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【開催レポート】第5回東京財団フォーラム「VCASIの実験-『制度』の分析を核とした超学際的バーチャル研究所の発足に向けて」

July 4, 2007

7月4日に第5回東京財団フォーラムとして、「VCASIの実験-「制度」の分析を核とした超学際的バーチャル研究所の発足に向けて」が開催されました。一見して抽象的なテーマにもかかわらず、多くの若手の研究者、メディア、霞ヶ関、シンクタンクの関係者など政策研究の最前線に携わっている方にお集まりいただきました。

まず、はじめに青木昌彦特別上席研究員(スタンフォード大学名誉教授)から、VCASI(Virtual Center for Advanced Studies in Institution)とは直訳してみれば「制度にかかわる仮想研究所」ということであるとして、制度研究の必要性について次のようなプレゼンテーションがありました。
>>>資料はこちら⇒「VCASIの実験」

    • 近年、経済学のみならず社会学、政治学、法学、進化理論、哲学などでも「制度」に関する研究が盛んになっている。それは、たとえばソビエト連邦の崩壊でロシアにアメリカ流の制度を導入してみても上手く行かなかったことなどから、単に成文法を変えるだけでは制度は変わらないことがわかってきたからだ。
    • 制度とは、成文法のみならず、人々が「世の中はこのように動いている」と共通認識している社会のルールのことである。人間は、これまでの古典派経済学のように与えられた価格の中で自分の利益を最大化するという行動をとるのではなく、「自分がこう行動したら相手はこう動く」という相手の出方を見ながら行動し、社会の約束ごとを再生していくものである。ゲームの理論とは、そうしたことを分析するものである。
    • したがって対象は、単に経済学だけでなく、社会規範、国家制度、私有財産制、契約、組織慣習などすべてをゲームのプレーの結果であり、共通認識として考える。
    • たとえば、なぜ天皇制、メインバンク、終身雇用制といった日本特有の制度が成立し、安定的に維持されたのかを分析するためには、それぞれの制度が相互に連関しながら一つの塊として存在していると捉えなければならない。
    • また、最近「市場原理主義」などと言われるが、批判している人も、主張している人もおかしい。知的所有権、契約制度などの経済インフラ、商取引をしている人の信頼関係、道徳規範などに包まれて市場は存在する。そうしたさまざまな制度が相互に連関しているものを、「市場原理主義」と一括りにするのはおかしい。
    • 法律を変えても制度様式は変わらない。慣習や社会規範などのような基底的な制度の変化とフィットしないと変わらない。したがって、超学際的な研究をする場が必要である。今さまざまな専門分野から第一次のフェローの候補者に全国・海外から集まってもらっている。VCASIでは、リアルなコミュニケーションとバーチャルなコミュニケーションを並行して行うことで、ルールの本質や、それがどのように変わるのかを研究したい。こうしたことを研究する組織のメカニズムも、若い専門家の力を活用しながら作っていきたい。


次に鈴木健研究員(国際大学グローコム主任研究員)から、インターネットの登場によって研究スタイルが、オープン化、ハイスピード化、細粒度化、taxonomyからfolksonomyへと変化しており、米国のGruter Instituteのようなバーチャル研究所が広がってきていることが紹介されました。
>>>資料はこちら⇒「VCASIのシステム設計」

そして、プロジェクターに具体的なイメージを示しながら、バーチャル研究所における新しい知的交流の仕掛けとなるようなVCASIのシステム設計について、プレゼンテーションがありました。


次に加藤創太研究員(国際大学グローコム教授)から、VCASIの政策発信について次のようなプレゼンテーションがありました。
>>>資料はこちら⇒「VCASIの政策発信」

    • 日本の政策マーケットは「金にもならない、票にもならない」ことから霞ヶ関によって独占されてきたが、小選挙区制と二大政党制の実現によってさまざまな状況変化が生じている。
    • これまで政策形成には経済学のような社会科学研究は必要ないといわれることもあったが、現在のような制度転換期には利害調整の手段・結果としての政策より、中立性・客観性を持つ社会科学研究を根拠に持つ政策が必要である。
  • 現在は政策立案現場の霞ヶ関と研究者の間には、すれ違う志向、異なる文化、価値観が存在するが、VCASIでは異なる思考プロセス、文化、価値観を持った者の間での知的交流の仕組みをWeb上に構築し、基礎理論から政策形成までのプロセスを「つなぐ」一つのモジュール型研究機関として機能することを目指したい。

会場からは、

    • VCASIで政策研究を議論するときに、官と学だけでなく産業界、政治の世界、NPOなどのプレーヤーを取り込む必要があるのではないか。
    • 霞ヶ関がデータを独占している状況の中で、最新のIT技術を活用したVCASIの議論と政策決定とのつながりを一体どうするのか?
    • 情報が官僚に独占されている政府の審議会の亜流にならないように、VCASIで行われた議論についてどのようにして情報を世の中に出していくのか?
  • 一方で、多くの情報が入ってくるとなるとその質をチェックしていく必要があり、どのような方法で行っていくのか?

などの活発の質疑応答が繰り返され、知的な雰囲気が漂う中で、梅雨の宵が深まっていきました。

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