部の職務の要件、訪問系サービスへの従事などで、資格の有無は区別されている。ただし、介護の仕事そのものへの入口ではない。

国家資格を要件とする在留資格は、在留資格「介護」だけではない。在留資格「医療」は、医師、歯科医師、看護師、理学療法士など、「法律・会計業務」は、弁護士、公認会計士などの資格を持つ者が行う業務を対象とする。対象となる資格の性格は一様ではないが、入管法はこれらの在留資格の活動を、法律上資格を有する者が行うこととされている業務として定めている[5]。業務そのものが有資格者のものとされ、職業資格と従事する業務が直接結びついているのである。これに対して在留資格「介護」の活動は、介護福祉士の資格を有する者が介護または介護の指導を行う業務と定められている。限定されているのは人であり、介護という業務ではない。

実際、介護の現場では、資格を持たない特定技能や技能実習の外国人も、資格を持つ介護福祉士と同じ施設で、利用者の身体介護や生活支援を担っている。日本人であれば、介護福祉士を取得していなくても介護職として働き続けることができる。しかし、特定技能1号の外国人は、資格がなくても介護の仕事に就ける一方、資格がなければ原則として通算5年を超えて日本にとどまれず、その間、配偶者や子どもの帯同も原則として認められない。介護福祉士として登録されて在留資格「介護」に移れば、在留期間を更新しながら働き、家族を「家族滞在」で呼び寄せることができる。

同じ施設で同種の業務を続けていても、介護福祉士の資格を取得する前と後では、日本に在留できる期間と、家族と暮らせるかどうかが変わる。誰と、どのくらいの期間、日本で暮らせるのか。この点で在留資格「介護」は、「技人国」だけでなく、同じく国家資格を要件とする「医療」や「法律・会計業務」とも異なる。外国人介護人材にとって介護福祉士資格は、仕事に就く条件ではなく、日本に住み続ける条件として機能している。

4. 資格制度が在留を決める

介護福祉士の資格が日本に住み続ける条件として機能しているのであれば、誰が住み続けられるかは、入管行政の枠外で決まることになる。なぜならこの資格制度を設計しているのは、介護人材の確保と資格の質を所管する厚生労働行政だからである[6]。近年の2つの制度変更は、そのことをよく示している。

1つは、養成施設ルートの経過措置である。養成施設の卒業者にも国家試験の合格を求める法改正はすでに行われているが、その完全な実施は繰り返し先送りされてきた。経過措置のもとでは、卒業者は試験に合格していなくても、卒業後5年間は介護福祉士として登録できる。その間に合格するか、5年間続けて介護の業務に従事すれば、6年目以降も資格を保持できる。この経過措置による登録者は、2025年4月時点で5,774人、うち外国人が5,103人と、大半は外国人であった[7]。

2026年の法改正は、この経過措置を2031年度の卒業者まで延長する一方、業務への従事によって資格を保持し続けられる仕組みは2026年度の卒業者で終えることとした[8]。2027年度以降の卒業者は、卒業後5年以内に国家試験に合格しなければ、介護福祉士の資格を失う。資格を失えば、在留資格「介護」の更新にも影響する。この改正は介護人材の確保と資格の質をめぐる議論のなかで決められたが、外国人の卒業者にとっては、5年以内に合格できるか否かにより日本で暮らし続けられるかどうかが決まる。

入管の在留資格申請の手続きで確認されるのは、介護福祉士として登録されているかどうかである。しかし同じ登録でも、国家試験合格者の登録と、経過措置による登録とでは、将来も維持される条件が違う。経過措置による登録ではさらに、卒業年度によって、5年間働き続ければ維持される登録と、5年以内に合格しなければ失われる登録に分かれる。外から見れば1つの明確な基準の内側に、条件の異なる登録が含まれている。

もう1つは、国家試験へのパート合格制度の導入である[9]。2026年1月の試験から、合格したパートの受験が一定期間免除されるようになり、これに合わせて、特定技能1号で介護に従事する人が、通算5年に達する直前の試験で一定の成績を収めた場合には、不合格でも最長1年、在留を続けて再受験できる措置が設けられた[10]。試験制度の変更が、在留できる期間の延長に直接結びついている。

いずれも、出発点は厚生労働省が所管する資格制度と介護人材政策の議論である。だが、その効果は在留期間、家族帯同、定住の可能性に及ぶ。資格制度の変更が、事実上、外国人の受け入れと定住に関する政策の変更に結びついているのである。

5. 2つの「専門的・技術的分野」の在留資格

ここまで見てきたように、「技人国」と在留資格「介護」の仕組みは、専門性の確認方法と、その基準を決めている場において異なっている。「技人国」では、学歴や実務経験と職務との関連が申請ごとに審査され、専門性は就く仕事の内容によって説明される。在留資格「介護」では、国家資格の登録という一律の基準が用いられる。

基準を決めている場も異なる。「技人国」の基準は、入管行政のなかで定められ、運用される。在留資格「介護」では、入管は申請人が介護福祉士として登録されているかを確認するが、その人の専門性を自ら審査するわけではない。専門性の認定は厚生労働省の資格制度に委ねられ、入管はその結果を在留審査に用いている。

「技人国」をめぐっては、職務の実態が確認されにくいことが課題とされてきた。飲食店や宿泊施設などでは、通訳、企画、顧客対応と、調理や清掃などの業務との境界が外部から見えにくい。そのため、日本語能力の確認など、外形的な基準を加える見直しが進んでいる。これに対して在留資格「介護」は、国家資格という外形的な基準を先に備えた在留資格である。ただし、その基準が確かめているのは、介護の仕事に就けるかどうかというより、日本に住み続け、家族と暮らすことを誰に認めるかである。

「技人国」は専門性と実際の職務との対応を確認しにくく、在留資格「介護」は職務が同じでも資格の有無によって在留の条件が分かれる。両者は異なる形で、「専門的・技術的分野」という制度上の区分と実際の仕事とのずれを抱えている。介護についていえば、介護福祉士資格は介護職としての専門性を示す一方、その有無によって実際の業務が明確に分かれるわけではない。それにもかかわらず、資格制度の変更は、外国人が日本で暮らし続けられるかどうかを左右する。介護福祉士の資格制度は、介護人材政策としてだけでなく、外国人の受け入れと定住に関する政策としても検討される必要がある。


[1] 出入国在留管理庁 在留資格「介護」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/nursingcare.html

[2] 出入国在留管理庁「在留資格「特定活動」(EPA看護師・EPA介護福祉士の家族)」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities05.html

[3] 出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/faq.html

[4] 出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)」https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/03_00067.html

[5] 出入国在留管理庁「在留資格一覧表 二の表(就労資格、上陸許可基準の適用あり)」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/qaq5.html

[6] 厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28131.html

[7] 厚生労働省 社会・援護局「介護福祉士養成施設卒業者に対する国家試験義務付けの経過措置について②」p28
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001580746.pdf

[8] 厚生労働省社会保障審議会介護保険部会(第135回、令和8年6月29日)「社会福祉法等の一部を改正する法律について(報告)」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001715733.pdf

[9] 公益財団法人社会福祉振興・試験センター 介護福祉士国家試験「パート合格(合格パートの受験免除)のお知らせ」https://www.sssc.or.jp/kaigo/info/info_part.html

[10] 厚生労働省「介護福祉士国家試験のパート合格(合格パートの受験免除)による介護分野で 「特定技能1号」の在留資格をもって本邦に在留する外国人の通算在留期間の延長に関する措置について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/kaigo.tokuteiginou.extension

注目コンテンツ

BY THIS AUTHOR

この研究者のコンテンツ

0%

PROJECT-RELATED CONTENT

この研究者が関わるプロジェクトのコンテンツ

VIEW MORE

INQUIRIES

お問合せ

取材のお申込みやお問合せは
こちらのフォームより送信してください。

お問合せフォーム