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・訪問看護とは? ・訪問看護サービスのメリットとは? ・私たちの研究で目指すこと |
もし、あなたが、病気で長期療養が必要になったら、医療機関で過ごしたいですか、自宅で過ごしたいですか。また、いよいよ人生の最終段階を向かえる時は、どこで過ごしたいですか。そして、あなたの家族だったら、どうしてあげたいですか。こういった人生の最終段階における意識調査が、厚生労働省で実施されました。調査結果によると、医療段階や病気によって、医療機関での療養を希望するケースはありますが、療養生活も、人生の最期も「自宅」を希望する人が多いという結果となっています。その理由としては、自分らしく好きに生活を送りたい、住み慣れた場所で友人や家族に囲まれ豊かに過ごし続けたいことがあげられます。 出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」より作成 しかし現実は、病院で過ごすケースが圧倒的に多く、国民の希望とは大きな乖離が生まれています。
訪問看護とは?
訪問看護は、心身機能の維持、回復を目的として、看護師が病気や障害のある方の自宅を「訪問」し、療養上のお世話や診療の補助、その方にあった看護を提供します。利用者の症状に応じて、次のサービスを受けることができます。
- 血圧や体温の測定などの健康観察や病気に関する相談
- 症状の緩和やコントロール
- 食事や排せつの介助、入浴の介助や洗髪などの日常のお世話
- 人工呼吸器などの医療機器の管理
- 床ずれの予防やケア
- リハビリテーションによる運動機能の低下防止
- 家族への介護方法のアドバイスや不安などの相談
- 在宅での看取り
訪問看護は、利用者だけでなく家族へのサポートも行います。また、訪問看護サービスを担うのは、看護専門職です。訪問看護は、利用者に必要となる看護ケアを看護の専門家が提供します。国民は、訪問看護サービスを利用することで、看護職の力を借りながら、自分らしく、住み慣れた場所で豊かに暮らすことができるのです。
訪問看護サービスのメリットとは?
訪問看護サービスを受けることのメリットは、病院で受けていた専門的なケアを自宅でも受けることができるため、症状の悪化を防ぐだけでなく、利用者が病院へ通うための負担も軽減できます。退院後に、訪問看護を利用することで、継続した看護ケアを受けることができ、スムーズに自宅での生活が送れるようになります。また、利用者家族の精神的な負担も軽減されるでしょう。しかし、訪問看護の利用件数は、いまだ増えていません。介護保険でのサービス種類別介護費用額の変化(平成13年度と令和3年度比)をみると、居宅介護全体が、38.2%から61.8%に大きく伸びているにも関わらず、訪問看護は2.7%から3.1%とわずか0.4%ポイントしか増えていません。この原因としては、国民が直接、訪問看護を利用できる仕組みになっていないため、国民にサービスの存在が知られていないことが大きな原因だと考えています。また、退院後に看護の継続が必要な場合にも、訪問看護への引継ぎが全ての病院で十分にできているとはいえません。このように、訪問看護サービスを必要とする患者や利用したい国民が、訪問看護を選択して利用できるようにするには、制度上、どのような改善が必要なのでしょうか。本研究では、訪問看護サービスの利用について、制度に関する視点から政策提言をしていきたいと思います。出典:介護給付費等実態調査(平成13年度から令和3年度)より作成
私たちの研究で目指すこと
私たちは、国民が希望している自宅で療養生活を送り、その人らしく人生を生きられるよう、訪問看護を利用するためのアクセシビリティーを高める政策を提言したいと考えています。訪問看護は、地域で暮らす全ての世代を対象にしています。本研究を通じて、訪問看護を利用して在宅でも療養できることを、選択肢の一つとして多くの国民に理解してもらいたいと願っています。