【論考】家族とともに日本で暮らす――在留資格「介護」がもたらす定住への道筋 | 研究プログラム | 東京財団

東京財団

詳細検索

東京財団

【論考】家族とともに日本で暮らす――在留資格「介護」がもたらす定住への道筋
画像提供:Getty Images
  • Review

【論考】家族とともに日本で暮らす――在留資格「介護」がもたらす定住への道筋

October 30, 2026

【サマリー】

◆現状・課題

・介護分野では、介護福祉士の資格取得と在留資格「介護」への移行が、家族を呼び寄せ、定住へ進むための明確な経路となっている。しかし、多くの外国人は、介護福祉士の資格取得までの数年間、家族と離れて働き、学ぶことになる。

・介護福祉士の資格取得によって職場を選ぶ自由は広がるが、介護職の賃金水準や修学資金の返済免除条件などが、家族との生活や転職の選択肢を制約している。

・家族を呼び寄せた後も、本人が介護の仕事を続けることが家族の在留の基盤となる。永住許可はこの不安定さを軽減するが、「技能実習」と「特定技能1号」による在留期間は、原則として永住許可に必要な「就労資格等での在留期間5年」に算入されない。

◆政策上の示唆

・外国人介護人材の受け入れは、来日人数だけでなく、資格取得を経て、家族とともに暮らし続けられているかによって評価する必要がある。国家試験の合格に向けた支援だけではなく、資格取得後の賃金・労働条件や家族の生活を視野に入れた対応が求められる。

1.はじめに

在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下、「技人国」)によりわが国に在留しようとする外国人は、在留資格を得て、家族を扶養できる収入を示せば、入国後比較的早い段階で配偶者や子どもを呼び寄せ、日本で暮らすことができる。在留資格「介護」も、「技人国」と同じ専門的・技術的分野の在留資格であり、家族帯同が認められている[1]。しかし、介護現場で働く外国人の多くは、はじめから家族と一緒に暮らせるわけではない。「特定技能1号」や「技能実習」では、家族の帯同は原則として認められていない。介護福祉士の資格を取得し、在留資格「介護」に移ってはじめて、家族を呼び寄せることができる。

配偶者や子どもを母国に残して来日した者は、その間、家族と離れて働き、学ぶことになる。彼らが早く家族と一緒に暮らしたいと考えるのは、自然なことである。前稿では、介護福祉士の資格が、外国人にとっては仕事に就く条件ではなく、日本に住み続ける条件として機能していることを指摘した[2]。本稿では、その資格が、家族を呼び寄せるための前提にもなっていることについて論じる。以下で説明するとおり、在留資格「介護」の取得には数年を要する。しかし、どのような条件を満たせば家族を呼び寄せ、その先の定住に進めるのかが、あらかじめ明確に示された経路でもある。

2.家族と離れて働く年数

介護現場で働く外国人が家族と暮らせるようになるまでの年数は、来日の経路によって異なる。「特定技能1号」で来日した者は、3年以上の実務経験を積み、実務者研修を修了したうえで、年に1回行われる国家試験に合格しなければならない。介護福祉士の資格を取得して在留資格「介護」に移り、家族を呼び寄せられるのは、早くても来日から3年余り後である。「特定技能1号」で在留できるのは原則として通算5年、一定の要件を満たした場合でも6年までであり、その間に合格できなければ、在留はそこで終わる。「技能実習」を経て「特定技能1号」に移った者は、実習時の在留期間がその前に加わる。経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士候補者も同様で、国家試験に合格するまでは家族を帯同できない。

介護福祉士養成施設で学ぶ留学生の大半は、日本国内の日本語学校を経て入学しており、日本語学校で1年、養成施設で2年の計3年が、資格の取得までの標準的な年数である[3]。在留資格「留学」でも制度上は家族の帯同が可能だが、学びながら家族を扶養できる収入を示すことは容易ではない。養成施設の留学生には、公的な修学資金の貸付や、就労予定先の介護施設による奨学金があり、日本語学校に在籍する段階から支援を受けられる場合もある。資格を取得して一定期間介護の仕事を続ければ、返済は免除される。いずれの経路でも、家族を呼び寄せる道が開くのは、介護福祉士の資格を取得してからである。

3.家族を日本に呼び寄せる

在留資格「介護」に移ると、配偶者と子どもを「家族滞在」の在留資格で呼び寄せることができる。介護福祉士の資格の取得は、単身で働く生活から、家族と暮らす生活への入口になる。

「家族滞在」は、扶養を受けて生活する配偶者と子どものための在留資格である。申請にあたっては、扶養する本人の職業や収入、納税の状況を示す資料の提出が求められ、家族を扶養できるかどうかが審査される。この点は「技人国」で働く者が家族を呼び寄せる場合と変わらない。また、「家族滞在」の配偶者は、原則として就労が認められていない。「資格外活動許可」を得た場合でも、働けるのは原則として週28時間以内であり、家族の生活は、本人の収入を基礎に組み立てることになる。

介護福祉士に資格手当を支給する施設もあるが、介護職の賃金水準で、1人の収入によって家族の住居費や子どもの養育費まで賄うことは容易ではない。家族を呼び寄せられるかどうかは、どれだけの収入を得られる職場で働いているかに左右される。

家族を呼び寄せた後には、住居の確保、子どもの保育や就学、配偶者の仕事探しなど、単身で働いていた時期にはなかった課題が生じる。来日した子どもが進学や就職の時期を迎えるときに何が起こるかについては、別稿で述べた[4]。 

4.介護福祉士の資格によって手に入れられる選択肢

介護福祉士の資格を取得する前は、どの経路で来日した人も、在留の期限と、特定の受け入れ先との結びつきのもとで働き、学んでいる。「技能実習」では、原則として実習先を変えることができない。EPAによる介護福祉士候補者は、あらかじめ決められた受け入れ機関で4年間、介護の業務に従事しながら合格を目指す仕組みであり、原則として転職はできない[5]。「特定技能1号」では介護分野のなかでの転職が認められているが、在留は受け入れ機関を指定して許可されるため、転職をするには在留資格の変更許可を受け直さなければならない[6]。

養成施設で学ぶ留学生も、修学資金や奨学金を通じて、将来の就労先となる地域や施設とあらかじめ結びついている。いずれの場合も、期限までに介護福祉士の資格を取得できなければ在留は終わるため、賃金や勤務条件に不満があっても、その改善を受け入れ先に求めにくい。

介護福祉士の資格を取得すると、こうした制約の多くから解放される。介護福祉士の登録は本人のものであり、勤務先を変えても失われない。在留資格「介護」は特定の施設で働くことを条件としておらず、勤務先を変えるときも届出で足りる。いつでも他の職場に移れるため、在職中の職場で賃金や勤務時間の改善を求める動機ともなる。介護福祉士の配置は介護報酬の加算で評価されるため、施設側も有資格者を確保したいと考える。資格を取得した者は、家族で暮らしていける賃金を得られる職場を、在留期限を気にせずに選び直すことができる。

もっとも、この選択肢には限界がある。介護職の賃金は介護報酬に制約されており、職場を変えても大きく変わるとは限らない。修学資金や奨学金を受けた人は、介護福祉士の資格取得後も、返済が免除されるまでの一定期間、その地域や施設で働き続けることになる。さらに、在留資格「介護」で認められているのは介護の業務であり、転職先は介護の仕事に限られる。

5.永住許可が変えるもの

在留資格「介護」に移り、家族を呼び寄せても、その暮らしにはなお不確かさが残る。在留資格「介護」は、介護福祉士として介護の業務に従事する活動に対して認められている。病気やけが、勤務先の閉鎖などによって介護の仕事を離れ、その状態が長く続けば、在留資格を維持できなくなる。そして、配偶者と子どもの「家族滞在」の在留資格は、本人の在留を前提にしている。本人が在留資格を失えば、家族も日本にとどまることができない。家族全員の暮らしが、本人1人の仕事に支えられている。

一方で、在留資格「永住者」には在留期間の定めがなく、更新の審査を受ける必要がない。活動にも制限がないため、介護以外の仕事に移ったり、一時的に仕事を離れたりしても、在留資格を失うことはない。家族にも、それぞれ審査を受けたうえで、永住許可や就労に制限のない在留資格を得る道が開ける。これらの資格の取得が認められれば、配偶者は時間の制限なく働くことができ、子どもも、進学や就職の際に在留資格の心配をせずに済むようになる。

在留資格「介護」への移行は、この永住許可への道の起点でもある。永住許可では、原則として10年以上日本に在留し、そのうち5年以上は就労資格などで在留していることが求められるが、「技能実習」と「特定技能1号」による在留期間は、この5年に算入されない。「特定技能1号」で5年働いてから在留資格「介護」に移った人は、そこからさらに5年、来日から通算10年で、この条件が整う。永住との関係で数えられるのは、介護福祉士の資格を取得した後の年数だけである。もっとも、この条件が整えば許可されるというわけではない。永住許可の要件とその見直しについては、稿を改めて論じる。

6.おわりに

在留資格「介護」に至る道は長い。家族と暮らせるようになるまでに、少なくても3年余りを要し、その間に介護福祉士の国家試験に合格できなければ、在留はいずれ終わる。しかし、この道には、基準が明確であるという長所がある。介護の現場で働き、介護福祉士の資格を取得すれば、家族を呼び寄せることができ、働き続ければ永住への条件が整っていく。何を満たせばよいかが、あらかじめ誰にでも分かる。日本で働き、家族と暮らし、定住することを望む人にとって、正面から進むことのできる道である。

2026年の法改正にあたり、国会の附帯決議は、養成施設の留学生や、「特定技能」などの在留資格で働きながら介護福祉士の資格取得を目指す外国人に対し、国家試験の合格に向けた支援を充実させるよう政府に求めた[7]。外国人介護人材の受け入れは、来日者数だけでなく、何人がこの道を進み、家族とともに暮らし続けているかによって評価される必要がある。


[1] 出入国在留管理庁 在留資格「家族滞在」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/dependent.html

[2] 東京財団Review「仕事の資格か、在留の資格か-在留資格「介護」と「技人国」にみる専門性の証明」

https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=5074

[3] 公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会「介護福祉士養成施設における外国人留学生受入数の推移等」

https://kaiyokyo.net/news/36793f73d93f168ef7d30f0e0363becbedfb11d7.pdf

[4] 東京財団Review「外国人を家族とともに受け入れるということ-外国にルーツを持つ若者の高校卒業と就職」

https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=5036

[5] 公益社団法人国際厚生事業団「EPA介護福祉士候補者受入れについて」https://jicwels.or.jp/?page_id=62230

[6] 厚生労働省「特定技能制度に関するQ&A」(Q13、Q42)

https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/faq.html

[7] 厚生労働省老健局「社会福祉法等の一部を改正する法律について(報告)」社会保障審議会介護保険部会(第135回)資料1、令和8年6月29日

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001715733.pdf

注目コンテンツ

BY THIS AUTHOR

この研究者のコンテンツ

0%

PROJECT-RELATED CONTENT

この研究者が関わるプロジェクトのコンテンツ

VIEW MORE

INQUIRIES

お問合せ

取材のお申込みやお問合せは
こちらのフォームより送信してください。

お問合せフォーム