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【論考】「家族滞在」で育った若者の就職と在留資格変更-職場に紐づけるか、親に紐づけるか
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【論考】「家族滞在」で育った若者の就職と在留資格変更-職場に紐づけるか、親に紐づけるか

October 6, 2026

【サマリー】

・「家族滞在」で育った若者の高校卒業後の在留資格は、日本での就学歴によって分かれる。

・学校卒業後の就労経路は、家族帯同を認めた当初から設計されていたわけではなく、子どもたちが成長し、高校卒業や就職を迎えるなかで、段階的に整備されてきた。

・在留資格変更の審査だけでは、若者が安定した仕事へつながっているかは分からない。

・労働者とその家族の受け入れを把握するためにも、公表する統計の見直しや、学校や仲介者が就職に果たす役割を明らかにすることが必要である。

1. はじめに

前稿では、日本語指導が必要な公立高校生の卒業後の進路を取り上げた[1] 。就職した者のうち「非正規・一時的就職」に就いた者の割合は35.3%で、公立高校生全体の2.6%を大きく上回る。この若者たちは高校を卒業した瞬間に、学校教育行政による把握の対象から外れてしまうことを論じた。しかし、「家族滞在」の在留資格で育った生徒は、卒業の時点で出入国在留管理庁(以下「入管庁」)の審査を受ける。高校を卒業して週28時間を超えて働くには、就労可能な在留資格へ変更しなければならないからである。

前稿では、日本語指導が必要かどうかで生徒を区分した統計を用いたが、この統計からはその中に「家族滞在」の生徒がどの程度含まれているのかは分からない。本稿は、日本語指導が必要な生徒に非正規・一時的な就職が多い理由を説明するのではなく、在留資格という別の区分から、高校卒業時に行われる審査の中身を検討する。

2. 高校卒業と在留資格の変更

「家族滞在」は、「技術・人文知識・国際業務」(以下「技人国」)などの在留資格をもつ者の扶養を受ける配偶者や子どものための在留資格である。親が「技人国」で働いていても、子どもが同じ資格へ移行できるわけではない。「技人国」は原則として大学卒業や日本の専門学校の修了、または一定年数の実務経験を要件とするため、高校を卒業してそのまま就職する者は、通常その要件を満たさない。そこで出入国在留管理庁(以下「入管庁」)は、「家族滞在」で育ち、日本の高校を卒業後に就職する若者について、一定の要件の下で「定住者」または就労可能な「特定活動」への変更を認めている[2]。いずれの在留資格も、入国時に18歳未満であったことを要件とする。2つの在留資格に至る経路を分けるのは、日本での就学歴である(図1)。日本の小学校と中学校の双方を卒業し、日本の高校を卒業した者は、「定住者」への変更対象となる。小学校と中学校の双方を卒業していない者は、まず「特定活動」への変更対象となる。高校へ途中から編入した場合には、日本語能力試験N2程度の日本語能力も求められる。

図1 「家族滞在」で育った若者の高校卒業後の在留資格変更

 

どちらの資格でも、就ける職種は特定されていない。「定住者」には就労の制限がなく、「特定活動」で認められるのも、風俗営業等を除き、日本の公私の機関に雇用されて行う活動全般である[3]。2つの経路の違いは、働き方ではなく親との関係にある。「特定活動」への変更には、「家族滞在」で在留していたときの扶養者が身元保証人として日本に在留していることが求められ、在留期間の更新時にも、その扶養者を保証人とする身元保証書が求められる。さらに、この「特定活動」で認められる活動は、ある在留資格をもって在留する者の「子が行う」活動として定義されている。本人が就職し、自分の収入で暮らし始めた後も、制度上は親の在留に結びつけられた「子」であり続ける。「定住者」の申請にも身元保証書は必要だが、従来の扶養者が日本に在留していることまでは求められていない。

この分岐は固定されたものではない。就労可能な「特定活動」などで5年以上在留し、独立して生計を維持しているなどの要件を満たせば、「定住者」へ変更する経路が設けられている[4]。それでも、同じ「家族滞在」で育ち、同じ日本の高校を卒業して就職する若者のあいだで、出発点は分かれる。出発点を分けているのは現在の学力や就職先ではなく、いつ来日し、どの段階から日本の学校に通ったかという、本人には後から変えられない過去の経路である。

3. 卒業後の在留資格はいつ整備されたのか

この経路は、家族帯同を認めた時点から用意されていたものではない。「家族滞在」で育った高校卒業者について「定住者」への変更を認める取り扱いが高校に周知されたのは2017年である。2018年には「特定活動」の経路が加わった。当初、「定住者」への変更は、小学校4年生までに入国した者に限られていた[5]。2020年に取り扱いが改められ[6]、現在は日本の小学校と中学校を卒業していれば対象となる。

「特定活動」の中身も後から改められた。就職する若者に付与される資格でありながら、指定される活動は2023年まで「日常的な活動」とされていた。就労を前提とした趣旨に合わせて、「雇用されて行う報酬を受ける活動」へと見直されたのは2023年10月である[7]。「特定活動」から「定住者」へ変更する際の要件が入管庁のHPに明示されたのは、2024年7月であった[8]。

これらの通知はいずれも、入管庁から文部科学省を通じた学校への周知依頼と、ホームページ上の案内という形で行われてきた。外国人の家族帯同を認めれば、その子どもが日本の学校を卒業して働き始めることは当然生じる。しかし制度の側は、子どもたちが実際に高校を卒業し始めてから、その都度、経路を整えてきたのである。

4. 誰が学校から仕事へつないでいるのか

在留資格変更の審査で確認されるのは、日本での就学歴、入国時の年齢、週28時間を超える就労先が内定を含めて決まっていること、住居地の届出などの公的義務を履行していること、そして「特定活動」の場合は扶養者が保証人として在留していることである。提出書類には雇用契約書や内定通知書が含まれ、雇用期間、雇用形態、給与の記載が求められる。

ただし、雇用形態は記載されるものの、正規雇用であることは要件ではない。その就職先を誰が紹介したのか、学校の斡旋によるものか、親族や同国人、職業紹介事業者、派遣会社が介在したのかも問われない。また、審査の対象となるのは週28時間を超えて働く者だけである。「家族滞在」のまま資格外活動の範囲内で働き続ける者は、この場面に現れない。「家族滞在」から「定住者」「特定活動」への変更許可件数も公表されていない。

学校の側はどうか。文部科学省は入管庁の依頼を受け、取り扱いが変わるたびに、教育委員会を通じて高校への周知を求めてきた。しかし、通知が出ていることと、それが各学校の進路指導の中でどう扱われているかは別である。教員が生徒の在留資格をいつ確認し、変更手続きについて誰が本人や家族を支えているのかは、通知や公表統計からは分からない。

前稿で見たように、日本の高卒就職では学校が生徒と企業のあいだに立ち、多くの生徒を卒業と同時に安定した雇用へ送り出している。「家族滞在」の生徒にとっては、そこにもう1つの条件が重なる。就職先が決まっていることが、卒業後に日本で働き続けるための条件になっている。この条件が就職先の選び方や最初の雇用形態にどう作用しているのかを確かめる手段が、現在の公表資料にはない。

5. 家族とともに受け入れた、その先をどう見るか

前稿では、この若者たちは卒業した瞬間に制度の視野から外れると書いた。「家族滞在」で育った若者については、こう言い直す必要がある。彼らは卒業の時点で一度だけ、国に見られている。そこで確認されるのは、就職先があるかどうかと、「特定活動」の場合は親が日本にいるかどうかである。どのような経緯でその仕事に就いたのか、その仕事が生活の基盤になるのかは、確認の対象になっていない。

外国人労働者の受け入れでは、働く本人の学歴や職種が審査される。政策の議論も、誰を何人受け入れるかに集まりやすい。しかし、その子どもは親とは別の経路で日本の労働市場に入っていく。受け入れ政策が見ている範囲は、親の世代で途切れている。家族とともに受け入れるという判断の帰結は、その受け入れ政策の先にある。

確かめるための手がかりは、すでに行政の手元にある。文部科学省の進路調査に在留資格の項目を加えること、入管庁が変更許可の件数と、審査で把握している雇用形態を集計して公表すること。いずれも新たな制度設計を必要としない。そのうえで、学校の進路指導が在留資格変更にどこまで関わっているのか、学校を通じて就職しない場合に誰が仕事との接続を担っているのかを、学校と本人への調査によって明らかにしていく必要がある。


[1] 【論考】外国人を家族とともに受け入れるということ―外国にルーツをもつ若者の高校卒業と就職
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=5036

[2] 出入国在留管理庁「「家族滞在」の在留資格をもって在留し、高等学校卒業後に日本での就労を希望する方へ」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00122.html

[3] 出入国在留管理庁「高等学校等卒業後に本邦で就労する者の取扱いについて(依頼)」(令和5年10月11日付)
https://www.mext.go.jp/content/20231026-mxt_kyousei01-000006261_01.pdf

[4] 出入国在留管理庁「高等学校卒業後に日本での就労を考えている外国籍を有する方へ」
https://www.moj.go.jp/isa/content/930003573.pdf

[5] 文部科学省「高等学校卒業後に本邦で就職を希望する外国籍を有する者の在留資格の取扱いの変更について(依頼)」(平成30年2月28日付)https://www.mext.go.jp/content/20200428-mxt_kyousei01-000006261_02.pdf

[6] 文部科学省「高等学校等卒業後に本邦で就職を希望する外国籍を有する者の在留資格の取扱いの変更について(依頼)」(令和2年3月26日付) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/004/1415154_00001.htm

[7] 前掲注3

[8] 文部科学省「「家族滞在」の在留資格をもって在留し、高等学校卒業後に日本での就労を希望する方へ」(令和6年7月24日更新)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00122.html

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