【新春特別企画:展望2020】AIはわれわれの生きざまから学習する

【新春特別企画:展望2020】AIはわれわれの生きざまから学習する

AI(人工知能)は、われわれの働き方・生活スタイルに大きな影響をおよぼしている。「どこでもコンピューター」は、生活の利便性や経済効率を飛躍的に向上した。一方で、AI発達のもたらす将来の姿については、悲観的な見方も多くある。AIに代替されるホワイトカラーを中心とした大量の失業、AIを使いこなす少数の人とそうでない多数の人との果てしない経済格差の拡大というデストピアである。大量失業や格差拡大は、社会を分断し社会不安を招く。ポピュリズム政治家が出てきて、AIの「打ちこわし運動」をあおる可能性も十分ありうる。

このような経済社会の大きな変動・荒波の中で、国家の役割は一層重要になる。グローバリズム、市場メカニズムの下で格差の拡大を阻止できるのは、国家だけだからだ。税制や社会保障制度の基盤を強化することに加えて、AIに雇用を奪われないように、新たなテクノロジーを理解し活用できるスキルを身に着けるための「教育」もカギになる。すでにわが国でもそのような教育が始まっているようだが、AI発達のスピードとくらべれば動きは遅い。

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電IT見本市「CES」=2020年1月7日(共同)

筆者は、AIに「人間の身の丈に合わせる教育」をしていくことも重要だと考えている。AIは深層学習(ディープラーニング)で発展してきた。AIが学習をする際に、人間社会との共存の重要性を徹底的に学ばせ、AI自らの責任・役割の限界を自覚させるということである。具体的には、人間社会・リアル社会との共存(思いやり)が必要なことや、勤労を通じて成長し生きがいを見つけ他人とのかかわりを知る人間の楽しみを奪ってはならないことをAIに教え込むのである。

AIに教え込むためには、われわれ人間の日々の活動のビッグデータが必要となる。こう考えてくると、AIの未来は、「今日のわれわれの生きざま次第だ」ということになる。

AIが「まっとうな感覚や倫理観」を持つように、個人も国家も「人生100年時代」を豊かに生きる方策を模索していくことが、令和の時代の大きな課題であろう。

 

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森信 茂樹/Shigeki Morinobu

森信 茂樹

  • 研究主幹

研究分野・主な関心領域

  • 租税政策
  • 財政政策
  • 地方財政

研究ユニット

税・社会保障改革ユニット