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【論考】社会保障負担率の将来推計が示す日本の選択 -経済成長と社会保障改革の両立が持続可能性確保の鍵-
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【論考】社会保障負担率の将来推計が示す日本の選択 -経済成長と社会保障改革の両立が持続可能性確保の鍵-

October 21, 2026

・社会保障負担率の推計方法
・経済成長と社保改革の両立によって負担率は減少
・今後の目標設定と具体的なアクション

わが国では少子高齢化の進展を背景として、社会保障制度の持続可能性に対する懸念が取り沙汰されて久しい。年金、医療、介護を中心とする社会保障給付費が増加を続けている中、それに伴って社会保険料や公費負担が増加しており、安定的な財源確保策と保険料率の上昇抑制が重要な政策課題となってきた。従来は高齢化や医療の高度化が増加要因だったが、近年みられる物価・賃金上昇も社会保障給付費の増加要因になっていくことが想定される。
こうした中、政府が2026年7月に公表した骨太の方針2026では、「医療・介護を中心とした社会保障制度改革を着実に実行することにより、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す」こととし、そのためにも「2027年度の社会保障負担率が2025年度と比較して上昇しないよう取り組む」ほか、「社会保障負担率の目標の検討を進め、これとあわせて、社会保障改革について2026年度中に改革項目の具体化と工程の明確化を図り、順次実施する」方針が示された。
ここに出てくる「社会保障負担率」とは、年金・医療・介護の社会保険料などの社会保障負担を国民所得で除したものであり、言うなれば国民全体でどの程度の社会保険料負担をしているかを示す代表的な指標の一つである。

出所:筆者作成

この指標の特徴は、分子である社会保障負担だけではなく、分母である国民所得によっても数値が決まることである。したがって、経済成長によって所得が増加すれば、負担額が増加しても負担率が低下する可能性がある。 実際に近年の社会保障負担率をみると分母の国民所得の伸びの影響もあいまって低下傾向にある。

図1:社会保障負担率の推移

出所:財務省財政制度等審議会「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」(2026年6月26日公表)


そこで今回は、政府が公表している経済見通しを活用し、2040年度までの社会保障負担率の簡易的な将来推計を試みた。本試算の特徴は、現在の政府による経済見通しと整合的な形で社会保障負担や国民所得を試算し、経済成長や社会保障改革の度合いにより、どのように社会保障負担率が推移するかを示した点にある。今後、政府が社会保障負担率の目標を検討する際は、自身が設定した経済見通しを踏まえた検討が行われることになると想定され、そうした議論の一助になれば幸いである。

社会保障負担率の推計方法

実際の推計にあたっては、まず公表済みの2026年度の社会保障負担率(見通し)を出発点とし、2027年度から2040年度は、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」(以下、中長期試算)にある各種経済指標の試算値を活用した。

①社会保障負担(分子)
まずは2026年度の社会保障負担率(17.6%、うち年金9.0%、医療5.9%、その他2.8%)と国民所得から、「年金」、「医療」、「その他」(介護、雇用等)の実額を算出した。その上で、「その他」から「介護」(予算ベース)を分割し、それぞれについて将来の増加率を下記の通り設定した。

    ― 医療、介護 :社会保障関係費の増加率 + 社会保障改革効果(詳細は④)
    ― 年金、その他:1人当たり名目賃金の上昇率

医療や介護の社会保険料負担については、給付の伸びによって保険料負担が増加するところ、高齢化要因や物価・賃金上昇率等が加味されている「中長期試算」の社会保障関係費の増加率を採用した。また、年金、その他(雇用保険等)については、保険料負担が主に賃金上昇率によって増加することから「中長期試算」の賃金上昇率を採用している。 

②国民所得(分母)
「中長期試算」では国民所得の長期試算が公表されていないため、2026年度の国民所得を「中長期試算」における名目GDP成長率で延伸した。

③経済前提
今回の試算における経済前提は、「中長期試算」において成長戦略の効果の発現度合いに応じて試算された3つのシナリオのうち、最も効果が発現された「成長戦略実現ケース①」と最も効果が発現されない「現状投影ケース」を使用している。

④社会保障改革
①~③の前提に加え、医療・介護については改革の変数を設定することで、同率の値を毎年度の社会保障関係費の増加率から差し引いた場合に将来の社会保障負担率がどうなるかについても推計した。改革効果のマイナス幅はあくまで仮置きだが、公表されている医療費の伸び率のうち、2021年度から2025年度における「診療報酬改定等」の影響分の平均値を活用し、医療・介護は▲0.6%と設定した。

以上を踏まえ、経済前提と社会保障改革を考慮した4つのケースにおいて、①で試算した各分野の社会保障負担の合計を毎年度の国民所得(②)で割ることで各年度の社会保障負担率を推計した。


図2:社会保障負担率の試算結果

出所:筆者作成

経済成長と社保改革の両立によって負担率は減少

試算結果から読み取れるポイントは、保守的な経済前提(現状投影ケース)であって、かつ改革が実現しない場合には社会保障負担率が上昇し続けること、そして、経済成長と社会保障改革のどちらかのみが実現する場合には負担率は横ばいとなり、両方が組み合わされる場合には、社会保障負担率は低下し、2030年代半ば以降は16%台となることが見込まれることである。

今後の目標設定と具体的なアクション

今回の試算が示す事実は、経済成長と改革への姿勢の両方が将来を大きく左右するということである。「成長戦略」による強い経済の実現によって所得を増やし、その果実を活用して社会保障制度を支える。そして、高市総理の国会答弁であったように、「現役世代の負担軽減と社会保障制度の持続可能性の確保の両立に向け、必要な改革を先送りせず、不断に改革に取り組む」(2026年10月8日のチームみらい古川あおい議員への参・本会議における答弁)。社会保障負担率を引き下げるためには、このように経済成長と社会保障改革の2つを両輪として、同時に進めていく必要がある。
社会保障負担率は、物価・賃金が伸びていく成長型経済において、経済成長と社会保障制度の持続可能性を両立していく上で、国民とも共有できる分かりやすい指標である。社会保障負担率が低下すれば、経済成長とともに自身の手取りも増え、現役世代を中心に国民も経済成長を実感できるだろう。
そのためにも、政府は、毎年度の社会保障負担率を引き下げていくことはもちろんのこと、社会保障負担率の具体的な数値目標とその年限を定め、目標達成のための具体的なメニューの改革工程を国民と共有し、その実現に向けて政府一丸となって着実に取り組むべきである。

 


(参考文献)
・内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」(2026年7月公表)
・内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2026年7月30日経済財政諮問会議提出)
・財務省「令和8年度国民負担率」
・厚生労働省「令和7年度医療費の動向」
・財務省財政制度等審議会「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」(2026年6月26日公表)

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