「働き方改革」は、安倍政権最大の課題の一つである。少子高齢化に伴い生産年齢人口が減少する中、仕事と育児や介護の両立など、働く方のニーズの多様化に対応することが経済の再生につながるという問題意識である。
「働き方改革」は、雇用関係に基づかない働き手や兼業・副業の増加、ギグエコノミーなど、柔軟な働き方により支えられた社会を生み出す。雇用が流動化・多様化することにともない、あわせて、それを支えるセーフティーネットである社会保障が必要となる。そのためには正確な所得の把握や税と社会保障の情報連携などの社会インフラの構築とをセットで議論する必要がある。
東京財団政策研究所税・社会保障改革ユニットでは、税・社会保障一体改革のグランドデザインプロジェクトの2018年度のテーマとして「『働き方改革』と税・社会保障」を取り上げ、検討してきた。
本提言は、「働き方改革」の積み残された“宿題”とも言える社会保障(セーフティーネット)と税制の議論について、税制・社会保障・年金・教育などさまざまな観点からの具体的な政策提言やシミュレーションをとりまとめたものである。本提言が関係者の議論を深め、政策立案を進めるきっかけとなることを願っている。
目次
- 第1章 健康・年金からみた高齢者就業
(小塩隆士 一橋大学教授) - 第2章 働き方の多様化と厚生年金保険適用・資格取得・保険料納付の見直し
(西沢和彦 日本総合研究所主席研究員) - 第3章 シェアリングエコノミー、ギグエコノミーと税・社会保障
(森信茂樹 東京財団政策研究所研究主幹) - 第4章 働き方の多様化と所得課税のあり方について
(佐藤主光 一橋大学教授) - 第5章 ユニバーサル・ベーシックインカムの実像――目指すべき選択か
(田近栄治 成城大学教授) - 第6章 2010年代の所得税改革は所得格差をどう是正したか
(土居丈朗 東京財団政策研究所上席研究員/慶應義塾大学教授) - 第7章 格差と成長――所得再分配、子ども手当、教育支援で望ましいのは何か
(小黒一正 法政大学教授)
提言全文
「働き方改革」と税・社会保障のあり方 (PDF:2.15MB)