【新春特別企画:展望2021】デジタル時代、人間中心社会の建設のために知恵を結集する時

【新春特別企画:展望2021】デジタル時代、人間中心社会の建設のために知恵を結集する時

GAFAに代表される巨大デジタル企業は、われわれから収集したデータをAIとアルゴリズムで分析し、プラットフォームを活用したビジネスモデルを立ち上げた。さらにIoTやブロックチェーンなどのデジタル技術を駆使し、巨大な付加価値を生み出している。
その活動範囲も、ヒト、モノ、情報、遊休資産などの仲介からはじまり、教育やヘルスケアの提供など準公共財分野にも進出、グローバルな脱炭素にむけてのイニシアティブもとるなど公共政策の形成にも大きな影響を及ぼしている。デジタル通貨の発行も企画、国境を越えてのサービス提供と独自通貨の組み合わせは、いずれ「国家を越える存在」になることを予感させる。

一方彼らの存在感の巨大化に比例して、負の部分も拡大、大きな社会問題を引き起こし始めている。
資本に任せて競争相手が大きくなる前に買収するなどの寡占化に伴う競争制限的な動きや、データ取得・活用に伴うプライバシーの侵害は世界共通の大きな問題となっている。
また単発の契約で労務を提供するフリーランスの増加というギグエコノミーを生み出し、セーフティーネットから外された人々を生み出した。加えてAIに代替されたホワイトカラーの増加が、健全な世論を形成する中間層の没落を引き起こしている。
さらに、一部のCEOと株主だけに分配される巨額な利益は、資産・所得格差を大きく拡大させ、これへの対策として国民全員に無条件で最低生活費を支給するベーシックインカムなどポピュリズム的な政策が主張され始めている。

果たして彼らは、既存の国家・政府に代わって、繁栄と平和をもたらし個人の安心や社会の安全を支える主体になりうるのだろうか。今のところこの答えはだれにもわからない。

筆者は、彼らのもたらす社会について、その便利さと怖さの双方について徹底的に思想を深め議論を行い検証することが今日われわれに課せられた最大の課題ではないかと考えている。

コロナ禍対策を巡って世界は、自由と規制の両極に分かれ分断されつつある。このような中、デジタル社会がこれ以上社会の分断や亀裂をもたらすものであってはならない。

人間を単なるデータの集合体と見るデータ至上主義から抜け出し、アルゴリズムではなく人間が支配者であることを再認識し、人間らしい生活を取り戻すことが重要だ。

そのために必要な公共政策は何か、所得や資産の再分配政策、デジタル時代にふさわしいセーフティーネットの構築、教育の抜本的な改革と充実などがあげられる。人間中心社会の建設のために、あらゆる分野の研究者による総合的な知恵の結集が必要な時代である。
東京財団政策研究所がその役割の一端を担えるよう微力ながら発信を続けたい。

 

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森信 茂樹/Shigeki Morinobu

森信 茂樹

  • 研究主幹

研究分野・主な関心領域

  • 租税政策
  • 財政政策
  • 地方財政

研究プログラム

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