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【論考】東京都の「日本人」人口は2021年をピークに既に減少局面か -「東京一極集中」終焉の兆候-
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【論考】東京都の「日本人」人口は2021年をピークに既に減少局面か-「東京一極集中」終焉の兆候-

March 18, 2026

「税・社会保障研究 レビュー・論考・コラム」

令和710月より、「税」や「社会保障」をテーマとしたコラム(Review)を、以下の執筆者が交代で執筆してまいります。掲載されたコラムは「まとめページ」からご覧いただけます。小黒一正(東京財団上席フェロー/法政大学経済学部教授)、佐藤主光(東京財団上席フェロー/一橋大学国際・公共政策研究部教授)、土居丈朗(東京財団上席フェロー/慶應義塾大学経済学部教授)、森信茂樹(東京財団シニア政策オフィサー)」

東京の人口動態に構造変化の兆候も
日本人人口の減少と外国人人口への依存の限界
人口減少を前提とした経済社会システムの再設計を急げ

東京の人口動態に構造変化の兆候も

日本の総人口が2008年をピークに長期的な減少局面へ転じて以降も、東京都の人口は一貫して増加傾向を維持してきた。これまで国立社会保障・人口問題研究所(以下「社人研」という)が公表してきた「日本の地域別将来推計人口」においても、東京都の人口予測は、実績値が予測を上回る形で推移してきた経緯がある。

例えば、2008年推計において東京都の人口は2015年に1,271万人でピークに達すると予測されていたが、実際には1,351万人と予測を超えた。また、2013年推計でも、2020年に1,335万人でピークを迎えるとの予測に対し、実績は同年に1,400万人超となった。さらに2018年推計では、ピーク時期が2025年(1,408万人)と繰り延べられた。地方からの継続的な人口流入(社会増)が、過去のトレンドに基づく想定を基本的に上回ってきたことが、理解できよう。

だが、このトレンドに、現在、構造的な変化の兆候が確認される。一つは、2025年の住民基本台帳に基づく人口移動報告だ。同報告によれば、東京都への転入超過数は約6.5万人となり、前年の約7.9万人から約1.4万人も減少した。特に人口流入の中心であった東京23区の転入超過数の縮小幅は顕著であり、前年比で約2万人の減少を記録している。

もう一つは、「住民基本台帳」のデータだ。周知のとおり、人口推移データには、主に「国勢調査」と「住民基本台帳」という2つの統計がある。このうち、5年に1度実施される国勢調査を基準とする人口は、東京などの大都市では、各自治体が毎月集計する住民基本台帳基準の人口に対し、基本的に一定規模で上回って推移してきた。この理由は、大都市の特性上、地方からの単身赴任等により実態として居住していても住民票を移さない層や、未登録の居住者が一定数存在するためだ。

東京の人口に関する社人研や都庁の予測では、この居住実態を広く捕捉する国勢調査を利用して推計しているが、住民基本台帳との統計的な乖離を認めつつも、毎月の人口移動を適時に反映する住民基本台帳のデータも見ることで、東京の人口に関する変化の兆候が浮かび上がってくることもある。

日本人人口の減少と外国人人口への依存の限界

住民基本台帳(11日時点)のデータから読み取れる興味深い事実は、東京都の人口を「日本人」と「外国人」(日本人以外)に分解したときの構造的な変化だ。

これは、図表から一目瞭然だ。図表のとおり、東京都の「日本人」人口は2021年の1,3297,089人をピークとして、徐々に減少局面に転じ始めている。コロナ前の数年間(2015年~2019年)では、東京都の「日本人」人口の増加は毎年9万人超であったが、2022年では1.3万人の減少、2023年も1.9万人の減少で、コロナ以後の増加は2024年が.4万人、2025年が1.6万人に鈍化している。その結果、2025年の「日本人」人口は2021年の値を下回っており、日本人に限れば、東京への一極集中は終焉しつつある。では、なぜ東京都の総人口は現在も増加を維持しているように見えるのか。それは、外国人の顕著な流入によって、日本人人口の減少分が補填されているためだ。2024年から2025年にかけての1年間で東京都の総人口は約9万人増加しているが、その内訳は外国人の増加が約7.3万人も占めている。総人口増加の8割以上が外国人によってもたらされており、かつて人口増の主力であった日本人の増加(1.6万人)は、統計的に僅かな水準に留まっている。

 

図表:東京都の人口推移(単位:人)
(注)住民基本台帳のデータのうち、2012年の住民基本台帳法改正以前は、外国人が住民基本台帳の適用対象外であったため、2012年以前の住民基本台帳ベースの「総人口」は、日本人人口に「外国人登録者数」を合算した数値を実質的な総人口としている。また、国勢調査のデータでは、入手可能な年の間の数値は線形補完している。

(出所)「国勢調査」「住民基本台帳」データから筆者作成

 

東京人口のうち、この「日本人人口」の伸び鈍化を招いている基本的な要因は、高齢化の進展に伴う自然減(死亡数が出生数を上回る状態)の拡大である。東京は全国に比べて若年層の比率が高く、長らく自然増を維持してきたが、少子化の進行と相まって近年は東京も自然減へと移行しつつある。すなわち、これまでの東京は、地方からの豊富な人口流入(社会増)で人口増となってきたが、流入の源泉となる地方の人口そのものが絶対数として減少している現在、日本人における社会増はかつての水準を維持できていない。結果として、東京でも日本人人口の減少が本格化しつつあるのではないか。

事態の深刻さは、東京でもこの人口減少圧力が中長期的にさらに加速するという点にある。団塊の世代が後期高齢者のなかでも特に医療・介護ニーズが高まる85歳以上となる2030年代にかけて、東京都の死亡数は著しく増加すると見込まれており、自然減の規模は今後10年間で一段と拡大する可能性が高い。一方で、社会増の指標となる転入超過数も、前述のとおり縮小傾向が見られる。2024年に約7.9万人であった転入超過数は、2025年には6.5万人へと減少している。

東京人口のピークの予測については、東京都の独自試算(2030年頃のピーク)や社人研の推計(2040年頃のピーク)があるが、これらの推計では、それなりの社会増が過去のトレンドに準じて継続するという前提に立っている。日本人の国内移動による東京への流入が限界を迎えつつある中、年間7万人規模の外国人が東京に流入するシナリオも不確実性がある。国際秩序の変容に伴うグローバル経済の逆転や、円安水準の定着に伴う日本国内の相対的な賃金水準の低下等を考慮すれば、外国人の流入ペースが鈍化するリスクは常に存在する。これらのマクロ経済的要因により外国人の流入が減少に転じた場合、将来推計が想定する2030年や2040年といったピーク時期よりも前倒しで、東京の人口も本格的な減少局面へ突入する可能性もある。

人口減少を前提とした経済社会システムの再設計を急げ

東京の人口減少が現実的な政策課題として視野に入る現在、求められるのは、東京を例外視する前提を問い直し、日本全体が等しく人口減少に直面するという認識に基づいた国家デザインの再構築である。これまで日本の経済成長を牽引してきた東京の人口集積が縮小に転じることは、財政・社会保障システムの前提に根本的な再考を迫る事象である。人口減少と少子高齢化の同時進行は、労働力人口の減少を通じた潜在成長率の低下や税収基盤の縮小をもたらす一方、都市インフラの維持コストや、高齢化に伴う社会保障費は今後も増加が見込まれる。こうした負担は、人口減少局面においてより顕在化し、地方のみならず首都の財政運営にも一定の影響を及ぼすことが懸念される。

持続可能な経済社会への適応には、公共インフラの計画的な統廃合と行政のデジタル化を通じた維持コストの構造的削減が不可欠である。同時に、税収減と社会保障費の増大を見据え、若い世代や将来世代の利益も視野に、財政・社会保障の改革を行う必要がある。東京一極集中の終焉を契機とし、持続可能な経済社会システムの再設計を急ぐべきである。

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