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G7広島サミットの議長国として日本が行うべきこと
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G7広島サミットの議長国として日本が行うべき6つの提言

May 17, 2023

R-2023-012

相互に関連する人間の安全保障上のリスク
議長国として日本がG7をリードし、我が国として推進すべきこと
1.国・地域におけるCDC機能の強化と民間を含めた健康危機対応プラットフォームの確立
2.民間投資の促進による研究開発エコシステムの確立
3.人間の安全保障のためのデータガバナンスの推進
4.薬剤耐性(AntiMicrobial Resistance, AMR)への取り組みの再強化
5.気候変動とグローバルヘルス相互への取り組み
6.安定した効果的な資金の供給

我が国は議長国として、G7広島サミットを力強くリードし、同時にサミット後を見据え、日本国内で、一人ひとりのエンパワーメントに繋がるような政策を推進せねばなりません。本稿では、故緒方貞子元国連難民高等弁務官らが提唱し、近年再評価を受けている「人間の安全保障」を基軸に、地政学的視座も交え、グローバルヘルスの第一線の研究員らが、6つの提言を行いました。

フルレポート(全16ページ)はこちらよりご覧頂けます。

相互に関連する人間の安全保障上のリスク

 国家レベルの安全保障だけでなく、個人レベルでの安全保障を考える「人間の安全保障」[1]が重要だが、この「人間の安全保障」へのリスクは日々増大し、気候変動、武力紛争、サイバーセキュリティ、食糧危機、エネルギー危機、地政学的リスク、パンデミックなど、さまざまなリスクが絡み合ってシステミックなリスクを高めている。このような危機下では、社会的に最も脆弱な立場にいる人々が大きな影響を受けるが、セーフティネットが十分に機能せず、世界と日本国内で、社会不安や混乱が広がっている。

特に、システミックなリスクに対処するためのガバナンスの機能不全が指摘されている。グローバルヘルスにおいては、グローバルヘルス体制の限界が何度も指摘され、COVID-19パンデミックでも、ガバナンスの機能不全が露呈した。この要因として、特に、以下の4点があげられる。

  1. WHOなどの国際機関が持つ構造的な課題:WHOをはじめ国際機関の意思決定は加盟国が主体であるため、国益や政治的思惑にその意思決定が左右される。
  2. WHOが組織内に抱える予算・構造上の課題:WHO本部がグローバルヘルスの課題に対応する裁量を十分に持てていない。
  3. WHO加盟国の意思決定に関する課題:加盟国が国際機関での意思決定を行う際、考慮するのは国際的評価のみならず、国内世論への影響や国家の安全保障でもある[2]
  4. 解決すべき問題自体の複雑性:上記の課題に加えて、そもそも問題自体が複雑である場合、意思決定が効果的に行われない(あるいは、できない)場合がある。

今回のパンデミックで特に目を引いたのは、WHOが実施するJoint External Evaluation (JEE)[3],[a]で一定の評価を受けていた、高所得国を含む諸国の保健医療サービスが機能不全に陥ったことだ。この根本的な原因は、パンデミックへの準備不足とともに既存の保健医療システムの脆弱性[4], [5]であり、その上流にあるのは、前述した、国際政治や国際機関、加盟国が持つ構造的な課題だ。健康や医療の重要性は比較的、異論が少ないが、それでもその意思決定は国際・国内政治の影響を大きく受けるという現実を、今回のパンデミックは露呈させた。

こうした課題はグローバルヘルスだけに関するものではない。むしろシステミックなリスクに対処する際に常に直面するものとも言え、大国としてこれまで国際安全保障や国際政治経済を主導してきたG7に、厳しい目線が注がれることは当然であり、そうあるべきだ。

G7がグローバルヘルスで果たすべき役割

このような状況下の20235月、日本はG7広島サミット及びG7長崎保健大臣会合の議長国として主導的役割を担いながら、G7ならではの貢献と、具体的な提案が求められている。特にグローバルヘルスにおいては、単に低中所得国の個別の疾病を予防・克服することを目的とするのではなく、分断化が進むグローバル社会の中において、システミックなリスクを防ぎ、グローバルな公共財としての機能をさらに強化する観点から、日本の主導的役割が期待されている。

G7ならではの貢献とは何か

G7は実利的な貢献と、価値観や規範の創出という二つの役割を担うことが考えられる。機能主義(Functionalism)的な視点[6]に基づく、実利的な貢献を考えると、G7がその技術力や経済力で世界を主導する役割は大きい。政府開発援助(Official Development Assistance, ODA)の総額でもみても、7割以上はG7各国からの拠出による部分であり、COVID-19流行中に研究開発されたワクチンや治療薬、検査技術のうち、高い安全性と効果が証明されたものの大半はG7各国の科学技術に由来する。

一方で、G20などの台頭により今後G7が形骸化する可能性があるともいえるが、G7にしか出来ないことがある。それは価値観や規範の創出という役割だ。

G7加盟国を束ねるのは、経済力だけでなく、民主主義という共通の価値観である。世界の民主主義を守るという価値観を共有し、中心的役割として、持てる力を世界の安定と平和のために還元することが期待されている[7]

また、民主主義という共通の価値を基軸とし、単なる資金援助や技術開発に留まらず、世界があるべき姿を提案し、国際政治を動かしていくことは、毎年、私的に近い形で会合を行うG7だからこそできることだ。そしてルールを作ることのみならず、世界規模で特定の課題への興味関心を促し、そして課題解決に向けた潮流を作ることもG7の大きな役割だ。

したがって、G7はその資金と専門性を効果的に活用し、力の不均衡や格差に対処し、その行動に対する説明責任を確保するための努力をすべきである。これに加えて、G7はその共通する価値観に基づき、世界を一定の方向性に主導することができるし、そうすべきである。これらはすなわち、かねてから指摘されるグローバルヘルス・システムの必須機能[8]のうち、G7が最も役割を発揮できる、公共財の提供や研究開発、ルール・規範設定にG7が特化すべきということなのだ。

議長国として日本がG7をリードし、我が国として推進すべきこと

本稿では、東京財団政策研究所の研究グループでの議論を通して、G7議長国としての日本が今後グローバルヘルス分野で世界に貢献し、我が国の国民やヘルスケアにも直接裨益する6つの具体的提言を示す。

1.国・地域におけるCDC[b]機能の強化と民間を含めた健康危機対応プラットフォームの確立

世界的な感染症が発生する度に、WHOを中心としたグローバルヘルス・ガバナンスの限界が指摘されている。従来のコンセンサスを軸とした協調体制に加えて、各国の健康危機対応の司令塔としてのCDC機能の強化や民間を含めた危機対応の枠組みの確立に向けた支援が必要である。

日本においてもCDC設置法案が今国会において成立見込みである。日本版CDCは、感染症危機だけでなく、自然災害などの広範な健康危機への対応も含むことが想定されており、病院機能を備える形態が計画されている。これは他のG7諸国との大きな違いであり、日本版CDCの創設は歓迎すべきことである。

しかし、既存の研究所と病院が形式的に統合されただけでは、CDCとしてのコア機能は確保できない。さらに、科学的中立性を担保し、あらゆる健康危機から国民を守る役割を果たすことは困難である。健康危機発生時の迅速なリソースやロジスティクスの提供や配置を含めて、健康危機への対応に必要な機能を確保するためには、平時から官民のリソースを有機的かつ迅速に結集する仕組みが別途必要である。

人道的危機の緊急支援を目的として設立されたジャパン・プラットフォーム(JPF)は、参考となる事例であろう。JPFは、個人、企業、NGO、政府が対等なパートナーシップのもとで協力し、日本の支援を迅速かつ効果的に提供する仕組みを提供している。このような仕組みを健康危機対応にも拡大し、日本版CDCと相互補完的な体制を確立することが必要である。日本版CDCが科学的な知見を提供する一方で、JPFのような自律・分散型の組織が迅速な人道支援やリソースの調達、ロジスティクスなどを担当することで、日本の国内外での健康危機に対する包括的な支援体制を構築すべきである。

2.民間投資の促進による研究開発エコシステムの確立

2021年のG7サミットでは、WHOPHEIC[c]発出から100日以内にワクチン・治療薬・診断薬の実用化を目指すことを目指した「100日ミッション」が採択された。ここで必須となるのは効果と安全性の高い治療薬やワクチンなどの感染症危機対応医薬品(Medical Countermeasures, MCMs)の存在である。研究開発が進まないことには実用化までの日数を大幅に短縮することは不可能である。

日本は、COVID-19に対するワクチン・治療薬の研究開発ともに欧米から遅れをとっており、その教訓を生かして、先進的研究開発戦略センター(Strategic Center of Biomedical Advanced Vaccine Research and Development for Preparedness and Response, SCARDA が創設された。しかし、他国の同様の組織に比べて、その研究開発機能は限定的である。さらに日本が設立を主導し多額の資金拠出を行っているCEPI[d]のポートフォリオを見ても日本の製薬企業・ベンチャーはほとんど参加できていない。

我が国においては、グローバルヘルス領域における研究開発に関わる機関(CEPIなど)にベンチャーキャピタル(VC)などが製薬会社の代表者と関与するべきである。また、効果的かつリターンの高い案件に資金を提供できるよう、SCARDAに割り当てられた資金の一部は、製薬会社、VC、世界的な科学者の三者委員会によって管理されることが望ましい。

また、日本の製薬会社は、医薬品の基礎研究から製造までを一社が担う垂直産業構造の脱却ができていない。加えて、日本では未だ「オールジャパン」の拘りから脱却できていない。研究開発から実際の製造に至るまでの水平分業体制を進め、国籍にとらわれず柔軟に関連組織とのパートナーシップを構築すべきである。

3.人間の安全保障のためのデータガバナンスの推進

オンライン診療の普及拡大により、医療へのアクセスは国を超えて可能となった。国境を超えてCOVID-19陰性情報やワクチン接種情報のデジタル証明を共有することで、国際渡航の再開がなされた。こうした情報の共有・流通の、基盤となるのは、個人の医療データの国を超えた相互運用と「信頼」の担保である。例えば欧州では、European Health Data SpaceEHDS)構想が示され、EU圏内での医療データアクセスを可能とするための法整備が進められつつある[9]。またG20の今年の議長国であるインドでは、国民IDであるAadhaarを用いたデータ流通基盤となるIndia Stackのインド外への展開を始めており、その中にはヘルスケアデータの流通基盤(Health Stack)も含まれている。

一方、日本では接触確認アプリCOCOAなどの導入に際して、保健医療DXの遅れが明らかになった。日本はG7広島サミットを契機に、保健医療分野におけるデジタルインフラへの投資を推進する役目を果たすと同時に、我が国の遅れた保健医療DXを一気に前進させるべきである。この中には、一般的な医療情報システムの整備、遠隔医療を実施するための基盤整備、医療分野におけるアプリケーション開発・実装などが含まれる。

保健医療DXの遅れは、COVID-19対策だけではなく、我が国の地域医療情報連携ネットワーク等の課題にも現れている。信頼醸成という観点からも、相互運用性、データ・プライバシーとセキュリティへの対処などについての基本指針の合意が必要である。特に、安全なデータ保存・送信方法の利用促進、データ保護規制の確立、デジタルヘルスデータ利用のための倫理的ガイドラインの策定支援などを日本が主導しつつG7が推進すべきである。

G7のみならずG20との連携も、国際的なデータ流通についてのコンセプトであるData Free Flow with TrustDFFT[e]を提唱している我が国だからこそなせるリードの元、強力に推進すべきである。DFFTに関しては、具体化に向けたプライオリティを実行するための国際的な枠組みInstitutional Arrangement for PartnershipIAP(仮称))が提案されているが、その中でも柱とされている企業や国境の壁を超えたデータ連携に関して、ヘルスケアの領域において進めることが期待される。その際、多様な価値観を前提とした信頼性を担保できるような自律・分散型のデータガバナンスが求められる。

4.薬剤耐性(AntiMicrobial Resistance, AMR)への取り組みの再強化

薬剤耐性(AMR)は世界的な課題であり、現在のままでは2050年にはがんによる死者数よりもAMRによる死者数が上回ると予測されている[10]COVID-19の流行によってその政治的関心が下がる懸念がある中、AMRの重要性に目を向け具体的行動をとることが求められる。

まず、国際的なサーベイランス体制の構築と投資が必要である。保健セクターに限らず、農業・獣医・環境セクターなどと併せたサーベイランスシステム(「ワン・ヘルス(One Health)」アプローチ)が必要となる。G7各国は国レベルにおけるサーベイランスとモニタリング体制の構築に投資をするとともに、後述する医療分野のDXの推進と併せて得られるデータがAMR対策に迅速に活用されるようにすべきである。

また、抗微生物薬の適切な使用をさらに促進すべきである。抗微生物薬の使用は、人のみならず家畜への投与も十分にモニタリングされなくてはならない。このためには、医療従事者を含めた一般国民への普及啓発、抗微生物薬の適正使用(処方)に関するガイドラインの整備、G20Global Southとの連携、地域特異性に配慮したガイドラインの整備が不可欠である。

さらに、G7は抗微生物薬研究開発のための資金提供を行うとともに (例えば、サイレント・パンデミックという観点からも、例えば、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)などがAMRにおける役割を強化することも検討すべきである) 製薬会社に対して研究開発や生産ライン安定化のインセンティブの提供、抗微生物薬の分野におけるイノベーションを促進する支援を行うべきである。

5.気候変動とグローバルヘルス相互への取り組み

気候変動を始めとする世界的危機は、生物界だけでなく惑星全体のエコシステムを考えなければ解決が困難である[11]G7は 、このようなエコシステム危機から生じている惑星地球の疾患を診断し治療をする行動を推進すべきである。

近年、異常気象や自然災害の増加により、医療施設が被害を受け、また医療ニーズが急増し医療体制が低下または中断するリスクが高まっている。これらに対応できる医療施設を構築するためには、適切な投資が必要である。また、医療施設の環境負荷に対する取り組みも重要である。同時に、医療ニーズの増大に備えて、十分な医療人員と災害対応能力を持つ医療職の養成も必要となる。G7は、自国内だけでなく、世界各国に対して気候変動に強い保健医療インフラの構築をリードし、助言や支援をすべきである。

また、大気汚染は気候変動の主要な原因であり、数百万人の早期死亡を引き起こしている[12]G7は、クリーンエネルギー技術への投資や公共交通機関の促進など、大気汚染の軽減に取り組むと共に、化石燃料からの転換も必要である。

特に、東京栄養サミット2021においても、現在の農業と食料生産システムは、気候変動の主要な原因であり、世界的な食糧危機のリスクに直面していることが示された。畜産によるメタンガス排出も温暖化の要因であり、特に牛肉や豚肉などの赤肉主体の食事は、がんや動脈硬化症のリスク増加と関連している。健康的で持続可能な食料システムの構築のためには、植物性食品の摂取割合を増やす必要がある。議長国である日本はG7を通して、気候変動に強く、健康的で持続可能な食料システムの構築を推進する役割を果たすべきである。

6.安定した効果的な資金の供給

G7によるDAHの総額はCOVID-19で一時的な保健セクターへの資金増はあったものの、2008年のリーマンショック以降基本的には停滞傾向が続いている。ODA全般で見ても国際的合意である「対GNI0.7%」を達成できているのは一部にとどまる。これらの要因には、大きく1) G7自体の経済停滞によりODA資金供給自体が難しい、2) 供給された資金が効果的・効率的に使われていない、3)  保健セクターへの投資へのインセンティブに乏しい、の3点が挙げられるだろう。これらの要因を考えるとき、G7が果たすべき役割としては以下がある。

まず、G7は健康への投資に向けた潮流を作り、資金源の多様化を推進すべきである。グローバルヘルスの扱う課題は多岐にわたり、その解決に要する資金が莫大であることを考えると、G7がその主要な資金源であり続けることは難しい。したがって、民間企業や財団などからの資金調達、あるいは革新的資金調達メカニズムを主導することが先決である。ただしそのためには、G7自体がコミットメントを示す必要があり、国際的合意の対GNI0.7%は最優先で履行しなくてはいけない。特に、日本はODAの対GNI0.7%は未達成である。G7の議長国として、率先した健康への投資の姿勢を見せなければ、この分野で日本がリーダーシップを発揮することは難しい。 

次に、G7は投資効果を再検討し、グローバルヘルスの資金活用の効率性を図らなくてはならない。不必要に多額の資金が一定分野に流れたり、類似組織が乱立したりしている現状の整理が必要である。なかでも、国民の税金から行うODA投資効果をきちんと見定める必要がある。健康への投資をよりスピーディーに、リターンを得られるシステムにするよう、日本がリードする必要がある。この点において、我が国では2019年に議長国をつとめたG20大阪サミット以来、財務―保健トラック間での政策対話を実施することで保健セクターへの効率的投資の実効性を高めており[13]。この取り組みを引き続き日本がリードすることが期待される。

例えば、官民連携機関(例:グローバルファンド)の機能の一部を低中所得国に移行し、より低中所得国にオーナーシップを発揮してもらうことや、CEPIやグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund) の機能の一部をベンチャーキャピタルやソブリンファンドに移管することも検討する価値はある。これはすなわち、「調整」や「計画」などではなく、「インセンティブ」と「リターン」を重視した投資へと発想を転換することに他ならない。

我が国では2016年に前回G7の議長国として、世界銀行のパンデミック緊急ファシリティ(Pandemic Emergency Financing Facility, PEF)の創設を主導したが[14] PEFは資金拠出のトリガーが厳格すぎたこと、特に感染症においては有事規模の想定が初期に困難であったことなどから、COVID-19のパンデミック下では十分に機能することができなかった。こうした経験を踏まえ、例えば、上記の日本で設立されたJPFのように、緊急時に煩雑な手続きを回避し迅速に拠出できるような健康危機対応のための資金提供メカニズムの創設を主導することも日本には期待される。その際、大切なのは刻々と変化する状況に臨機応変に戦略を見直していくことであり、漫然と戦略なしに資金提供し続けることは避けるべきである。

さらに、G7は、開発援助を受ける各国が、保健医療により投資できるような制度設計を推進すべきである。その一案として挙げられるのが、いわゆる債務救済だ。これは各国政府が保健セクターへの投資額を増やし、保健医療分野で一定程度以上のアウトカムを達成した場合に、負債を免除する仕組みである。投資額とアウトカムの双方で判断されるため、支援先の国々が保健医療に効果的に投資を行うインセンティブとなることが知られている[15]。日本はG7の議長国として、こうした制度設計を通じて、健康への投資が各国で継続的に行われるよう、開発援助の主体であるG7をリードしていくべきだ。

東京財団政策研究所 

「ポストコロナ時代を見据えたグローバル・ヘルス政策に関する研究」
「ポスト・コロナ時代における持続可能かつレジリエントな医療・看護・介護システムの構築に関する研究」

坂元 晴香(東京財団政策研究所 主任研究員・東京女子医科大学准教授)
向川原 充(東京財団政策研究所 研究員)
清水 一紀(東京財団政策研究所 主席研究員)
徳田 安春(東京財団政策研究所 主席研究員、群星沖縄臨床研修センター長)
藤田 卓仙 (東京財団政策研究所 主席研究員、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ヘルスケア・データ政策プロジェクト長)
中村 治代(東京財団政策研究所 研究員)
益田 果奈(東京財団政策研究所 研究プログラム・オフィサー)
渋谷 健司(東京財団政策研究所 研究主幹)

注釈

[a]JEEとは国際的公衆衛生危機の影響を最小限にすることを目的にWHOが制定した国際規則「IHR(国際保健規則)」の履行能力を、各国政府とWHO外部評価団が合同で評価し、優先的に取り組むべき課題を明確にする取組。19分野の評価項目に対してそれぞれ5段階評価を行う。

[b]CDC( Centers for Disease Control and Prevention)とはアメリカの保健福祉省所管の疾病予防管理センター。結核など脅威となる疾病には国内外を問わず調査・対策を講じる上で主導的な役割を果たしている。CDCより勧告される文書は非常に多くの文献やデータの収集結果を元に作成・発表されるため、世界標準と見なされている。この機能の有効性を認め、米CDCを参考に自国のCDCを設立する国もある。

[c]PHEICとは世界保健機関(WHO)による「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言。

[d]CEPI(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)はワクチン開発を促進するため、2017年1月のダボス会議で発足した感染症流行対策イノベーションの官民連携国際パートナーシップ。平時には需要の少ないエボラ出血熱等の感染症に対するワクチンの開発を促進し、低中所得国でもアクセス可能となるよう低価格での供給を目指している。

[e]DFFT(Data Free Flow with Trust)とは、プライバシーやセキュリティ、知的財産権に関する信頼を確保しながら、ビジネスや社会課題の解決に有益なデータが国境を意識することなく自由に行き来する、国際的に自由なデータ流通の促進を目指すコンセプト。2019年1月のダボス会議で安倍総理(当時)が提唱し、同年6月のG20大阪サミットで首脳宣言に盛り込まれた。

参考文献

[1] 外務省. International Symposium on Human Security (Summary) [Internet].  2000 [2023515日閲覧]. Available from: https://www.mofa.go.jp/policy/human_secu/sympo0007_s.html.

[2] Putnam RD. Diplomacy and Domestic Politics: The Logic of Two-Level Games. Int Organ. 1988 Summer; 42 (3): 427–460.

[3] World Health Organization. Joint External Evaluation (JEE) [Internet]. 2023 [2023年515日閲覧]. Available from: https://extranet.who.int/sph/jee.

[4] Arsenault C, Gage A, Kim MK, Kapoor NR, Akweongo P, Amponsah F, et al. COVID-19 and resilience of healthcare systems in ten countries. Nat Med. 2022 Mar 14; 28: 1314–1324. Available from: https://www.nature.com/articles/s41591-022-01750-1.

[5] Haldane V, De Foo C, Abdalla SM, Jung A, Tan M, Wu S, et al. Health systems resilience in managing the COVID-19 pandemic: lessons from 28 countries. Nat Med. 2021 May 17; 27: 964–980. 28: Available from: https://www.nature.com/articles/s41591-021-01381-y.

[6] Keohane RO. After Hegemony: Cooperation and Discord in the World Political Economy.  Princeton: Princeton University Press; 2005.

[7] Hajnal PI. The G7/G8 System: Evolution, Role and Documentation. London: Routledge; 1999.

[8] Frenk, J. Finance and Governance: Critical Challenges for the Next WHO Director-General. Am J Public Health. 2016 Oct 7; 106(11): 1906-1907. Available from: https://ajph.aphapublications.org/doi/full/10.2105/AJPH.2016.303399.

[9] European Commission. Public Health: European Health Data Space [Internet].  [2023年515日閲覧]. Available from: https://health.ec.europa.eu/ehealth-digital-health-and-care/european-health-data-space_en

[10] 国際的に脅威となる感染症対策の強化のための国際連携等関係閣僚会議. 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2023-2027 [Internet]. 2023 Apr 7 [2023516日閲覧]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001092868.pdf.

[11] Steffen, W. (2015-02-13). Planetary boundaries: Guiding human development on a changing planet. Sci. 347 (6223): 1259855. doi:10.1126/science.1259855.

[12] Fuller R, Landrigan PJ, Balakrishnan K, Bathan G, Bose-O'Reilly S, Brauer M, et al. Pollution and health: a progress update. Lancet Planetary. 2022 May 17; 6(6): E535-E547. Available from: https://doi.org/10.1016/S2542-5196(22)00090-0

[13] 外務省. 途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジファイナンス強化の重要性に関する G20 共通理解(仮訳)[Internet].  2023 [2023529日閲覧]. Available from: https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/g20/osaka19/pdf/documents/jp/annex_05.pdf.

[14] The World Bank. Pandemic Emergency Financing Facility. [Internet]. 2021 [2023年529日閲覧]. Available from: https://www.worldbank.org/en/topic/pandemics/brief/pandemic-emergency-financing-facility.

[15] American Public Health Association. A Call to Expand International Debt Relief for All Developing Countries to Increase Access to Public Resources for Health Care [Internet].  2022 [2023年515日閲覧]. Available from: https://www.apha.org/Policies-and-Advocacy/Public-Health-Policy-Statements/Policy-Database/2023/01/18/Expand-International-Debt-Relief.

 

2023年529日、健康危機対応のための資金提供メカニズムの創設に関し、「6. 安定した効果的な資金の供給」項等に加筆。

※本Reviewの英語版はこちら

 


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