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【論考】なぜ「給食」だけ、外国人受け入れを再開するのか――外食業の受け入れ上限は変えず、「給食」を別の枠へ移す
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【論考】なぜ「給食」だけ、外国人受け入れを再開するのか――外食業の受け入れ上限は変えず、「給食」を別の枠へ移す

November 6, 2026

【サマリー】

◆現状・課題

・政府は、外食業の外国人受け入れ停止を維持しつつ、給食業務を外食業から飲食料品製造業の枠へ移す案を示した。上限の拡大ではなく分野の変更による対応である。

・給食分野の人手不足は、医療・福祉施設などの利用者の生活に直結する。国内人材の確保や機械化に制約があるなか、新規受け入れの停止は、毎日の食事を支える担い手の確保をさらに難しくする。

・緊急措置だけでは、継続的な人材確保の道筋は定まらない。2029年度以降、「給食」をどの分野に位置づけ、必要人数をどう算定するかは、先送りされている。

◆政策上の示唆

・生活に不可欠な給食の担い手を継続して確保するため、現場の採用・省力化の限界を踏まえた受け入れ見込数の算定と、安定した受け入れ経路の設計が必要である。

1.はじめに

病院や介護施設で食事(給食)を作る人材が足りず、介護現場で日々の療養や生活を安心して続けられるかどうかという状況になっている。日本で働く外国人の在留資格「特定技能」で新規受け入れが停止となった外食業をめぐり、政府は2026年10月19日、特定技能制度などに関する有識者会議で、外食業分野に含まれる医療・福祉施設などの給食業務を、飲食料品製造業分野へ移して受け入れる案を示した。対象には学校給食も含まれる。2027年度の新規申請分からの実施を予定する一方、一般の飲食店などについては今年4月からの新規受け入れ停止を維持する[1]。

病院の厨房で食事を作る仕事そのものは、受け入れ分野の名称が変わっても変わらない。今回変えるのは、給食という仕事をどの分野の人数枠に数えるかである。外食業の枠を広げるのではなく、給食分野を別の受け入れ枠へ移す。病院や介護施設での給食を止めないために必要な対応ではあるが、なぜこの方法を採用したのだろうか。

2.国内人材確保はどこまで見込めるのか

在留資格「特定技能1号」における外食業分野での受け入れ停止は、在留者数が上限の5万人を超えると見込まれたためである。2026年3月27日付けの政府公表資料では、2月末の在留者数は約4万6,000人に達し、4月13日以降に受理する在留資格認定証明書交付申請を不交付とし、同分野への在留資格変更も原則不許可とする方針が示された。ただし、在留期間更新は通常どおり審査し、すでに外食業分野の「特定技能1号」で在留する者の転職等に伴う申請も通常どおり審査すると明記されている[2]。

受け入れ見込数は、将来の人手不足から、生産性向上や国内人材確保によって補える人数を差し引いて算定している。2026年10月19日付の農林水産省公表資料では、2025年の国内人材確保について、想定がプラス1万7,200人だったのに対し、実績として示された値はマイナス5万人だった。特定技能外国人は、想定の2万8,000人に対して4万4,000人となっている。市場規模はほぼ想定どおりで、生産性向上は想定を上回ったという検証を踏まえ、本資料では、「国内人材確保の取組が十分だったかには議論の余地がある」としている[3]。

この国内人材確保の数値は、事業者の採用活動を調べて積み上げた人数ではない。総就業者数など、他の項目を置いた後の差分から求めた推計であり、資料も推測として説明している。また、「国内人材」という算定上の区分を、そのまま日本国籍者の人数と読み替えるべきではない。数字から、外食業者が日本人を集める努力を怠ったとまでは言えない。それでも、国内人材の確保を前提に設定した枠に、外国人の在留者数が迫り、受け入れが止まったことは確かである。国内の働き手を集め、処遇や生産性を改善することを求めるだけでは、現在の欠員は埋まらない。改善までの間も誰かが厨房に立たなければならない。給食を別分野へ移す案は、この切迫した状況に応えるために出てきたといえる。

3.毎日3食、余裕のない現場

脚注1で示した政府公表資料には、給食分野の採用難を示す数字が提示されている。厚生労働省「職業安定業務統計」の2026年5月の有効求人倍率は、飲食物調理従事者が2.15倍であるのに対し、給食等調理員(学校給食除く)は7.37倍だった[4]。調理分野全体でも採用が難しいなか、給食分野ではさらに人が集まりにくい。同資料は、休日を含む1日3食の提供、早朝や遅い時間帯の勤務、厳しい衛生管理、地方勤務などの事情を挙げている。患者ごとに異なる食事を用意するため、汎用的な食品機械を導入しにくい。病院の厨房を借りて営業する事業者も多く、生産性向上の取り組みには限界があるという。

省力化による改善は必要である。しかし、その効果をどこまで見込めるかは、現場の条件によって違う。政府自身の資料が、給食分野では機械化や採用に制約があると説明している。一般的な生産性向上策を示すだけでは、現場の欠員を埋める答えにならない。入院患者や高齢者施設の利用者は、移動や自身での調理が困難で給食が不可欠な場合がある。給食分野の人手不足は、事業者の売り上げや経営の問題にとどまらず、施設で療養し、暮らす人の食生活に直接及ぶ。そこで必要なのは、定員を満たす職場になることだけではない。毎日決まった時間に、必要な食事を利用者に提供できることが必要である。

今回の受け入れ停止が、それ以前からの人手不足を悪化させたわけではない。ただ、採用経路を狭めれば、人手不足を補う手段は減る。すでに外国人が担っている仕事で新たな受け入れを止めると、雇用企業だけでなく、施設利用者にも影響がでてくるのである。

4.介護分野は内訳を変え、給食分野は業種を変える

給食分野を飲食料品製造業へ移す理由として、政府は業務実態を挙げている。接客のないセントラルキッチンなどは、すでに同分野で受け入れるという運用が行われている。医療・福祉施設の給食事業所の業務実態を精査したところ、接客の比率が低い事業所が多かったという[5]。つまり、単に人数枠の都合だけで、特定の業務分野を他業種に移動させているわけではない。しかし、今回の案では、外食業と飲食料品製造業それぞれの受け入れ見込数は変えていない。外食業の上限はそのままにして、給食分野を飲食料品製造業に移行させる。業務実態に沿った分類の見直しが、人手を確保するための緊急対応にもなっている。

2016年10月19日に開催された「第15回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」では、介護分野において、育成就労の受け入れ見込数を2万人減らし、「特定技能1号」のそれを2万人増やす案が示された。介護分野においても、受け入れ人数の上限は変えず、内訳を変える手法が採られている。同会議の「資料3-1」には、「需要が当初想定よりも著しく高いなど変更に相当の必要性があり」、「外国人等に著しい不利益が生じない」などの条件の下で、例外的に配分を変更できるという考え方が示されている[6]。

外食業においても、特定技能1号は5万人、育成就労は2027年度から2年間で5,300人という受け入れ見込み数の内訳が示されている[7]。今回の会議の資料から確認できるのは、介護分野には配分変更が提案され、外食業には給食の分野変更が提案されたことである。報道によると、翌20日、山下貴司法務大臣は閣議後の記者会見で、「2028年度末までの特定技能1号と育成就労の上限123万人について、見直しは考えていない」と述べた[8]。上限を見直すような大きな経済情勢の変化はないというのが理由である。これは、受け入れ見込数を原則として上限として運用するという政府基本方針の文言そのものであり、配分変更を例外と位置づけた「資料3-1」や外食業の停止措置を説明した入管庁の資料と同じ論理に立つ。介護分野における配分変更と給食分野の移管も、この上限の内側で行われる。

上限を守る理由として法相が挙げたのは、日本人の雇用機会を守り、処遇の低下を防ぐ必要性である。給食分野の欠員は、この目的の下で、上限を動かさずにやりくりすべき問題だと位置づけられたことになる。国内人材確保の想定と、処遇や労働環境の改善を待てない現場との間に、政府はこうして線を引いたといえる。

法相はまた、業界が考えるニーズをそのまま受け入れるわけではないとも述べている。介護分野の2万人も給食分野の移管も、業界の要望に応えた結果ではなく、政府が必要と判断した範囲で行う措置だという線引きである。何を固定し、何を動かすかを決めているのは政府であり、その基準は上限の維持にある[9]。分野の線を引き直す対応には先例がある。2022年には、産業機械製造業分野で在留資格認定証明書の交付が停止された後、製造3分野が統合された[10]。今回も、人数の枠と現場の需要をつなぎ直すために、既存の区分が動かされようとしている。 

5.次回の見込数設定時に給食分野はどこに位置付けられるか

上述した給食分野の業種変更案には「今期における緊急的措置」と書かれている。今期とは2024年度から2028年度までのことを指し、再開を予定する2027年度から期末までの措置として提案されている。恒久的な整理を決めたものではない。

では、2029年度以降の受け入れ見込数を設定するとき、給食分野はどちらの業種の需要として数えるのか。外食業に戻すのか、飲食料品製造業に残すのか。今回の資料では、将来の扱いは示されていない。どちらに置くかによって、今度は各分野の必要人数や、他の業務に使える枠も変わる。給食を止めないために、今ある仕組みを使って採用経路を開くことは必要である。しかし、給食現場の勤務条件や機械化の難しさは、2028年度末に解消するわけではない。緊急措置が終了する時点でも、給食業務を担う人が必要であり、働く側にも、その後の仕事と生活がある。

人が足りなくなれば枠を調整し、枠を変えにくければ仕事を別の分野へ移す。こうした調整作業の一つ一つには事情も根拠もあるだろう。だが、個別の対応を重ねるだけでは、生活に不可欠な仕事の担い手を継続して確保する道筋は見えにくい。給食分野を一時的にどこへ移すかに加えて、給食業務を日本の外国人受け入れのなかにどう位置づけるかが問われる。

次回の見込数設定時に給食分野をどの分野に割り当て、必要な人数は何を根拠とするのか。その答えを先送りしたままでは、今度は移行先の枠に合わせて、また別の調整方法を模索することにならないだろうか。


[1] 出入国在留管理庁HP「外食業分野における医療・福祉施設給食業等の飲食料品製造業分野での受け入れ(案)について(資料2-2)」

https://www.moj.go.jp/isa/content/001472906.pdf

[2] 農林水産省HP「特定技能『外食業分野』における受入れ上限の運用について」

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/attach/pdf/gaikokujinzai-111.pdf

[3] 出入国在留管理庁HP「外食業分野の受け入れ停止措置に対する御指摘に係る回答(資料2-1)」

https://www.moj.go.jp/isa/content/001472905.pdf

[4] 前掲注1、P133

[5] 前掲注1、P131

[6] 出入国在留管理庁HP「介護分野における特定技能1号・育成就労の受け入れ見込み数の配分変更について(基本的な考え方)(資料3-1)」

https://www.moj.go.jp/isa/content/001472907.pdf

出入国在留管理庁HP「介護分野における特定技能1号・育成就労の受け入れ見込み数の配分変更(案)について(資料3-2)」

https://www.moj.go.jp/isa/content/001472908.pdf

[7] 出入国在留管理庁HP「特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針(案)(資料1-2)」P115-116

https://www.moj.go.jp/isa/content/001472904.pdf

[8] 毎日新聞2026年10月20日付記事「特定技能・育成就労の上限123万人 山下法相「見直し考えず」」

https://mainichi.jp/articles/20261020/k00/00m/010/299000c

[9] 前掲注8

[10] 出入国在留管理庁HP「特定技能「産業機械製造業分野」における在留資格認定証明書交付の一時停止措置等について」

https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/03_00017.html

出入国在留管理庁HP「「特定技能「素形材産業分野」、「産業機械製造業分野」及び「電気・電子情報関連産業分野」の統合について」

https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/03_00018.html

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