新型コロナ経済対策、マイナンバーを活用したデジタル・セーフティーネットの構築を - 連載コラム「税の交差点」第74回 | 研究プログラム | 東京財団政策研究所

東京財団政策研究所

詳細検索

東京財団政策研究所

新型コロナ経済対策、マイナンバーを活用したデジタル・セーフティーネットの構築を - 連載コラム「税の交差点」第74回
共同通信イメージズ提供。

新型コロナ経済対策、マイナンバーを活用したデジタル・セーフティーネットの構築を - 連載コラム「税の交差点」第74回

March 25, 2020

前回の税の交差点(第73回)では、今後検討される本格的な経済対策について、緊急対策とはいえ国民の税金を使う以上おのずから節度があること、その観点から、わが国の中長期的な政策と逆行するような消費税減税は行うべきではないこと、給付金で対応する場合には、マイナンバー制度を活用して所得制限を付け、無駄のない効果的・効率的な給付にすべきことを論じた。

今回はその延長で、マイナンバーを活用し、一気にデジタルガバメント化を推進していく必要があることを主張したい。

医療分野のオンライン診療の普及、教育分野における遠隔教育システムの整備などがすでに課題となっているが、本稿は税と社会保障の一体的な運営に焦点を当てる。

経済対策として導入が検討されている給付金だが、前回2009年の定額給付金のように、国民全員に一律配布するのはいかにも効率的・効果的ではない。世帯の属性や所得を勘案して効果的に配布する必要がある。

そのためには、マイナンバーを活用して所得情報(税務情報)と社会保障情報を一体的に運営するシステムを構築する必要がある。これは、デジタルガバメントの第一歩であり、今後のわが国の社会保障制度にとって極めて重要な社会インフラとなる。

2016年1月から始まったマイナンバー(社会保障・税番号)制度は、税務・社会保障・災害の分野で、「公平・公正な課税」や「社会保障負担・給付の公平化・効率化」という2つの目的で活用されるとして導入された。

しかしこれまでの活用を見ると、支払調書への付番など課税面における国民から政府への一方的な情報提供(「公平・公正な課税」)が中心で、もう一つの柱である「社会保障負担・給付の公平化・効率化」にはほとんど活用されていない。コンビニエンスストアでの住民票取得、ワンストップサービスへの活用など極めて限定的である。

その理由は、マイナンバーと紐づいた所得情報と社会保障制度とを有機的に連携させる制度・システムが未整備のためである。今回の緊急時に、早急に整備して、国民に効果的で効率的な社会保障制度、セーフティーネットの提供を図っていく必要がある。マイナンバーを活用して税務情報を社会保障情報と連携させるので、システムの改修が必要となる。国が制度設計して執行(給付事務)は地方自治体で行うということである。

これにより、例えば給付金(商品券も基本的に同じ)を配る場合、1月から3月の段階で前年より所得が大きく減少したフリーランス・個人事業主、雇止めや解雇にあった給与所得者などを把握して手厚く給付することが可能になる。一方で、国・地方公務員や大企業正社員、さらには年金生活者など今回の事態による経済的な被害の少ない者は給付の制限・排除をすることもできる。

欧米では、番号により国民全員の税情報(課税所得)と社会保障給付が連携され、有機的に活用されている。

例えば米国では、貧困ラインを下回る納税者には勤労税額控除という減税・給付が与えられ、税務申告の段階で適用されている。英国では、ユニバーサル・クレディットという名称の制度があり、あらゆる社会保障給付と税負担が一体的にとらえられ、貧困対策・子育て支援としての給付が行われている。

類似の制度は、オランダ、スウェーデンなど広く欧州諸国に存在し、韓国でも番号を活用した社会保障制度と連携した制度が導入されている。

今回の緊急時は、これまで既得権からの反対、各種規制、財源問題、各省間の縄張りなどから導入できなかったデジタルガバメントに向けての改革を一気に進めていくチャンスだ。

マイナンバーを活用して、デジタル時代にふさわしい社会インフラを構築し、国民のセーフティーネットを整備することは、いつやって来るかもしれぬ(しかし再びやってくる可能性の高い)経済・社会大変動への対策につながる。

注目コンテンツ

BY THIS AUTHOR

この研究員のコンテンツ

0%

PROGRAM-RELATED CONTENT

この研究員が所属するプログラムのコンテンツ

VIEW MORE

INQUIRIES

お問合せ

取材のお申込みやお問合せは
こちらのフォームより送信してください。

お問合せフォーム