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【国際会議開催報告】子どものウェルビーイング
写真提供:Getty Images

【国際会議開催報告】子どものウェルビーイング

August 24, 2023

E-2023-009

ウェルビーイング政策の実施において、具体的な政策ターゲットの選定は重要な要素である。本研究プログラムでは、2022年度、特に子どものウェルビーイングに注目したイベントを開催した。本Reviewでは、各参加者より発表があった子どものウェルビーイングについての議論概要を紹介する。

【開催概要】

日時:20232
場所:富山県、石川県
参加者:オックスフォード大学ウェルビーイングリサーチセンター、マンチェスター大学、OECD(経済協力開発機構)WISEセンター、ギャラップ社、国内外のウェルビーイング専門家、国内の関係機関など

【オックスフォード大学ウェルビーイングリサーチセンター】

子どもや若者のウェルビーイングの定義においては、彼ら自身が自分の人生の質をどのように評価しているか、という主観的な要素が重要である。主要なアウトカム指標としては、大人向けの調査でも採用されている生活評価、感情、エウダイモニア(良好な心理的機能)などが考えられる[1]。各指標には多少の重なりがあるが、研究においては、特に、生活満足度を用いることが推奨されている。ただし、これらのアウトカム指標は、最終的な結果としてあらわれてくるものであり、ウェルビーイングには、健康、教育、モビリティ、住居等のさまざまな要素が影響を与える。したがって、主観的なウェルビーイングは、KPIとしては十分に実践的とは言えず、客観的な指標を組み合わせることが重要である。

子どもや若者のウェルビーイング向上が重要な理由は、その影響が大人に比べて後の人生に長く大きな影響を及ぼすからである。先行研究として、アメリカにおいて、1994年から5万人の子どもたちを追跡した調査があげられる。その結果によると、ウェルビーイングが所得や昇進等の予測因子であることが示されている[2]

子どものウェルビーイングに関しては、地域ごとに傾向が異なる可能性があることや、国の中でもさまざまなグループがあり、特に脆弱なグループも存在することなどがわかってきている。また、人との関係性が最も重要な要素のひとつであることも示されつつある。

現在、HSBC (The Hongkong and Shanghai Banking Corporation)PISA (Programme for International Student Assessment)などが、子どものウェルビーイングに関するグローバルな実態把握調査を実施しているが、各調査間の比較が難しく、国ごとにデータの利用可能性が異なるなどの課題がある。また、年齢を追ってのフォローアップ調査が難しいことや、そもそもデータがない国が多いことも課題である。

OECD

ある社会において子どものウェルビーイングが高いことは、その社会の経済的繁栄、つながりの強さ、あるいは政治的な安定につながることがわかっている。そのため、子どもが自分の人生についてどう感じているかを測定し、子どものウェルビーイングを向上させる取り組みを行うことは、社会にとって重要である。

子どもと大人のウェルビーイングは大きく異なるため、フレームワークの構築には異なるアプローチが必要である。OECDは、6つの原理に基づいて子どものウェルビーイングのフレームワークを構築している。6つの原理とは、①子どものウェルビーイングは多面的であること、②現在である子ども時代を楽しむことと将来志向との両方の視点を含んだ調査を行うこと、③子どものウェルビーイングにとって何が重要であるかは子どもの成長に従って変化すること、④子どもたちの視点や意見を取り入れること、⑤子どものウェルビーイングは環境により作られること、⑥政策が子どもの生活にどのように影響を与えられるかという視点で調査を行うこと、である。

これまでの調査において、学校活動への参加度合いや学業成績は、主観的ウェルビーイングや社会的・感情的なスキルと相関がみられることが明らかになった。一方、社会経済的に不利な環境は、子どもの主観的ウェルビーイングと逆の相関関係がある。加えて、ストレッサーはさまざまな要素からなるが、特に不安症状が近年増加傾向にあることが注目される。さらに、11歳時点と15歳時点を比較すると、15歳時点でのジェンダーギャップは拡大している。

OECDは、政策における子供のウェルビーイング指標として、物質的なもの、身体的健康、認知・教育に関するもの、社会的・感情的・文化的なもの、といった相互に関連する4つのアウトカムに着目している[3]。ただし、現時点で利用可能なデータは、必ずしも子どものウェルビーイングに関する実態を反映しているわけではないため、データインフラの強化が求められる。

【今後に向けた課題】

子どもは自身の声を聞いてもらう権利を持ち、大人はその声を聞く責任を負っている。子どものウェルビーイングに関する政策や介入においても、子どもを中心においたアプローチをとることが重要である。

今後に向けた課題として、まずは、メンタルヘルスの問題や、メンタルヘルスに関するポジティブな状態などの現状について、正しく理解し評価するためのデータが必要不可欠である。特に、子どものウェルビーイングに関連する要素や、ウェルビーイング向上に向けた取り組みの成果を評価するためにも、グローバル規模での質が高いデータ収集と蓄積が重要である。主観的なウェルビーイングに関して得られたデータを基に、学業成績などの他のウェルビーイングに関わりうる領域の情報と結びつけながら、検討を深めることが必要である。

本研究プログラムでは、今回の国際会議の成果物として、子どものウェルビーイングに関するメモランダムを作成した。その内容は、添付のとおりである。

資料: Memorandum こどもWell-being国際会議


参考文献

[1] 経済協力開発機構(OECD)[編著]、桑原進[監訳]、高橋しのぶ[訳](2015).「主観的幸福を測る OECDガイドライン」明石書店

[2] De Neve, J.-E., & Oswald, A. J. (2012). Estimating the influence of life satisfaction and positive affect on later income using sibling fixed effects. PNAS Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 109(49), 19953–19958.  https://doi.org/10.1073/pnas.1211437109

[3] OECD Child Well-being Dashboard https://www.oecd.org/els/family/child-well-being/data/dashboard/ (accessed on July 10th 2023)

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