経済政策・経済思想ユニット

経済政策・経済思想ユニット

ユニットメンバー

財政問題や地球環境問題など、長期的な持続性に関する政策課題が重要性を増している。これらの政策問題に対処するためには、経済学や経済思想の枠組みをそれらの問題設定に合ったものに変えていく必要がある。経済政策・経済思想ユニットでは、主に持続性に問題に焦点を当てて、経済政策論や経済思想の新しいあり方について総合的に研究を進める。理論研究、コンピュータシミュレーションによる定量的研究、自治体などでの社会実験を使った実験社会学的研究などの手法を適宜併用し、新しい研究の方法論を模索する。

「自治体との連携によるフューチャー・デザインの社会実験」プロジェクト

「自治体との連携によるフューチャー・デザインの社会実験」プロジェクトは、さまざまな自治体と連携してフューチャー・デザインの社会実験を積み重ね、データを蓄積するとともに、自治体の意思決定に将来世代の視点を導入することで現実の政策形成プロセスに貢献を行うことを目的とする。

高知工科大学の西條辰義教授が主唱し研究が広がっているフューチャー・デザインは、世代を超える超長期の時間軸での持続性についての政策課題を扱う方法論として注目を集めつつある。フューチャー・デザインの社会実験では、自治体レベルの行政について、住民を「将来世代の役割を与えられた人々(仮想将来世代)」のグループと「現在世代」のグループに分けて討論を行い、仮想将来世代グループと現在世代グループの間に、考え方や政策選択の結果において、顕著な違いが見られることを発見した。

「自治体との連携によるフューチャー・デザインの社会実験」プロジェクトでは、蓄積したデータを使用して仮想将来世代が現在世代と異なる思考を行うという観察結果の正確性を検証し、どのようなメカニズムで思考過程の違いが発生しているのかを解明する。また、仮想将来世代の思考変化は、一般的に「世代間の利他性が内生的に変化すること」を示しており、利他性の変化を通じた経済政策の効果はこれまでほとんど注目されていなかったことからも、経済政策に関して新しい知見をもたらす可能性が期待できる。

プロジェクトリーダー:小林慶一郎 東京財団政策研究所研究主幹 
プロジェクトメンバー:
西條辰義 東京財団政策研究所上席研究員/高知工科大学フューチャー・デザイン研究所所長
原圭史郎 東京財団政策研究所主任研究員/大阪大学大学院工学研究科 准教授
加藤創太 東京財団政策研究所研究主幹
猪野明生 東京財団政策研究所リサーチアシスタント

「所得税改革のマイクロシミュレーション分析」プロジェクト

わが国の所得税制において、多様な働き方に中立的な仕組みに改めようとする問題提起がなされる中、2017、2018年度税制改正大綱では、配偶者控除、次いで基礎控除と給与所得控除・公的年金等控除の見直しが盛り込まれた。ただ、わが国の所得税制にまつわる論点としては、中立性の観点だけでなく、垂直的公平性、つまり所得再分配機能の観点からも、先行研究で問題提起されている。わが国の所得税制の所得再分配機能を焦点とした分析を試みており、所得控除が多用されているものの、税額控除がわずかしか用いられていないことから、所得再分配機能が弱くなっていることが明らかとなっている。その観点から、今後も引き続き所得税改革の論議が続くこととなろう。

こうした所得税改革の分析は、家計の個票データを用いることが多く、個票データに基づき、制度変更が行われた時にどのような効果が生じるかを分析する手法として、マイクロシミュレーションが用いられている。

本研究では、適宜行われる所得税改革を自然実験と見立てて、マイクロシミュレーション分析を行うことを通じて、所得税改革が家計や経済に及ぼす影響を分析するとともに、その結果を広く国民に提示することを目的とする。今まで所得税改革の効果の分析は、クロスセクションデータを用いた検証がほとんどであり、繰り返しクロスセクション分析による擬似パネルデータに頼らざるを得ず、必ずしも正確性が高い結果は得られていなかった。つまり、パネルデータを用いた異時点間家計の行動を踏まえた分析は、ほとんどなされてこなかった。その点で、先行研究と比べて新規性がある。

また、パネルデータを用いた所得税改革の分析を、年末に閣議決定される各年度の税制改正大綱に盛り込まれた内容を踏まえて、即時に税制改正の効果を分析して結果を公表することにも活用できる。そうすることで、タイムリーな所得税改革の効果分析の結果を発信・提供することができる。例えば、年末に閣議決定される各年度の税制改正大綱の議論過程や決定後に、所得税改革の内容を踏まえたマイクロシミュレーションを行って、効果分析の結果をタイムリーに発信することができる。


プロジェクトリーダー:土居丈朗 東京財団政策研究所上席研究員

「望ましい政府負債のあり方について」プロジェクト

日本の対GDP債務残高は200%に近づき、将来の財政破綻の可能性を減らすために増税と支出削減による財政健全化が声高に叫ばれている。しかしながら、長期的にどのくらいの債務残高を目指すべきかという議論はあまり進んでいない。将来世代の立場に立ち、あるべき債務残高についての議論を行うことは持続可能な社会を構築する上で有益である。

本プロジェクトでは、日本のあるべき長期的な政府債務残高について、異質的個人世代重複モデルを使って分析を行う。政府債務は個々人にとっては貯蓄の対象であり、貯蓄の動機がどのようなものかによって最適な政府債務が異なるため、失業などの賃金に対するショックに備えるための予備的貯蓄や老後への蓄えといった貯蓄の動機を取り入れることが可能な異質的個人世代重複モデルを用いることが適切である。

また、長期的な債務残高目標が設定できたとしても、その値が現状の債務残高と大きく異なる場合瞬時にその目標を達成することは現実的ではない。そこで、本研究では現状の債務残高を所与として、長期的な債務残高を達成するためにはどのような経路が最適であるかについて、均衡の移行経路を求めることにより分析を行う。

さらに、本研究で用いるモデルが異質的個人であるため各個人が政策変更を現状より好むかどうかが分析できる。この点を生かし、どのような経路であれば政策変更を達成できるかについても検討を行う。


プロジェクトリーダー:小林慶一郎 東京財団政策研究所研究主幹
プロジェクトメンバー:猪野明生 東京財団政策研究所リサーチアシスタント

ユニットリーダー

小林慶一郎

小林 慶一郎

  • 研究主幹

ユニットメンバー

土居丈朗

土居 丈朗

  • 上席研究員

原 圭史郎

  • 主任研究員
猪野明生

猪野 明生

  • リサーチアシスタント
西條辰義

西條 辰義

  • 上席研究員

(アルファベット順)