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連載コラム「税の交差点」第24回:民進党代表選、前原氏の経済政策を考える

August 22, 2017

民進党の代表選が告示され、前原誠司氏と枝野幸男氏の一騎打ちとなっている。前原氏の代表選に臨む公約「民進党代表選挙へ臨む」を読むと、新たな政策として、“All for All” を掲げ、以下のように説明している

「あらゆる生活者の不安を解消する」ことを目指す政策理念のことです。“All for All (みんながみんなのために)”の旗印のもと、私たちは、生活困窮者だけではなく、だれもが尊厳を持って生きていけるように、すべての人びとの基本的な生活ニーズを満たす「尊厳ある生活保障」を実現して行きます。

そのための財源として、「主要先進国で平均的な税負担であるドイツ(52.5%)と軽い税負担であるイギリス(45.9%)の間くらいの国民負担を軸に、今後の負担のあり方を議論していきます。」とし、

「消費増税、給付付き税額控除や住宅支援等の低所得層対策、法人税、相続税、金融所得課税等で補完する税のベストミックスを議論していく」としている。

さらに新聞のインタビューによれば、「消費税10%に引上げて、増税分はすべて社会保障の充実に回す」との意向も示している。

このような考え方については、消費増税を忌避し所得再分配政策を怠るアベノミクスへの対抗軸、として評価できるのではないか。

筆者の基本認識は以下のとおりである。

アベノミクスが始まって4年以上経過し、景気拡大局面が長く続いているにもかかわらず、国民は豊かになった実感を持てない。その理由は、税制や社会保障を通じた所得の再分配政策が不十分なことで、それが勤労世代の将来不安につながり、賃金上昇や経済成長への期待が醸成されず、潜在成長力の低下に拍車をかけている、というものである。

そこで、3党合意の「社会保障・税一体改革」をもう一度国民が受け入れやすい内容に改組する必要がある。現行のスキームは、図表のとおりで、消費税率を5%引き上げ、4%は「財政再建」に、1%を「社会保障の充実」に使うこととなっている。

これでは国民の増税による「充実」の実感は少ない。そこでこのスキームを改め、消費増税分は「全額」勤労世代の社会保障や保育・教育の「充実」に充てることにする。少なくとも、8%から10%への引上げ2%分の税収増(5兆円強)は、「一銭残らず」勤労世代の社会保障・保育・教育の「充実」に充て、国民の将来不安解消に使う。さらには、高所得者により多くの恩典が及ぶ軽減税率(8%)は廃止する(1兆円の税収減を防止)ことである。

もちろん財政再建もすすめないといけない。2%の消費増税分に見合う金額を、マイナンバーを活用し、「富裕」高齢層にも給付している年金や医療の徹底的な見直しにより捻出する。加えて、「富裕」高齢層が恩恵を受けている甘い年金課税や金融所得税制の見直しなど所得増税で対応する。

これにより、社会保障の中身が高齢者から勤労世代にシフトし、勤労世代の将来不安も軽減され、マクロ経済でも需要が減少する影響は少なくなる。適切な所得再分配が経済成長につながるという筋書きである。

この観点から、筆者は、前原氏の唱える経済政策に共感を覚える。問題は、前原氏が今後このような政策をどう実現していくか、であるが・・・。

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